見出し画像

市役所の役職を雑に解説する【n=1】

 皆さんこんにちは。イ キ ナ リ デ ス ガ ー(楽天カードマンの言い方)、市役所の階級・役所を簡単にご紹介したいと思います。


公務員の役職名わからん問題

 公務員って、大企業と同じいわゆるピラミッド組織なんですけど、役職の名前が「主査」だの「参事」だの「所長」だの色々あって、結局、誰が上席なんだよ?ってなる方が多いと思います。

 そこで、あくまでも私が勤めている市役所ベースの説明にはなりますが、市役所職員の階級・役職を下から上に解説していきます。

【(民間での待遇)】(市役所での職名)

 という形で並べ、それぞれがどのような職務を担当するのかを簡単に解説します。あくまでも私の勤めている自治体を参考にしているn=1の解説ですから、自治体によって多少の違いはあると思います。ご了承ください。



役職紹介

【平社員待遇】一般職員・主事・(職名)職員

 いわゆる平社員のことで、多くは一般職員主事と呼ばれます。または、採用区分に応じて、事務職員技術職員社会福祉士保健師などと呼ばれることもあります。実務上は単に名前(○○さん)で呼ばれます。

 警察でいうところの巡査、自衛官でいうところの士官でしょうね。

 採用された直後はみんなこのポジションで、組織での役回りは上席からの命令を忠実にこなすことが求められます。新卒の場合、20代はだいたいこの役職で職務を行うことになります。ちなみに私もこのポジション。まれに、出世を拒んだ中堅職員がここにいることもあります。



【主任待遇】主任・主任主事

 平社員の1つ上にあたるポジションで、多くは主任とか主任主事と呼ばれます。ほとんどの自治体ではこのポジションへ上がるための昇進試験を課しているはずです。試験を一発合格できれば、30歳までにはここに来れます。 先述した平待遇の中堅職員はこの試験を受けていない(または落ち続けている)ためです。ただし、年齢制限はあるっぽくて、40歳を過ぎたあたりから強制的に昇進させられているような気もします。

 警察でいう巡査長。自衛官でいう3曹くらいでしょうか。

 実務上では役職名で呼ばれはじめます(○○主任)。組織での役回りは、上席からの命令を忠実にこなしつつ、部下を育成することです。事業責任者として進捗管理を任されることがある一方、ヒラがいなければ実質やることはヒラと同じになり、職場によって責任の度合いが変わるポジション。



【係長待遇】係長・主査・リーダー・所長

 主任待遇で5年程度の実務経験を積むと昇進するポジションで、民間企業でいうところの係長。市役所では主査係長と呼ばれることが多く、職場によってはリーダーとも呼ばれ、支所や出張所の所長になることもあります。

 警察でいうところの巡査部長、自衛官でいう2曹くらいでしょうか。

 昇進試験を通過した職員で、だいたい30代後半~40歳くらいにこのポジションへ上がります。試験を受けていない場合でも、40代後半~50歳になると強制的に昇進させれている印象があります。

 組織での役回りは、事業責任者としての進捗管理や部下の育成で、場合によっては所属全体の方針決定に携わるなど、所属の中軸たる動きが求められます。それでいて本人も実務をやりますので、一番働き盛りの時期だといえます。組織全体でみてもボリュームゾーンで、管理職へ昇進しない場合は、ここで定年をむかえることになります。

 ヒラ社員からのねじ曲がった視点という前提で申し上げると、上司ガチャが一番キツいのはこのポジションの人だと思います。これも偏見ですけど、管理職への昇進を拒んでこのポジションにいるベテラン職員はリスクが高いです。あたりはずれがある。アタリならいいんですけどね。

 まぁ、良くも悪くも組織での影響力が増し始めるポジションです。



【課長代理待遇】課長補佐・副主幹・リーダー・所長

 係長待遇で5~10年程度実務経験を積むと昇進できるポジションで、民間企業でいうところの課長代理くらいです。大体は課長補佐とか副主幹という役職で呼ばれます。大規模な所属だとリーダーを務めていたり、大規模支所や出張所の所長をすることもあります。

