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マイナカード返納ムーブに思うこと


 皆さんこんにちは。マイナンバーカードのネガティブ報道は続いており、最近ではカードを自主返納する人も出てきているのだとか。私の自治体でもここ最近は返納手続きの件数が増えていると聞いています。

 ただ、個人的には、こうした報道を受けてカードを返納しようとする人は少々マヌケだと思っています、口悪いですけど。なぜなら、トラブルの原因を正しく理解していれば、別の行動を取るはずだからです。

 そこで今回は、昨今のマイナトラブルに私が思うことと、個人情報保護についての向き合い方について述べたいと思います。ただし、大前提として、私がかなり保守的な人であることだけは申し添えておきます。


1.昨今のマイナトラブル

 目下、世間を騒がせているマイナトラブルの主たるものとして、公金受取口座に別人名義の情報が登録されていた、コンビニ交付をしたら別人の住民票や戸籍が交付された、マイナポイントを別人名義のキャッシュレス決済で申し込んでしまったなどがあります。

 原因をよくよく調べてみると、ヒューマンエラーであったり、システムの不備であることがわかります。マイナンバー制度そのものではありません。また、マイナポイントによる想定以上の件数かつ、十分に理解されていない申請が急増したことも、こうしたエラー発生を助長しました。

 そのあたりのことは、以前の記事でまとめていますのでよろしければ参考にされてください。



2.その返納は正しい行為?

 こうしたエラーが発生してはならないことはたしかです。しかし、だからといってカードを返納するのはいささか理解不足だと言わざるを得ません。


 ここでは繰り返し伝えていることですけど、「マイナンバー」と「マイナンバーカード」と「電子証明書」は別物です。概念でいえば「グローブ」と「野球」と「サッカー」くらいの違いがあります。

 マイナンバーはあなたに振られた背番号のようなもので、行政が保有している情報の目次(検索キー)として使われるものです。

 マイナンバーカードは、マイナンバーの書かれた本人確認書類で、免許証などと機能自体はそれほど変わりません。

 電子証明書は、マイナンバーカードに搭載されているアプリみたいなもので、インターネット上で本人だと証明できる機能だと言えます。

 そのあたりの違いも過去に記事をまとめています。


 今回のマイナトラブルで悪さをしたのは「電子証明書」になります。本人だという前提で行われた手続き(通信)中のエラーが原因です。

 先ほどの例でいうと、公金受取口座の誤登録は、「本人です」と証明したうえで別人名義の口座情報を入力してしまったことが原因ですし、住民票の誤交付も「私の住民票をください」と問い合わせたデータベースから別人の情報を引っ張り出されてしまったのが原因です。


 よって、昨今のマイナトラブルの対抗策としてもっとも妥当なのは「マイナンバーカードの電子証明書を失効させる」ことであって、「マイナンバーカードを返納すること」ではありません。まぁ、カードを返した時点で電子証明書も自動的に失効するので部分的には正しいですけど。

 ちなみに、マイナンバーカードを返したところでマイナンバー自体が無くなるわけではありません。番号そのものは住民票の記載事項として必ず記入されているものですから。カードを返したからこれで番号制度とはオサラバだ~ではありません。誤解のないように。

 そもそも、コンビニ交付はさておいて、公金受取口座の登録、保険証利用登録、マイナポイントなどのサービスは、利用規約への同意があって初めて提供されるものですので、100:0で誰が悪いとかないんですけど。



3.なぜマイナにだけ厳しい?

 この辺りはそれぞれの思想があると思うのでとやかく言うものじゃないかもしれませんけど、どうしてマイナンバー制度やマイナンバーカードにだけこうも厳しいのだろうと思ってしまいます。

 例えば、「政府がマイナンバーを使って国民の情報を把握したがっているから良くない」という意見がありますけど、これは微妙に間違っています。

 まず、行政側が国民の情報を把握するのは当然だと思います。でないと、適切な課税や生活の支援ができなくなり、不平等を招くからです。国民それぞれの情報を正確に把握しているからこそ、その人に応じた行政サービスを提供できるようになるものだと思っています。

 ただし、中央集権的な大組織が国民の個人情報を一元管理しているのではありません。それぞれの組織(部署だと考えてもらえれば…)が個別で管理している情報を、必要な時に必要な分だけ聞きに行っているというイメージのほうが正しいです。もちろん、法令に基づいて。

 私の自治体でいえば、生活保護に関する情報は生活保護課のみが保有していますし、課税額に関する情報は、税金課のみが保有しています。課税額を決めるにあたって生活保護の受給状況が必要な場合、税金課は都度生活保護課に情報を求めてきます。生活保護課は必要な範囲のみ切り出して税金課へ情報提供します。こうした税金課は適切な課税額を決められるのです。

 たしかに○○自治体という大きなくくりでみれば、政府が情報を一元管理しているように見えるかもしれませんけど、実際は細分化して保管されていて、やり取りも厳重です。


 あと、「自分の個人情報は誰にも知られたくない」と思っているのなら、自分の持ち物をよく見たほうがいいと思います。

 もし、あなたがスマートフォンをお持ちなら、あなたの位置情報や検索の履歴はガンガン漏れ出ています。Amazonや楽天のサービスを利用しているならクレジットカードの情報や購買履歴もガッツリ把握されており、分析もされています。外資系のサービスなら、自国ですらなく、海外にその情報を持っていかれています。

 営利目的かつ、海外の組織には情報を把握されるのは気にもせず、自国の行政組織に対してだけ情報を知られるのを過度に嫌がる。これは少々滑稽に見えてしまいます。あなたの情報はちゃんと知られていますよ。



4.個人情報保護との向き合い方

 別に政府だからよくて外資系だからダメとか、民間よりも官公庁のほうが優れているとか、情報を把握したり分析することが悪いなどというつもりは一切ありません。大事なのは、自分の情報をどう管理して、どう活用させていくかを自分自身で考えることだと思います。


 改正個人情報保護法第一条にはこのように書かれています。

 この法律は、デジタル社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにし、個人情報を取り扱う事業者及び行政機関等についてこれらの特性に応じて遵守すべき義務等を定めるとともに、個人情報保護委員会を設置することにより、行政機関等の事務及び事業の適正かつ円滑な運営を図り、並びに個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする

 もはや個人情報は活用される前提です。条文では事業者、行政機関の責務にのみ言及されていますけど、受け身でいるのではなく、個人個人が考えて判断していくことが必要だと私は思います。

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