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企業と投資家のギャップ 【企業価値向上】に向けた取り組みについて①

皆さまこんにちは、アクロポリス・アドバイザーズです。

今回は生命保険協会が調査した企業価値向上に向けた取り組みに関する、企業と投資家の視点のギャップについての結果を、簡単にをまとめたいと思います。全3回に分けてお送りする予定ですので、何卒よろしくお願いいたします。

それでは早速見てまいりましょう。



■ 企業と投資家のギャップ

1. 今後取り組みを強化する事項 / 強化を期待する事項

今後企業が取り組みを強化する事項と投資家が期待する事項で
最も高い水準で一致した項目は【経営計画・経営戦略】でした。

次に81%の企業が力をいれている【ESG・SDGsへの取組み】への投資家の期待は43%と認識に40%近くの差がでました。
反対に、40%の投資家が期待している【投資家との対話方針】に対し
企業側の反応は20%とちょうど50%の差となりました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会

2. 取締役の実効性向上に向けて、課題に感じていること

取締役会の実効性向上に向けての課題で最も高い水準で一致したのは【取締役会全体の経験や専門性のバランスやジェンダー・国際性等の多様性の確保】でした。

47%の企業が課題に感じている【上程議案見直し・絞り込みによる重要事項に関する議論の充実】に対し投資家は12%と回答、35%の差
逆に投資家側が感じている課題で企業側とのギャップが大きかった項目は【独立した社外役員の拡充】・【社外役員が機能発揮できる環境整備】の二つとなりました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会

3. 取締役会の議題として重点的に取り上げたいテーマ

取締役会の議題として重点的に取り上げたいテーマで最も高い水準で一致した項目は【経営戦略立案】でした。

55%の企業側が【ESG・SDGsへの取組み】を取り上げたいと考えている中、投資家側は32%と回答、23%の差
投資家側が考える重要なテーマと企業側が考えるテーマで大きなギャップがあった項目が二つ【経営目標・指標の適切性】・【コーポレート・ガバナンス体制】となりました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会

4. 社外取締役に期待する役割

社外取締役に期待する役割で最も高い水準で一致した項目は【独立した客観的な立場での発言・行動】・【経営戦略、重要案件等に対する意思決定を通じた監督】の二つ。

23%の企業側が【経営執行に対する助言】を期待している中、投資家側は2%とそれほど関心がありませんでした。
対して、30%の投資家側が期待している【不祥事の未然防止に向けた体制の監督】役割に企業側は10%、と三分の一程度でした。

【出典】一般社団法人 生命保険協会

5. 社外取締役に期待している役割が現状果たされているか

社外取締役に期待している役割が現状果たされているかで55%の企業が【期待通り十分に果たされている】と回答しているところ、十分と答えた投資家は2%。
43%の投資家が【不十分であり、改善の余地がある】と回答、企業側と投資家側で社外取締役の役割に対しての評価に大きな違いが見られました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会

6. 社外取締役の機能発揮に関する取り組み / 期待する取り組み

企業が社外取締役の機能発揮に関する取り組みと投資家が期待する取り組みでは、【社外取締役の独立性の確保】高い水準で一致しました。

また、投資家が期待する項目で企業との大きなギャップはありませんでしたが、企業が取り組もうとしている【社外取締役に対する取締役会議題の事前説明の充実】・【指名・報酬等の検討を行う諮問委員会の活用】では双方50%以上の差で大きく目立ちました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会

7. 社外取締役の人数・比率について望ましい水準

社外取締役の人数・比率について望ましい水準については、双方の認識に大きな違いはなく【取締役の1/3以上】高い水準で一致しました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会

8. 中期経営計画の指標 / 経営目標として重視すべき指標

企業が中期経営計画の指標とする項目と投資家が経営目標として重視すべき指標では認識に違いがみられ、回答がわかれました。

企業側【売上高・売上高の伸び率、利益額・利益の伸び率】を指針とする中、投資家側【ROE(株主資本利益率)、ROIC、資本コスト】を重視していることがわかりました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会

9. 資本コストに対するROE水準の見方

資本コストに対するROE水準の見方では企業側と投資家側で大きな違いが見られ、55%の企業が【上回っている】と回答しているところ、十分と答えた投資家は4%。
62%の投資家が【下回っている】と正反対の認識であることが表されました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会

10. 資本効率向上のため重視している取り組み / 期待する取り組み

資本効率向上のために企業側が重視している取り組みと投資家側が期待する取り組みで最も高い水準で一致した項目は、【製品・サービス競争力強化】でした。

その他の取組みでは企業側が【事業規模・シェアの拡大】(差33%)や【コスト削減の推進】(差44%)といった事業に直接的な取り組みをあげているのに対し、投資家側は【事業の選択と集中(経営ビジョンに則した事業ポートフォリオの見直し・組換え)】(差26%)・【収益・効率性指標を管理指標として展開(全社レベルでの浸透)】(24%)といった会社全体としての管理能力、経営戦略での取り組みを重視していました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会

11. 自己資本・手元資金の水準についての認識

自己資本・手元資金の水準についての認識では、自己資本、手元資金ともに、企業側は【適正と考えている】が、投資家側は【余裕のある水準と考えている】との結果になりました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会

12. 投資実行時に重視する項目 / 重視してほしい項目

投資実行時に企業が重視する項目と投資家が重視してほしい項目では、【経営戦略との整合性】・【投資の採算性】高い水準で一致しました。

企業側が考える重要項目に対し投資家側との大きな差はなく、【投資リスク】に関しては企業側の17%に対し投資家側は36%と20%程度の差がありました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会

13. 投資意思決定時の判断基準の指標 / 適切だと思われる指標

投資意思決定時の企業の判断基準と投資家が適切だと思う指標では回答がわかれ、企業側は【売上・利益の増加額】(差30%)・【事業投資資金の回収期間】(差12%)を判断基準とし、投資家側【投下資本利益率(ROIC)】(差48%)・【内部収益率(IRR)】(差17%)を指標とすると回答していました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会

14. 中長期的な投資・財務戦略の重要項目 / 重視すべき項目

中長期的な投資・財務戦略で企業が重要視する項目と投資家が重視すべきだと思う項目では54%の企業が【設備投資】と回答しているなか、投資家側は20%と、34%の差がありました。
対して、半数以上の投資家側の回答があった【IT投資(DX対応・デジタル化)】・【研究開発投資】・【人材投資】に関して企業側は総じて半数以下といった結果になりました。

【出典】一般社団法人 生命保険協会

■ まとめ

以上、企業側が考える「企業価値向上の取り組み」と「投資家側が考える取り組み」では高い水準で一致する項目もあるものの、まだまだ双方の認識で大きなギャップが見られました。

俯瞰的に双方の意見を知ることによって新しい気づきが得られ、企業側と投資家側で実りのあるコミュニケーションがとれるよう、少しでもお役に立てていれば光栄に思います。

次回以降の記事でも、株主還元に関する双方の意見や、IR取材時において企業側が感じている課題や投資家が課題と認識し、重点的に取り組んでいることなど引き続きまとめていきたいと思いますので、楽しみにお待ちいただけますと幸いにございます。

※この記事では実際の統計結果の小数点第一を四捨五入して記載しております。


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