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理想のキッチン検討会・第3回座談会⑤歴史編 近未来

6.これからのキッチン

阿古:90年代はカウンターキッチンになって、2000年代にアイランドキッチンと流行が発展していくんですが、そこに登場した有賀さんのミングル。
綛谷・広瀬:いいなあ、これ欲しい。
有賀:ありがとうございます。なかなか実用という面になると私の手には負えないんですが、クリナップがミングルに近い「HIROMA」という飛騨産業とのコラボ商品を出しているんです。
綛谷:シンクが黒っぽいめちゃめちゃおしゃれなやつ。
有賀:数日前にECサイトで売り出したという話をネットで見たんですが。建築の媒体にも紹介されていたので、メーカーも作って試行錯誤が行われるとミングルも実用できるのかなと思います。私が作って発売するのは、手に負えないので。
綛谷:でも企画は売れるものね。
有賀:思想というか考え方というか、キッチンがもっと家の中心に入ってくるとか、みんなが参加できるとか、いくつかミングルと共通するポイントが詰め込まれています。
阿古:どういうモチベーションを持っている感じですか? 今のキッチンに足りないのは、シェアすることだ、という気持ちがあるんですか?
有賀:シェアするという文脈で理解されることが、残念なことにあまりないんです。大きなメーカーは女性や主婦が使いやすいキッチンを作ることがメインなので、コンパクトにいろいろな家電が組み込まれているのは、家電メーカーに魅力的な商材になるんです。あるいは狭い家に入れるとか。住宅の中にどうキッチンを位置づけるかで変わってくるんです。
阿古:シェアできるのが魅力なのに。コロナで男性が料理するようになった、という声があちこち出ていて、いざキッチンに入ってみたら、調理台は低いし動線悪いし、使いにくいという声がけっこうあって。高さ問題は座談会で最初から問題になっていましたよね。素人である私たちには解決が難しいですが、一緒に作業したり分担したい人は増えています。そういう視点でミングルに気づいて欲しい。
有賀:確かにSNSで発表すると、使う側の人たちからはそういう声はすごくたくさん聞こえてくるし、女性は「最高」みたいに言ってくださるんです。でも、ゴミの問題、水回り、換気、衛生面など商品化に当たっては、クリアしないといけない問題がいろいろあると思います。もうちょっと2人用とか、みんなでできるという点から考えてくださるといいですね。
綛谷:今のところは現代の囲炉裏端みたいな感じですよね。昔の農家が囲炉裏を囲んでいたように、今はここで煮炊きできる感じ。
有賀:それはもう一つ私がミングルにすごく求めていた、込めた考え方です。IHなので火ではないんですが、熱源を囲んでみんなでワイワイ団らんする。孤食の時代ですが、食卓を囲むことにも皆さん「いいね」と。そういう文脈で捉えられることが大きいのかな。
綛谷:私がホットプレートの本を作ったときに、その動機は囲むことだったんです。
阿古:ダイニングをキッチンにくっつけるレイアウトもそうです。料理のシェアと食べることのシェアを一番やりやすいのが、去年爆発したホットプレートのブームと思うんですね。それを綛谷さんはもうちょっと早い段階でレシピ本にされた。みんなでご飯を作って食べることは、時間さえあればやりたいことですよね。
有賀:鍋がずっとブームだけど、鍋だけだときつい。ホットプレートやIHを置いて料理するバリエーションがもっと増えてもいいのかなと思います。
阿古:これからまたキッチンは進化していくと思うし、そこにもうちょっと女性の声が反映されていくといいなと思います。本当に今回、物件探しでキッチンをないがしろにされていない物件を選ぼうと思ったら、家賃を少なくとも5万円上げないといけないと痛感しました。私はそれでも夫婦で暮らしているからマシなんですが、1人暮らしで物件を探している友人が、まあキッチンがひどいと。貧しいものは貧しく生きなさい、1人だったらちゃちなもので我慢しなさい、というのは何とかならないかと思います。
綛谷:東京は地価が高いのでね。それでも1人暮らしのマンションが2口になっているのはかなりの進歩だと思います。
阿古:それがまだ少ないんですよね。
広瀬:実家を建て替えているときに、早稲田で一瞬独り暮らしをしたんですね。そのとき3口コンロの広い部屋を見つけたんです。でも、どう考えてもDKのDの部分に寝ているとしか思えない物件なんです。ワンルームで女性限定だったかも。大家さんがどこかの階に入っていて。普通だったらキッチンこんなに広くなくていいけど、居住空間広く取ってほしいのでは。需要と供給でうまく条件が合えばいいけど、なかなか不思議でした。
阿古:貴重だと思いますよ。
広瀬:だから見つけた瞬間に借りたんですが。1年間住んでたけど、ワンルームだし。一人で料理するのはすごく楽しかったです。
有賀:私、ミングルを作る前は場所を借りようと思って都内で結構探したんですよ。ところが、キッチンが充実している安い物件はない。たまにデザイナーズ物件でワンルームの真ん中に長いキッチンがある、お教室やるならいいという物件がありました。でもバックヤードが全くない。寝る場所が見当たらず、生活の場にするには厳しいものがありました。そして、ワンルームにしてはいいお値段でした。設備にお金もかかるし、大家さんも取り換える負担もあるからしょうがないのかなと思いました。結果的に、家をリノベしたんです。
阿古:もちろん設備はお金がかかりますが、今回見てきた歴史的なところから考えると、そんなにキッチンは進化していないと思います。形もそんなに変わらないし。確かに家電が入ったり換気扇が高性能になったり食洗器がデフォルトになったり進化しているっぽいですけど、もうちょっと開発の余地はあるのではないでしょうか。
有賀:いっぱいあると思います。
阿古:そういうプロジェクトを私はこれからやっていきます。実現するかどうかわからないですが、理想のキッチン。今回ようやく少しバージョンアップしました。その視点で取材やリサーチをして、いろいろな媒体で書きたいと思ってアプローチ中です。ユーチューブも引き続きやります。また何かあればよろしくお願いします。
一同:ありがとうございます。

以上で理想のキッチン検討会の座談会は終了です。

なお、今回の動画はこちらから見られます。

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