 警察でいう警部補、自衛官でいう1曹くらいでしょうか。

 一般的にこの役職以上を管理職と呼び、残業代が出なくなります。また、このポジションへ昇進するためには昇進試験に合格しなければならない自治体が多く、裏返せば、この試験を拒み続ければ管理職になれない(ならなくてもよい)のです。係長待遇がボリュームゾーンになっているのはこれも影響しています。近年ではこの課長代理待遇の昇進試験を廃止する自治体も出てきているようですが…。

 組織での役回りは、所属長(課長など)の補佐、事業責任者としての進捗管理、部下の労務管理など、実務よりも管理に比重が偏ります。まぁ小規模な組織だと係長待遇と同じく実務をやることが多いようですが…。

 先述のとおり試験を受ける必要があること、係長以下での実務経験が必要なことなどが要因で、同期との出世レースに差が出てくるのはこの辺からになってきます。40歳前後でこのポジションに上がる人が出る一方、定年まで上がることがない人も出てきます



【課長待遇】主幹・課長・事務長

 副主幹待遇で5年程度の実務経験を積むと昇進できるポジション。これはわかりやすく民間でいうところの課長です。また、課長を置かない組織での課長待遇の職員を主幹と位置付けたり、課長待遇の職員が充て職などで他の業務を担当する場合は兼任主幹になることもあります。あと、病院や学校の事務を取りまとめる事務長として課長待遇の職員が置かれがちですね。

(例1)A室主幹 ○○

(例2)B課課長 兼 C事業担当主幹 ○○ など

 警察でいうところの警部、自衛官では広く尉官くらいでしょうね。

 実務上ではほとんど役名で呼ばれます(○○課長、または、単に課長)。組織での役回りは、所管する事業の総括管理、所属の方針決定、軽微な事務の決裁処理、部下の労務管理、部長等への報告など、管理的業務に終始しており、実務をやることはほとんどありません。先述した兼任主幹の場合は、本務の一環として実務をやることはありますが…。

 あと、このポジションからは議会対応が求められることが多いです。自分自身は委員会対応議員応答をやりますし、自分は出ないまでも一般質問や代表質問への答弁レクなどをすることになり、対外的責任が強くなります。

 早い人なら45歳くらいでこのポジションになり、同期の出世頭と呼ばれることになります。仮にうだつの上がらない人でも、試験に受かりさえすれば最後の数年はこの待遇に置いてくれます(謎の事業担当主幹として)。

 一般的にここまで上がれば頑張ったほうでしょう。

 余談ですが、市町村では人材交流用の役職が用意されている場合があり40代の都道府県職員や30歳手前の官僚が出向してきて、この役職に就くことがあります。警察でいうキャリア・準キャリアみたいなもんです。



【次長待遇】次長・室長・副参事・事務局長

 課長待遇で数年の実務経験を積むと昇進できる可能性があるポジション。民間でいうところの次長・部長代理にあたります。大体は次長室長という
役職で、課長を置かない部署の長になるほか、小規模な委員会では事務局長に充てられることもあります。

 早ければ50歳くらいでこのポジションまで上がり、定年間近でもギリギリ上がる人がいるかな?って感じです。

 警察でいうところの警視・警視正、自衛官でいう佐官くらいでしょうか。

 組織での役回りは、部長待遇の補佐次長待遇同士の業務調整課長待遇の労務管理議会対応あたりだと思います。

 個人的には、一番何をやっているのかわからない職位ですね。議会対応は部長待遇が主だってやりますし、課の労務管理は課長待遇が責任を負いますから。じゃあこの人たちは何やってるんだろうといつも考えてしまいます。

 ただ、私の勤める自治体の次長待遇は、だいたい何かを兼務している場合が多く、課長職を兼務していたり(室長 兼 課長)、室長のまま部長待遇に上がったり(参事 兼 室長)していますね。一方、うだつが上がらない課長待遇や定年ギリギリに課長待遇になった人がここまで上がらないことを考えると、一種の出世フィルター的なポジションなのかなと思います。同じ管理職でも、幹部になれる人(次長待遇)と幹部になれない人(課長待遇)で差別化しているような気がします。

