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企業と投資家のギャップ 【企業価値向上】に向けた取り組みについて②

皆さまこんにちは、アクロポリス・アドバイザーズです。

前回の記事である「企業と投資家のギャップ~【企業価値向上】に向けた取り組みについて~➀」に続く第2弾となります。

もしご興味ありましたらこちらも併せて御覧ください。

それでは早速「企業価値向上に向けた取り組みに関する、企業と投資家の視点のギャップ」を見てまいりましょう。



■ 企業と投資家のギャップ

13.株主還元の適切性についての説明、評価観点

企業側が重視する株主還元の適切性と投資家側が評価する際の観点で、高い水準で一致する項目はありませんでした。

最も目立ったギャップは82%の企業が「株主還元・配当の安定性」と回答したところ、同様に回答したのは22%の投資家のみでした。反対に、そこまで大きなギャップは見られなかったものの、約過半数の投資家は「投資機会の有無」を評価対象として挙げていました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


14.対話に際しの体制や取組において感じている課題

企業側は「対話に割けるリソース・人材の不足」(差:24%)を最も課題と感じているのに対し、投資家側は「経営トップが対話に関与できていない」(差:35%)、「対話内容の経営層での共有化が不足」(差:46%)を課題と感じており企業経営者との情報交換体制が不十分と感じていることが読み取れます。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


15.対話を経たことによるアクションと効果

IR面談活動を通じて、企業がアクションを起こし、投資家が効果を感じている論点は、「株主還元」、「サステナビリティ(環境・社会課題への取組み)」でした。

双方の認識差が大きかった論点「社外取締役関係(社外取締役の人数、社外役員の独立性/出席率 等)」(差:25%)でした。前回の記事(項目4、5、6)でも評されていた通り、投資家は、社外取締役の独立性が確保され、積極的に会議に参加し意思決定に寄与することを重要視しています。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


16.対話において感じる課題、重点的な取組み

企業と投資家双方が最も課題であると認識し、投資家が重点的に取り組んでいることは「短期的な視点・テーマのみに基づく対話の実施」でした。

企業側 > 投資家での大きなギャップはありませんでしたが、投資家は「対話関係のリソースや人材が不足」(差:32%)、「企業に対する分析や理解が浅い(対話内容が形式的)」(差:22%)、「対話担当者の対話スキルが不足」(差:36%)を課題とし、企業と対話をする上で、更に掘り下げた議論ができることを望んでいるように伺えます。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


17.議決権行使を充実させる取り組みと期待する取り組み

議決権行使を充実させる企業の取り組みと投資家が期待する取り組みとして「集中日を回避した株主総会の開催」が高い水準で一致しました。

一方、80%以上の企業が「収集通知の早期発送(早期開示)」(差:27%)、「インターネットによる議決権投票」(差:60%)、「議決権電子行使プラットフォームへの参加」(差:34%)に力を入れていているのに対し、投資家が期待している取り組みは「有価証券報告書の早期開示」とこちらは認識に差が見られました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


18.個別議案の説明

企業、投資家ともに過半数以上が「一定程度説明している」と回答しました。ただしギャップも見られ、28%の企業が「十分に説明している」と回答しているのに対し、投資家側でそう認識しているのは4%未満でした。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


19.議案の説明充実に向けた取り組みと期待される取り組み

企業による議案の説明充実に向けた取り組みと投資家が期待する取り組みで高い水準で一致したのは「招集通知の議案内容の説明充実」でした。

違いが見られたのは、企業側が「総会当日における説明充実」(差:31%)を重視している中、投資家側は「ホームページ等を活用した議案の説明」(差:25%)を期待しているとの回答が目立ちました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


20.投資家の議決権行使に関する改善と今後の取り組み

投資家の議決権行使に関して企業が改善を期待することと、投資家が今後充実を図っていくことについて高い水準で一致したのは「対話等により個別企業の実態を踏まえた議決権行使の実施」でした。

その他の取組みでは、54%の投資家が「議決権行使に関する対話の充実」と回答している中、企業側は24%認識のズレが見られました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


21.過年度に反対の多かった議案に対する取り組みと期待

企業による過年度に反対の多かった議案に対する取り組みと投資家が期待する取り組みで高い水準で一致したのは「反対理由の分析」でした。

認識に違いが見られたのは、企業側が「反対株主の分析」(差:34%)に取り組む姿勢をもつ中、投資家側は「招集通知書への説明充実」(差:24%)、「投資家との対話」(差:42%)、「議案の修正・取り下げ」(差:22%)への取り組みを期待していました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


22.ESG活動・ESG投融資における主要テーマ

企業の考えるESG活動の主要なテーマと投資家がESG投融資で重要視するテーマでは「コーポレート・ガバナンス」「気候変動」「人的資本」高水準で一致しました。

認識の違いが大きく見られたテーマとしては、企業が「従業員の健康と安全」「製品サービスの安全」「働き方改革」活動に力をいれている中、それらを重要視している投資家はわずか10%以下となりました。
反対に、46%の投資家が主要テーマとしている「生物多様性・自然資本」では企業側で回答したのは16%と30%の差が見られました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


23.ESGへの取り組みに関する情報開示の充足度

企業側、投資家側ともに「一定程度開示している」と回答が多かったことからある程度の情報交換は為していることが伺えます。

しかし、約半数の企業が「十分開示している」と回答したのに対し、そう認識しているの投資家は2%のみでした。投資家としてはいまよりさらに、詳細なESGへの取り組みについての開示を求めているように伺えます。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


24.ESGへの取り組みに関する情報開示方法(媒体)

企業がESGへの取り組みについて実際に開示している媒体と投資家が望ましいと考える媒体において高い水準で一致したのは「統合報告書」でした。

特にギャップが大きかったもの(企業 > 投資家)は、「有価証券報告書」(差:49%)、「コーポレート・ガバナンス報告書」(差:50%)「ホームページ」(差:41%)の三つ。「IR説明会資料」でも21%の差が見られました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


■ まとめ

ここまでご覧頂きありがとうございました。

今後、投資家と企業の連携が、持続可能な未来を築くために不可欠であり、またこのような努力が双方に実りのあるコミュニケーションをもたらし、さらに日本資本市場を盛り上げていくことを私たちも期待しております。
今回の記事がその一助となり、双方にとって有益な情報となれば光栄です。

次回も引き続き、ESGの取り組みにや、人的資本などサステナビリティに関するアンケート結果をまとめていきたいと思いますので、楽しみにお待ちいただけますと幸いでございます。

※この記事では実際の統計結果の小数点第一位を四捨五入して記載しております。


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