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4年生の授業「性の問題ロールプレイ」公開します

先週の「月経・射精」の授業に引き続き、今日は「性の問題ロールプレイ」の授業をしてきました。

まず授業の最初に「ロールプレイって知ってる?」ときくと誰も知らないとのこと。ざっくりいうと短い劇みたいのをしてもらうこと、劇とは違ってセリフはみんなが考えること、男の子が女の子の役をやってもいいしその逆もOK、正しい答えはないから自由に考えてね、と伝えて、まずは各班(5~6人)にそれぞれ違う内容のプリントを配布。(本筋じゃないですが、くじ引きのようにひいてもらうのでこども達はちょっと楽しそうになります)

10分ほどかけて、班でセリフと誰がどの役をやるかを決めてもらって、その後みんなの前で実演。今日は3クラスで実施したのですが、どのクラスもそんなに困ることなくサクサクとセリフを考えていました。

さて、実演タイムです。今年はノリノリで演技してくれるお子さんが多くて楽しかったです。

まずは『生理の血で洋服が汚れたらどうしよう?そんな子が目の前にいたらどうしよう?』

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こども達からはこんな答えが。
ウサコ:「恥ずかしいよ!そんなこと言わないでよ!」「え~、どこどこ?」「白いスカートはいてこなければ良かったー!」

どれも、うんうん、と頷けるセリフ。ここで確認。生理のこと大声でからかわれるとどんな気持ち? 子ども達からは「嫌なな気持ち」「ふざけんなって思う」などなど。そうだよね。

ミミオ:「ウサオくんひどいよ!」「思春期だからしょうがないよ」「今日遊ぼう(話をそらす)」

なるほどね。確かにひどいよね。思春期で生理が始まるのはからだのしくみとして自然だと、前回話したもんね。話をそらすっていうのもいいかもね。これ以上ウサオくんがからかいにくくなるもんね。

こども達はこのように、それぞれが考えて配慮の言葉を出してくれました。あるクラスでは、5人の班で2人分のセリフしかなかったことから、あと3人分のキャラクターまで作って小さなドラマのようにしてくれていました。内容は割愛しますが、このような子ども達の柔軟さには脱帽です。

その後は、このロールプレイで伝えたかったこと、考えてほしいことなど。

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次は『裸の写真』について

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こども達からはこんな答えが。
メーミ:「メーコちゃん、やめてよ。写メるなら自分のからだにしてよ。」「大人っぽいって言うのはいいけど、写メはとらないで。」「メーコちゃんも思春期になったらこうなるよ」

うんうん。裸の写メはダメだよね。思春期になったら、からだの見た目も変わってくるんだよね。そこには個人差がかなりあるから、おともだちより早く大人っぽくなるのも別にいいんだよね。

実は、この場面はアクロストン妻が7,8年前に区民プールの更衣室で実際に体験したもの。その時は写真を撮られる前に、撮られそうになった子が「やめてよ」ってスマホを手で払ってやめさせていたのですが、実際にあった話なんだよ、と言うと、皆、真剣な表情になりました。SNSなどで話しかけられた知らない大人だけではなくて、仲良い友達でも恋人でも裸の写真を撮られることの危険性(リベンジポルノや故意ではないネットへの流出など)を丁寧に説明しました。

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次は『エロ動画』について

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こども達からはこんな答えが。
ニャンゴロウ:「やめてよ!」「え~、おまえそんな動画に興味あるの~?」
「そんなの見せるなよ。みんなに言ってやろ。」

ニャンミ:「何その動画、止めてよ!」「なんでそんな動画見てるの?」「本当だよ!気持ち悪い。そんなの見せるなんて。。。」

この話は4年生には少し早いかもしれなく、まだ興味がない子も沢山いますが、簡単にAVなどポルノにアクセスできてしまう世の中なので題材として取り扱っています。ここでは、実は日本はポルノの大生産国であること(調査により異なりますが、なんと世界のポルノのうち6~8割は日本製とのこと!)、それゆえビジネスとして沢山の時間とお金をかけてまるで現実のような動画を作っていること、などを話します。思春期頃になると、人によってはエッチなものが見たくなる人もいる。見たいという気持ちは全く問題ない。でも、ネットでアクセスできる動画を信じないで欲しい、現実で同じようなことをしてしまうと犯罪なこともあるし、何より、相手を傷つけてしまうことが多いことも。また、見たくないと思っている人に見せてはいけないことも話しました。

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次は『デートDV』について

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こども達からはこんな答えが。
ササコ:「でも、友達とも遊びたいなぁ」「パンイチロウくんと遊ぶのも楽しいけど、たまには友達と遊びたいな」「私もパンイチロウくんと遊びたいけど、友達とも遊びたいから、みんなで遊ぼう」

どのクラスも自分のきもちをしっかり伝えられました。『好き』という気持ちと『自分が誰といたいか、何をしたいか』は別のものだよ、と説明。付き合っていようと、結婚していようと、どんな関係であろうと相手の行動を自分が決めつけることはできないよ、とも。

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次は『性的同意』について

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こども達からはこんな答えが。
ヒヨタ:「公共の場だからやめた方がいいよ」「えっ。。。。」「ごめん、恋人いる」

