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企業と投資家のギャップ 【企業価値向上】に向けた取り組みについて③

皆さまこんにちは、アクロポリス・アドバイザーズです。

本日は「企業と投資家のギャップ~【企業価値向上】に向けた取り組みについて~」の最終回記事になります。

まだ第1弾、第2弾をご覧になられていないようでしたら、以下の内容をお読みいただければ幸いにございます。

それでは早速、第3弾をまとめていきたいと思います。



■ 企業と投資家のギャップ

30.ESG活動・ESG投融資における主要テーマ

企業が行う主要ESG活動テーマと投資家がESG投融資で重要視するテーマでは「コーポレート・ガバナンス」「気候変動」多数のテーマの中でも高水準で一致しました。

認識の違いが大きく見られたテーマは、20%前後の企業が「製品サービスの安全」「働き方改革」の活動に力をいれている中、それらを重要視している投資家はわずか1~2%となりました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


31.ESGへの取り組みに関する情報開示の充足度

企業側、投資家側ともに「一定程度開示している」と回答したことからある程度の情報交換は為していることが伺えます。

しかし、40%の企業が「十分開示している」との意見に賛同した投資家は2%のみ。投資家側としてはいまよりさらに踏み込んだ、ESGへの取り組みについての開示を求めているようです。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


32.ESGへの取り組み関する情報開示方法(媒体)

企業がESGへの取り組みについて実際に開示している媒体と投資家が望ましいと思っている媒体で高い水準で一致したのは「統合報告書」でした。

ギャップが大きかったものは、多数の企業が「有価証券報告書」「コーポレート・ガバナンス報告書」「ホームページ」を使用していますが、それに反し、一定の需要は存在するものの、投資家側はこれらの媒体での開示をそれほど強く望んでいないようです。
特に「有価証券報告書」での開示をしている企業(47%)がよく見られるなか、17%の投資家のみ回答しているのは意外でした。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


33.TCFDに基づく気候変動関連情報の開示・活用への検討

TCFDに基づく気候変動関連情報の開示を「既に一定程度開示している」企業が42%。25%の投資家が、企業評価や対話活動において「定量分析はできていないが、定性分析は実施」と回答。

このトピックに関してはアンケート結果から、企業側に比べ、投資家側の関心はそれほど高くないように見受けられました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


34.人的資本経営実現のための主要テーマ

企業が人的資本経営実現のため重視するテーマと投資家が取り組むべきと考える主要テーマで高い水準で一致したのは「経営戦略と人材戦略を連動させる取り組み」でした。

ギャップが目立ったテーマは64%の企業が「社員エンゲージメントを高めるための取り組み」と回答したところ、41%の投資家が賛同。(差23%)
反対に、40%の投資家が「人材に関するKPIを用いた「As is-to beギャップ(現状とあるべき姿のギャップ)についての定量把握」を挙げたところ、企業側は17%となりました。(差23%)

【出典】一般社団法人 生命保険協会


35.人権尊重に向けた取り組み

人権尊重に向けた取り組みについて企業が既に実行しているものと投資家が取り組むべきと考えるテーマでは「人権方針の策定」が大方同じ水準で一致しました。

大きく違いがあったテーマは、企業側が「従業員への教育・研修の強化」に注力している中、投資家側は「人権責任を果たすためのガバナンス体制の整備」に取り組むべきと回答し、いずれも20%以上の差が見られました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


36.サプライチェーン管理の観点での取り組み

企業がサプライチェーン管理の観点で既に実行している取り組みと、投資家が現時点で取り組むべきと考えている試みで高い水準で一致したのは「調達方針の策定」でした。

双方での認識差が大きくでたものは「取引先への定期的なアンケートの実施」で47%の企業が力を入れている中、取り組むべきと感じている投資家は17%といった結果になりました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


37.ESGへの取り組みを推進するにあたり行政に期待すること

ESGへの取り組みを推進するにあたり行政に期待することは企業側と投資家側で大きく違いが見られました。双方低い水準で一致したトピックはあったものの、半数以上の企業が「ガイドライン等の複線化防止に向けた対応」に期待している中、投資家側は23%。
一方、77%の投資家が「情報開示のサポート」を期待している中、同じ回答をした企業は46%となりました。

