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世界のイチローズモルトはこうして日々進化を遂げる…秩父蒸溜所探訪記(第1部)


みなさまこんにちは!有限会社エィコーンのスガでございます!

今回は、なななんと!!みんな大好き♡イチローズモルトを生産している、秩父蒸溜所に突撃して参りました!

プロダクションチームリーダーの奥山太郎氏のご案内のもと、かなりディープにご説明いただきました。

全5部構成で、内容は以下の通り。
1部:秩父蒸溜所について・第一蒸溜所の糖化までの過程
2部:発酵・蒸溜工程
3部:熟成庫
4部:第二蒸溜所、フロアモルティング
5部:テイスティングを交えつつ、奥山さんご自身のバックグラウンド、秩父蒸溜所としての今後の展望など
よかったらご興味のある所だけでも御覧頂けますと幸いです!

それでは早速、秩父蒸溜所についてご紹介~🥰

従業員数は、パートの方も含めて数十名。そのうち約三分の一の方が製造に携わっておられるそうです。

稼働していない時期は、昨年度の実績によると、第一蒸溜所は7月半ばから9月半ばにかけての二か月間、第二蒸溜所は8月下旬~9月下旬の一か月間。
暑い時期は発酵と冷却(蒸溜工程など)における影響が大きいことが主な理由ですが、メンテナンス作業(設備の清掃・洗浄やポットスチルの還元作業など)を設けることも重要と考えておられるとのこと。

2005年に最初の商品である『イチローズモルトビンテージシングルモルト1988』が発売されました。
2008年に秩父第一蒸溜所、稼働開始。

コンセプトは、"Back to Basic."
すなわち、基本に立ち返るということ。
そのため、木製の発酵槽やフロアモルティングなどの伝統的な手法を取り入れられているのが特徴!
第一蒸溜所では、1仕込みあたり、400kgの麦芽を使用し、200L(およそ樽一丁分)の原酒を製造。
これは他の大手蒸留所と比べると極めて小さな規模です。

そして2019年、第二蒸溜所、稼働開始。
こちらは直火式蒸溜を採用。
1仕込みあたり2tの麦芽を使用し、およそ樽5丁分の原酒を製造しています。第一蒸溜所の五倍の生産量ですね。

さて、中をご案内いただきましょう!まずは第一蒸溜所から~

「配管等、お足元にお気を付けください」
と優しく案内を開始してくださった奥山さん🥰

麦芽粉砕の工程から始まりです!
(※今回、時間の関係でフロアモルティングは見学することができませんでしたが、製麦についてもお話を伺っているので、最後にご紹介しますね!)

こちらが麦芽を粉砕するミル!

既にご存知の方も大勢いらっしゃるかとは思いますが、まずはこの工程で、製麦した麦芽を、ハスク(最も粗く、多くは殻で構成される部分)・グリッツ(デンプン収集のためにメインで利用される、中くらいの粗さの粒)・フラワー(最も細かい粒、ほぼ粉)に分かれるように粉砕します。この次の工程で、これら全てを糖化槽に入れ、お湯を掛けて糖を抽出しますが、抽出の方法はコーヒーの淹れ方と似ています。ハスク(殻)が沈殿して自然の濾過槽(コーヒーでいうところのフィルター)を形成するためです。ここでポイントなのは、ハスクが多すぎると液体が取り抜けすぎて濾過が不十分となり、フラワー(粉)が多いと目詰まりを起こしてしまうということです。さて、事前知識はここまでにして、インタビューの続きをどうぞ!

麦について―
Q. 産地はどこから、どんな品種を?
A. 第一蒸溜所では、国産麦芽(秩父産大麦を使用した自社製麦麦芽も含む)の仕込みがメインであり、スコットランド産(へビリー・ピーテッド)とイングランド産(フロア・モルテッド)も使用しています。
 第二蒸溜所では、イングランド産麦芽とドイツ産麦芽がノンピート、比較的仕込み量の多いスコットランド産麦芽はピーテッド(ライトリー、ミディアム、ヘビリー)を使用しています。
※他の国の麦芽を使用する可能性はあります。

昨シーズンの実績としては、品種はアスカゴールデンという種がメインとなっているそう。デンプンの収量が高く、品質が良く、更に仕込みやすいためだとか。

Q. 麦の違いによる味わいの違いについてどう捉えていらっしゃいますか?
A. 少なからず品種ごとに個性があり、キレイなフルーティさが特徴のもの、ふくよかな麦の甘味が特徴のもの、さっぱりしたもの、ビターなものなど色々あります。それらは様々な樽で熟成され、原酒のブレンドに必要なファクターとして活躍します。

まずはノンピート麦芽をお味見🥰
続いてピーテッド麦芽!
これらの器具を使って麦芽の粉砕具合を確認・調整します。
銀の器具で粉砕した麦芽を採取し、
目の粗さの異なる金網のついた木箱に入れてふるいにかけ、
ハスク、グリッツ、フラワーの比率を確認します。

例えば、先にご紹介した「アスカゴールデン」という品種でも、届く商品(ロット)毎に若干の差があるため、仕込みの度に必ずチェックし、粉砕具合を決めるのだとか。

麦芽品種によってはタンパク質が多く濾過槽が目詰まりを起こしやすかったり、デンプンの収量が十分に得られなかったりするそうですが、よっぽど厳しくなければスピリッツの個性を大切にしているとのこと。様々な品種を仕込み、原酒のバリエーションを増やしたいという狙いがあるそうです。

一般的なハスク:グリッツ:フラワーの比率は2:7:1。ところが、上述の理由から、時に3:6:1、3.5:5.5:1など、微調整を行っているそう。微調整の基準は、まず濾過槽の機能性、そして仕込みメンバー全員で行う、完成したスピリッツの品質評価!仕込み結果をすぐ粉砕具合にも反映させられるのは、規模の小ささだけでなく、携わるすべての方の情熱のなせる業。Back to Basic を掲げていらっしゃいますが、イテレーションを実現されている点では先進的とも言えますよね。

糖化槽。”糖を含むお湯”(=麦汁)を抜いた後の搾りかす。
キュウリ農家の堆肥や乳牛の飼料として再利用されているそうです。

糖化工程では3番麦汁まで取ります。1番麦汁は64℃、2番麦汁は76℃、3番は96℃。3番麦汁は仕込み水として再利用することで、糖の収量が高まります。1600Lの3番麦汁を再利用するそうです。

設備の使い方を丁寧に説明してくださる奥山さん🥰
設備の使い方を丁寧に説明してくださる奥山さん🥰Part2
この光景、少なくとも一度はどこかの画像で見たことがあるのではないでしょうか?
ミズナラ製の発酵槽たち!

さて、お次は発酵の工程へと進みたいと思います~!
引き続き御覧いただけましたら光栄です!!