確かに「えっ。。。。」って困っちゃいますよね。「公共の場だから」と言ってくれたクラスの子にその意図をきくと断るための口実とのこと。また「恋人いる」は大人っぽいボケだったらしく、その後「10年後にね」という答えも教えてくれました。こちらも、今チューするのを避ける口実としての「10年後」とのこと。よく考えてくれました。「まだチューしたくないよ」とストレートに言ってもいいし、うまく口実を作ってもいい。とりあえず、今したくなければ今しなくてよくなる言葉を言えるのは大事なことです。

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ここで、ピヨちゃんが「チューしていい?」とちゃんときいたのは良かった!という話もしました。この、相手の意思を確認するという行為をせずに「大好きだよ、チュ! 」みたいな行動をしてしまう大人が多いことも説明。(本当はチューだけではなく、セックスに至るまでそうなのですが)
いちいち同意をとるのはおしゃれじゃない、モテない、なんていう人もいるけれど、そんなことないから相手がどうしたいかしっかりきこうね、と話しました。

最後は『性的指向』について

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こども達からはこんな答えが。
トンタ:「別に好きな人いなくてもいいでしょ」「いないよ!!」「好きな女子はいないんだから別にいいだろ!!」

皆、イラっとした感じの演技をしてくれました。そうだよね、余計なお世話だよね、イラっとするよね。

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ここでは、性的指向の話もします。世の中には異性のカップルが多いしどうしてもそれが普通で、他は違うように扱わることがあるけど、それはどうなんだろう?と問いかけると、「おっさんずらぶは男同士だった!」「きのう何食べた?も!」とこども達から声が。おお、世の中良い方向に変わってきてる!!明るい気持ちになると同時に、テレビドラマで取り扱うのは影響力が大きいのだな、と再確認。今後もどんどんこのようなものが増えていきますように。

男?女?

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最後の題材からの流れで、ところで男ってなに?女ってなに?って考えてもらいます。前回の授業のときに「女の人は生理がある、男の人は射精がある」といったけど、それが女の人、男の人ってことなの?とも。

「男も、女も違うところがあるけどおなじ種類の生き物」との答えが。そうだね。同じ種類の生き物だね。

「男にはちんちんがあって女にはない。」たしかに。一般的にはそうだよね。

ここで、性別はどうやって決められているのかの話を。普段、当たり前のように「男」「女 」という言葉をつかいますが、実は、基本的には生まれた時に股間におちんちんがあれば男の子、おちんちんがなくて女の子のおまたの形だったら女の子、として戸籍の届け出がされ、生活上も従っています。しかし、中には染色体では女性であっても内分泌疾患でおちんちんがあるようにみえる人もいます。その場合は染色体や画像の検査などで性別が割り当てられます。判断保留になることもあります。単純に「男」「女」と言い切るのは生物学上も難しいことはよくあり、「男」にも「女」にもいろいろな人がいます。

また、染色体は女性、おまたも女性、思春期になっておっぱいが大きくなり生理がきても、自分のことは男性だと思っている人もいるし、女性でも男性でもない、と思っている人もいます。その逆もあります。このような説明をしつつ、普段、何気なく使っている「男」「女」という言葉をもう一度考えてもらいました。

ジェンダーの話も少々。「男の子だから車のおもちゃ」「女の子だからお人形」など「男の子だから」「女の子だから 」って言われたことがあるかもしれないけど、生まれた時の股間の形だけできめられているなんてなんか変だよね?と。我が家では妻が車好きで車の運転をする、夫は運転は嫌いだからしないけれど朝ごはんは毎日作っている、なんて話もしました。男でも女でも好きな物は好きでいいし、どっちがどんな役割をするかなんか決まっていないんだよ、と。ここらへんで、3クラスともチャイムがなり終了。

この授業に対する想い

1時間でこんなに次々と大きなテーマを扱うことに実は葛藤があります。本当は1テーマで1時間使っていい内容です。性的虐待を受けている子への配慮も本当はもっとしたいと思っています。ただ、あまりにもこども達がこういった性の問題を考える機会に出会わないため、このように詰め込んでしまっています。理想としては、このぐらいの年で(4年生ぐらい)一度さらっと今回のように性の問題に触れ、実際に直面する中学生ぐらいでしっかりひとつひとつを考える時間が持てるといいな、と考えています。

普段のアクロストンのワークショップではこのようなロールプレイはやっていませんが、やってみたい!という方はご連絡ください。学校からのご依頼も是非!!保護者からの働きかけで授業をすることになった学校もありますので(この授業ではなく『男子のための生理教室』ですが)よろしかったら拡散してください。そして、より良くするためのアイデア、侵襲性が懸念されるところなどありましたら、コメントいただけると嬉しいです。

また、前回に引き続き、今回もご希望の方がいたらスライドを差し上げますのでこちらに連絡ください。なお、今回のスライドは全て私達の創作とフリー素材の使用のため、学校などの教育機関以外でもお使いいただけます。

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妻・夫。二人とも医師。子どもに必要な性の知識を楽しく・ポップで・まじめなコンテンツにしてお届けします。 https://acrosstone.jimdofree.com https://www.facebook.com/acrosstone インスタグラム:@acrosstone