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企業と投資家のギャップ 【企業価値向上】に向けた取り組みについて③

皆さまこんにちは、アクロポリス・アドバイザーズです。

本日は「企業と投資家のギャップ~【企業価値向上】に向けた取り組みについて~」の最終回記事になります。

まだ第1弾、第2弾をご覧いただいていないようでしたら、以下の内容をお読みいただければ幸いに存じます。

それでは早速、第3弾をまとめていきたいと思います。



■ 企業と投資家のギャップ

25.TCFDに基づく気候変動関連情報の開示・活用への検討

TCFDに基づく気候変動関連情報の開示を企業が実施しているか/投資家側は企業評価や対話活動においてそれを活用しているか、とのテーマに関しては企業の45%が「既に十分な開示をしている(定性分析に加えて、定量分析を実施)と回答している中、投資家がそのような認識を示す回答の割合は22%であり、23%の乖離が見られました。

その他の回答では大きなギャップは見られず、双方同等の認識がされています。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


26.人的資本経営実現のための主要テーマ

人的資本経営実現のため企業が重視するテーマ/投資家が取り組むべきと考える主要テーマにおいて、高い水準で一致したのは「経営戦略と人材戦略を連動させる取り組み」でした。

企業と投資家との回答のギャップが目立ったのは「社員エンゲージメントを高めるための取り組み」で、企業は73%が重視すると回答した一方、投資家側は42%に留まり、31%の差が見られました。
反対に、企業 < 投資家となったテーマでは「人材に関するKPIを用いた「As is-to beギャップ(現状とあるべき姿のギャップ)についての定量把握」で22%の開きがありました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


27.経営戦略と人材戦略を連動させるための取り組み

経営戦略と人材戦略を連動させるため、企業が重視している取組/投資家が取り組むべきと考える主要テーマとしては、大きな認識の違いはなく、高い水準で「全社的経営課題の抽出(経営戦略実現の障害となる人材面の課題の整理等)」「KPIの設定、背景、理由の説明」との回答が一致しました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


28.人権尊重に向けた取り組み

人権尊重に向けた取り組みについて、企業が既に実行しているもの/投資家が取り組むべきと考えるテーマとしては「人権方針の策定」が高い水準で一致しました。

企業 < 投資家での大きなギャップはなく、差が見られたのは、企業側で78%が回答した「従業員への教育・研修の強化」で、投資家側の回答は56%(差:22%)でした。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


29.生物多様性・自然資本のテーマが企業の活動に与える影響

生物多様性・自然資本のテーマに関し、投資家はその重要性を「自社の活動に与える影響は現時点では大きくないが、将来的な影響は大きい」(差:25%)と高く評価する割合が多い一方で、企業側は「将来的にも限定的」(差:31%)とする回答も多く、それほど重視していないことがわかります。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


30.生物多様性・自然資本の保全・対応に向けた取り組み

生物多様性・自然資本の保全・対応に向けた取り組みについて、企業が既に実行しているもの/投資家から見た企業が取り組むべきものにおいて、高い水準で一致したものはなく、認識にギャップが見られました。

特に、投資家は「方針・戦略の策定・開示」(差:28%)、「目標の策定・開示」(差:24%)、「リスク・機会の分析」(差:39%)を重要視しています。一方で、企業側では「現在、対応している取り組みはない」との回答が24%と、これらの取り組みをあまり重要とは考えていないように見られます。
先の29項でも見られた通り、このテーマにおいても、企業側の意識と投資家の見据える将来にギャップが生じていることが読み取れます。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


31.ESGへの取り組みを推進するにあたり行政に期待すること

ESGへの取り組みを推進するにあたり行政に期待することにおいては、企業側と投資家側で大きく違いが見られました。双方低い水準で一致したトピックはあったものの、59%の企業が「ガイドライン等の複線化防止に向けた対応」に期待している中、投資家側は31%。
一方、72%の投資家が「情報開示のサポート」を期待しているのに対し、同様の回答をした企業は42%となりました。

企業は行政にガイドラインの整備を、投資家は情報開示のサポートを、特に期待しています。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


32.中長期な持続的成長を実現するために今後重視する取り組み

中長期にわたり、持続的な成長を実現するために今後重視する取り組みにおいては、企業・投資家の間で「事業の収益性改善」が高い水準で一致しました。

その他、企業 < 投資家となった回答ではそれほど大きな認識の差は見られず、反対に、投資家と比べ企業は「社内の人材育成強化」(差:30%)を重要視する割合が高い結果となりました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


33.「2050年カーボンニュートラル」達成に向けた目標

企業が自社の「2050年カーボンニュートラル」達成に向けた温室効果ガス削減で目指している目標と、投資家の運用ポートフォリオにおける削減目標では、双方高い水準で一致した回答はありませんでした。

企業側の66%が「2050年カーボンニュートラル目標、および(2030年頃の)中間目標を策定して公表している」と回答しており、投資家側で同じ目標にしている投資家側は38%と、29%の差が見られました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


34.「2050年カーボンニュートラル」に向けたロードマップの策定・開示

「2050年カーボンニュートラル」に向けた温室効果ガス排出量削減に関する、企業のロードマップ策定・開示状況と投資家の運用ポートフォリオにおけるロードマップの策定・開示状況においては、40%の企業が「ロードマップを策定し、公表している」と回答。それに対し投資家側で同様の回答をしたのは20%と、企業側はより関心を持ち、取り組んでいる印象でした。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


35.「2050年カーボンニュートラル」の達成可能性

企業における「2050年カーボンニュートラル」の達成可能性と投資家の運用ポートフォリオにおいての達成可能性では、投資家の方が、企業よりも達成可能性の判断ができないとする割合が高く、投資家は企業よりも慎重な見方をしていることが分かります。

双方とも「達成可能性が高い」と回答した割合は低く、全体的に現時点での可能性は見極めるのが難しい印象でした。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


36.「2050年カーボンニュートラル」達成に向けて行政に期待すること

「2050年カーボンニュートラル」達成に向けて行政に期待することで、企業>投資家のギャップが見られたものは、企業側の48%が回答した「再エネ拡大を可能とするインフラの整備(送配電網整備・規律緩和等)」(差:22%)でした。
一方、企業 < 投資家でギャップが見られたのは、「具体的なロードマップの策定」(差:24%)でした。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


■ まとめ

「企業と投資家のギャップ~【企業価値向上】に向けた取り組みについて~」を三回に分けてまとめてまいりました。長らくご覧いただき、誠にありがとうございます。

情報開示に関しては、企業と投資家の期待に差があり、投資家はより詳細な情報を求める傾向が見られました。また、2050年のカーボンニュートラルに向けた取り組みにおいても、企業と投資家の間に違いが見られ、行政に期待する役割においても異なる視点が示されました。
持続可能な未来を築くためには、行政、企業、投資家が連携し、より詳細な情報開示や建設的な対話、良好なコミュニケーションを通じて、これらの違いを理解し、協力して取り組むことが重要です。

今後、投資家と企業の連携が、持続可能な未来を築くために不可欠であり、またこのような努力が双方に実りのあるコミュニケーションをもたらし、さらに日本資本市場を盛り上げていくことを私たちも期待しております。
今回の記事がその一助となり、双方にとって有益な情報となれば光栄です。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

※この記事では実際の統計結果の小数点第一位を四捨五入して記載しております。




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