企業はガイドラインの整備を、投資家は情報開示のサポートを重視しています。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


38.新型コロナウイルス感染症の拡大・長期化を受けて重視する取り組み

新型コロナウイルス感染症の拡大・長期化を受けて企業・投資家が今後重視する取り組みで高い水準で一致したのは「事業の収益性改善」「働き方改革の推進(テレワーク・会議や営業活動のオンライン化等)」の二つでした。

ギャップが見られたのは、企業側が「社内の人材育成強化」を重視投資家側は「ビジネスモデルの転換」を重視している点で、これらのテーマに対する双方の回答では20%以上の差が見られました

【出典】一般社団法人 生命保険協会


39.「2050年カーボンニュートラル」達成に向けた目標

企業が自社の「2050年カーボンニュートラル」の達成に向けた温室効果ガス削減の目標と投資家の運用ポートフォリオにおける削減目標では、双方高い水準で一致した意見はなく、過半数以上の企業側が「2050年カーボンニュートラル目標、および(2030年頃の)中間目標を策定して公表している」と回答、投資家側24%。

一方「現在、目標を策定する予定はない」と答えた企業がわずか3%だったのに対し、投資家側は29%となり、「2050年カーボンニュートラル」達成に向けた目標に関して企業側はより積極的に取り組んでいることが伺えました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


40.「2050年カーボンニュートラル」に向けたロードマップの策定・開示

「2050年カーボンニュートラル」に向けた温室効果ガス排出量削減のロードマップ策定・開示状況と投資家側の自社運用ポートフォリオにおけるロードマップの策定・開示状況でも双方に差が見られ、33%の企業が「ロードマップを策定し、公表している」と回答したところ、投資家側は13%。

26%の投資家が「現在、対応する予定はない」と回答したところ、企業側は4%。39.「2050年カーボンニュートラル」達成に向けた目標でも見られた通り、このトピックでは企業側はより関心を持ち取り組んでいる印象でした。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


41.「2050年カーボンニュートラル」の達成可能性

企業側が「2050年カーボンニュートラル」達成可能性を投資家側より若干高めに見通しているものの、全体的に現時点での可能性は見極めるのが難しい印象でした。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


42.「2050年カーボンニュートラル」達成に向けて行政に期待すること

企業・投資家が「2050年カーボンニュートラル」達成に向けて行政に期待することで大きな違いが見られたのは、「省庁横断的な政策の推進」。次に「投資家のグリーン投融資拡大に向けた制度設計」を投資家側は期待しており、「再エネ拡大を可能とするインフラの整備(送配電網整備・規制緩和等)」を企業は期待していると回答しました。

企業と投資家の期待において、「2050年のカーボンニュートラル」達成に向けた行政の役割についての違いが浮き彫りになり、持続可能な未来へのアプローチの多様性が示されています。

【出典】一般社団法人 生命保険協会


■ まとめ

「企業と投資家のギャップ~【企業価値向上】に向けた取り組みについて~」三回に分けてまとめてまいりましたが、長らくご覧くださり誠にありがとうございます。

情報開示に関しては、企業と投資家の期待に差があり、投資家はより詳細な情報を求める傾向がありました。また、2050年のカーボンニュートラルへの取り組みにおいても、企業と投資家の間に違いが見られ、行政に期待する役割でも異なる視点が示されています。
持続可能な未来を築くために、行政、企業、投資家が連携し、より詳細な情報開示や建設的な対話、良好なコミュニケーションを通じて、これらの違いを理解し、協力的に取り組むことが大切になってくることと思います。

弊社は資本市場戦略コンサルティングを提供することで、日本企業の価値向上に貢献していきたいと思います。皆さまと一緒に日本の資本市場を盛り上げていけることを期待しております。
今回の記事がその一助となり、双方にとって有益な情報となれば光栄です。


※この記事では実際の統計結果の小数点第一を四捨五入して記載しております。




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