【山寺宏一さん インタビュー後編】「特別展 雪舟伝説―画聖(カリスマ)の誕生」音声ガイド
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京都国立博物館で、2024年4月13日から5月26日まで開催中の、「特別展 雪舟伝説―画聖(カリスマ)の誕生」。
京都国立博物館・保存修理指導室長の福士さんと伺った、音声ガイドナビゲーター、山寺宏一さんのインタビュー後編です。
(前編はこちら)
会場で見てみたい作品、気になった作品は?
―今回、ガイドで紹介した中で、気になった作品はありましたか?
山寺さん:まずは雪舟の《破墨山水図》。シンプルさゆえの凄さと言うのでしょうか。《富士三保清見寺図》は沢山の画家がそれぞれ色々な描き方をしているのが面白く、一番好きだったのは、狩野山雪の作品です。山雪はお名前も存じ上げませんでしたが、一目で「いいなぁ!」と感じ、早く実物が見たいと思います。
―すっきりとした富士山の形が特に美しい作品ですよね。
山寺さん:日本人なら当たり前でしょうが、僕は本当に富士山が大好きで。山雪のこの絵は本当に美しい。雪舟に憧れ、多大な影響を受けつつも、自分の個性をしっかり表現している。
雪舟も団扇形の絵で、様々な中国の画家の書き方を真似していますが、模倣から入ると言うのは決して悪いことじゃないんですね。基本を大事にすると言う意味では大切なこと。
僕も声優として、先輩方の真似ばかりしてきたので。
その中から自分なりの表現というものが生まれてくるのかなと感じます。
山寺さんにとって雪舟のような存在は…
―ちなみに山寺さんの中で、雪舟のような存在はいらっしゃいますか?
山寺さん:羽佐間道夫さんですね。声優としての実力はもちろん、人として尊敬しているので。羽佐間さんはお若い頃から、落語・浄瑠璃・歌舞伎・浪花節等、様々な古典芸能から演じる事や語りについて学んでいらっしゃる。90歳の今もバリバリ現役でかつ勉強熱心。本当に凄いです。雪舟もかなりの年齢まで描いていたそうですが?
福士さん:没年ははっきりしませんが、80歳を超えているのは確かですね。
山寺さん:すごいですよね。80って。え?15世紀で⁉
でも雪舟みたいなお手本がいて、そこからどんどんどんどん、新たな画家たちが…
―展覧会で一番新しい時代の画家は、19世紀、明治時代の狩野芳崖ですね。
山寺さん:そこまでに、他にも色々なすごい画家が出てきただろうに、雪舟っていうところに帰るんですね。雪舟は中国から学びながら、様々なことを試して自分なりの表現を作り出したからこそ、こうやってみんながすごいって言うわけですよね。そこで変わった!っていうのがあったんですかね。
雪舟の革新性、雪舟から学ぶこと
福士さん:雪舟が生きていた時代以前から、中国の絵はみんなの憧れでした。雪舟が中国に行って勉強した絵というのは当時の日本人からするとコンテンポラリーアート、現代美術だったんです。そういう絵がまだ日本に入ってきていなかったから、本場で直に学んできて、そのスタイルを日本に導入したという点で大きなインパクトを与えた人なんですね。雪舟の先生たちは中国に行っていないんです。
山寺さん:なるほど。雪舟は、オレ、行ってみるわ~と中国に行って。向こうもすごいけれどやっぱり日本の先生たちもすごいよって言いながら本場の影響もしっかり。その時代の最先端なんですね。今は海外に行くのは当たり前な時代ですが、15世紀には大変なことでしたし。
―雪舟は、色々な描き方ができるというのも大きいのでしょうか。
福士さん:そうですね、中国のさまざまな画家のスタイルを描き分けていますし、主題もあらゆるものを手掛けています。仏画も花鳥画も山水画も人物画もなんでも描くという画家ばかりではありませんでした。
山寺さん:自分のスタイルを貫く人はいても、その当時では画期的だったんですね。そういう意味では僕も本当に器用、器用と言われて。いちいち自分の話を出すなって感じですけど(笑)新人のころから器用貧乏になるな、そんな人の真似ばっかりしてと。誰かっぽいだけで「自分がない」的なことをずっと言われ続けてきた声優人生だったんです。でも、伝統文化は、ほとんど模写から始まるんだ!っていう事なんですね。
―雪舟や、その後の雪舟推しの画家たちともつながりますね。
山寺さん:雪舟たちと僕じゃ話のスケールがあまりに違いすぎますが(笑)色んな真似をして、自分の中に取り込んで、そこから自分になっていけばいいと思っていたので、雪舟の生き方は勉強になるなって思いますね。
―雪舟をちょっと身近に感じられましたか。
山寺さん:そうですね。雪舟は弟子に、中国の最先端の画家はこんな感じだよって描いて見せて、これで勉強しろって言うんですよね、なかなか難しいぞ~、俺は描けるけどねって言って。
僕も誰かに教えるんだったら、あの人はこんな感じだろ?なんて、ちょっとやって見せたり。自分じゃない声優の真似を。(笑)いいですね。憧れます。
―では雪舟路線で(笑)
山寺さん:声優界の雪舟目指して。(笑)
―最後に、音声ガイドを聞かれる方や展覧会にいらっしゃる方へメッセージがありましたら。
山寺さん:雪舟の名画とそれを継ぐ者達の名画が一堂に会す素晴らしい展覧会です。しかも国宝目白押し!画聖はいかにして画聖となったのかが紐解けるかも!
京都だけでの開催ということで、本当に貴重な展覧会です。沢山の方に足を運んでいただきたいと思います。
そして、ぜひ音声ガイドもお楽しみ下さい。正直言いますと、僕はかつて音声ガイド使わない派だったんです。解説文を読めばいいし、自分のペースで回りたいし。でも実際に使ってみて驚きました。こんなに分かりやすく、しかも深く作品を感じる事が出来るのかと!この展覧会においても、きっと楽しんでいただけると思います。能登麻美子さんと私でお送りする音声ガイドも宜しくお願い致します!
―ありがとうございました。
展覧会は5月26日まで。ぜひ会場で雪舟が伝説となる過程をたどってみてください。
解説ナレーター、能登麻美子さんのインタビューはこちら。(タカハシ)
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展覧会概要
音声ガイド概要
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