 なので、ここまで上がれば出世したほうといえるでしょうね。



【部長待遇】部長・参事・事務局長・理事など

 次長待遇が3~5年程度の実務経験を積むと昇進します。民間企業でいう部長です…けど、部「長」なのか、部「長待遇」なのかで少し違っていて、部「長」は議会での答弁や災害対策本部への出席など、市政全般にも責任を負います。なので、部「長」は役員レベルと言ってしまってもいいかもしれません。ただ、今回は一括りに部長待遇としています。それとは別に、複数の部局にまたがる事業や、特命の事業を担当する部長待遇を「理事」とか「○○監」という場合もありますが、こちらも一括りに部長待遇とします。

 警察でいう警視長・警視監、自衛官でいう将・将補くらいですね。

 組織での役回りは、部局(行政)の最終決定を下すこと特別職の補佐管理職の労務管理議会への出席と答弁(部長のみ)、有事の際の対策本部会議への出席(部長のみ)、市の行事への出席あたりでしょうか。

 ここまでくると実務をやることはほとんどありません。基本、部下の伺いに対してYesかNoの返事をすること、事業実績や計画に目を通して対外的な説明ができるようにすること、特別職が打ち出した方針を下におろすことが主な仕事になります。

 このポジションまで上がってこれる人はかなり少なく、上がれたとしても55歳前後になるでしょう。上り詰めたという表現がふさわしいですね。

 こちらも余談ですけど、部長待遇にも人材交流用の役職が用意されている場合があり50歳くらいの都道府県職員や40歳前後の官僚が出向してきて、この役職に就くことがあります。お住いの自治体で、明らかに若い幹部職員がいる場合はほぼ100%出向者です。



【役員待遇】市長・副市長・教育長など

 自治体行政の根幹を担う職員のことで、国家公務員法や地方公務員法上では「特別職」と呼ばれます。これまで見てきた職員は「一般職」です。民間企業でいう役員・取締役あたりです。

 かれらは部長待遇を数年努めたら副市長に…ではなく、特別な条件を満たすことでその職に就くことができるので、一般職とは事情が全然違います。

 首長(市町村長や知事)はご存じのとおり選挙で選ばれますし、副首長(副市長)や行政委員会の長(教育長等)は、議会の同意を得て首長が任命することによって就任することができます。なので、理論上は20代でもこのポジションに就くことが可能です。まぁ、実際のところは部長待遇のなかで活躍した人が副市長になったり、副市長が市長に昇格するケースがほとんどなので、超絶若い特別職って稀ですけど。

 警察でいう警察庁長官や警視総監、自衛官でいう統合幕僚長や幕僚長でしょうか(ちょっと違うけど)。

 組織での役回りは、多岐にわたりますけど、基本は各組織の最終決定権最終責任を負うことですね。副首長は、首長の補佐部長待遇の労務管理が主な業務とされていることが多いです。

 余談ですが、特別職の公務員には勤務時間の概念はありません。なので、理論上は24時間365日働かなくても良いのです。当然、誰かに休暇申請するもありません。ただし、公務に支障を出してはいけない立場なので、24時間365日働いている公務執行中ととらえることもできます。とはいえ、一般的には、平日の9時~18時ごろに勤務して、土曜・日曜は休むのが合理的ですので、多くの首長はそのように活動されています。

 私の首長は、土曜・日曜に「予定あり」とスケジュールに書いています。これは、勤務時間(=週休日)の概念がなく、土曜日・日曜日にも「予定」を組まねばならない表れですね。



まとめ

 まとめ直して思いましたけど、やっぱりわかりづらいですね。せめて全国共通の職名だったらいいんですけど、自治体によって異なるという…。

 ただ、今回整理した内容は、だいたいどこの自治体でも当てはまると思いますので、参考になると思います。

 雑にまとめるといいつつ、ガッツリ5,000文字超の記事になりました。ここまで付き合ってくださった方、ありがとうございました。



おまけ

【バイト待遇】会計年度任用職員

 いわゆる非正規の公務員のことをまとめて会計年度任用職員と呼びます。会計年度(1年度ごとに)任用(採用される)職員(人)という意味です。かつては臨時職員・嘱託職員・再任用職員など、採用形態によって呼び方が異なっていたのですが、今ではまとめて会計年度任用職員と呼ばれることが多いです。要するにバイト…1年度ごとに採用されるので、契約社員という表現のほうがあっているかもしれません。

 会計年度任用職員については、メリット・デメリット・闇の深さなどを別で記事にしようと考えているので、お楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?