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外資系生保アクチュアリーのコンピテンシーについて

外資系生保アクチュリーとして、ある程度上の立場に立つor立ちたい人に求められる能力について(アクチュアリーに限らないですけど)、以下、自分の経験に基づき私見を述べます。
※外資ならではのものだけでなく、日本社でも当てはまるものも含みます。
※外資と言っても、北米系、欧州系、その他、さまざまなカルチャーが存在するので、以下がすべての外資に当てはまるわけではないです。

いかに価値を生む提案ができるか

単に決算を正確にこなしました、保険料を正確に算出しました、ではなかなか評価されないです。他者との差別化と言いますか、野球で言うと、WAR (Wins Above Replacement)をどれだけ稼ぎましたか?に近いかも。
一方、真のマネジメントの役割だけに徹して価値を生めるような稀有な存在などそうそういないのだから、ほとんどの人にとっては、時にプレイヤーとして手を動かせることも大事です(国内社ほど頭数は充実していないので)。ちなみに、自分は、ちょっとしたエクセルワークでの試算、社内外資料(日英)の作成、翻訳からロジまで、なんでもこなせますし、実際にやります。

専門家orジェネラリスト?

ジェネラリストも大事ですが、日本社よりはその要素は弱く、スペシャリストが求められている気がします。なので、専門性を維持しつつ(大前提)、その中でいかに自分を経営全般へと広げていけるかが肝です。

もちろん、英語

帰国子女レベルになる必要はないですが、出世の足枷にならない程度には身につけた方が良いです。仮にあまりできなくても、できる感じを出す、下手でも自信なく喋るよりは堂々と話したほうが良い、話す内容が本質さえついていれば、聴いてくれます。

売り込む力

プレゼン能力、発言を躊躇しない、とにかく目立つ、声の大きい者が勝つ。それは必ずしも良いことではないですが・・・
正しいことを主張して認識されないより、認識された方が正しいのです。
これは、経営層がプロパーではなく、転職組、親会社からの出向、他業界出身者で構成されていることに起因すると思います。技術的なことというか本当の深層まで理解できなくとも、なんとなく大枠理解した感じにしてあげることは重要です。

推進力

トランスバーサルなプロジェクトを多少強引にでもグイグイ前へ進められる力。
サイロの問題やプロジェクトの内容によって、ボールが部門と部門の間に落ちることはありがちなので、それを拾って成果を出していけば、あいつに任せておけばなんとか回してくれる存在として重宝されるようになります。
なんなら、業務は組織ではなく個人に付いていきがちなので、なんでこの部署の人がこの仕事してるんだろう?ってのはよくあります。有能な人は仕事を吸い寄せる、勝手に仕事が集まってくる。

Empowermentへの対応力

上司の手を煩わせることなく、基本、自分で進めて(よほどの場合を除く)、結果だけを上司に報告。
指示待ち人間は日本社でもダメだけど、外資の方が、より主体的に動き提案型の仕事をすることが強く求められます。全勝する必要はないです。多少負けてもキャリアに傷がつく事はないので、勇気を持って踏み出した者勝ちの世界です。
何度でも敗者復活が可能です。
裁量が多いので、それが与えられて嬉しい人でないと外資には向かないでしょう。

心の持ちよう

対人:いろんな人を受容できること。さまざまなバックグラウンドの人が集まっているのと横並びの社内教育は存在しないので、個性強めな人は多いです(自分もそう思われている可能性は否定できません)。
対イベント:ストレス耐性、スルー力。なんなら、変化をストレスではなくむしろチャンスととらえるくらいの方が良いです。国内社では信じられないようなことがしょっちゅう起こります。

コミュニケーション

まずコミュニケーション好きであること。ただ好きなだけでなく、本国の親会社とのコミュニケーションの機会は多いので、交渉力、ステークホルダーマネージメントスキルは問われます。
また、ローカルエンティティ内でも、根回し文化は根深いので、それをつつがなく行うこと。大事な会議の本番の結論は、その前のプレミーティングで全て決まっています。
営業系の役員や、なんなら社外のお客さまともそつなく話せる会話力はあった方が重宝されます。アクチュアリーはそれが苦手な人が多く、できる人はレアなので、普通に話せるだけで競争優位になります。
コミュニケーションは会社に所属するアクチュアリーにとって極めて重要な要素なので、これだけで別記事にまとめています。もしご興味があればご参照ください。
(たいへん申し訳ありませんが、諸事情につき有料記事に変更しました。)
アクチュアリーに必要なコミュニケーションスキルについて

社内プレゼンス

外資は、上記のような結果、要所要所にいる限られたキーパーソンが経営上の重要な意思決定をしているので、ちゃんとその輪の中に入ること、入ることができるように振る舞うことが大事です。この輪の中に入るか否かは階層はあまり関係ないように思います。課長クラスでも入っている人もいます。

資格

資格で飯を食おうと思うな。資格はあくまで個人のアセットであり、会社のアセットではない。なんなら転職されてしまえば、資格は人に付いて持って行かれてしまう。資格を使って会社に対して価値が生み出せてはじめてナンボ、資格の価値が生まれる、と心得ましょう!仕事はできるのに資格がなくて上へ上がれないというガラスの天井は存在しないです。

筆者について

ちなみに、私は40代前半、部長職のアクチュアリー正会員、国内社からの転職組。充分ライフに時間を割けるホワイトな働き方をしており、結果さえ出せていれば休暇や働き方などは人事考課には影響しないので休暇は自由に堂々と取得できます。もちろん、業務の質によりますが。流石に決算チームで決算期に取るのはダメです。私の場合、年に数回の忙しい時期には寝る間も惜しんで働きますが、それ以外はだいたいゆるふわに過ごしていますし、忙しい時期も、誰かに言われるでもなく、自分の提案した案件を軌道に乗せたくて自主的にそうしているだけなので、精神的なストレスはゼロです。自分の信念として、心にゆとりがないと良いアイディアは生まれないし、良い仕事はできないと思っているので。実際、まったくのプライベートな時間に仕事の良いアイディアを思いつく経験を何度もしています。逆に忙しく働いている時にはそういうことはありません。

以上となります。この拙い文章が、アクチュアリーとしてのキャリアになんらかの悩みを抱える方の一助に少しでもなれば幸いです。


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