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理想のキッチン探し71再びの学芸大学

 先日見た祖師ヶ谷大蔵の部屋は見送りました。趣味もよかったし、デッキテラスから入れる空間は新しい可能性を感じさせるものでしたが、日当たりが悪いのと、何より予算のマックスに到達する家賃が怖くて、思い切れなかったのです。家賃水準を上げれば、私が望む条件に適う部屋があるとわかっている。だからがんばって払える上限を上げよう、と2人で相談してきましたが、いざ高い予算の部屋が目の前に登場すると、生活を切り詰める可能性がまざまざと見えてしまったのです。
 その後、高円寺で駅から徒歩1分で80平方メートル弱の部屋が見つかって最初に名乗りを上げることができたのですが、まだ居住中とのことで不動産屋に申し込むよう迫られました。見て見ないとわからないことはたくさんありますが、そんな利便性が高い場所に広い部屋はめったにないので、内見できるのを待っていたら他の人に取られてしまうというのです。これですよ、これ! 部屋を見ることもなく決めろという商習慣は、絶対おかしい。
 せめて外観を観よう、と現地へ行きました。駅の南側の商店街でOKストアの商品搬入口が、3階のベランダから丸見えです。午前6時までに出入りするのは禁止、と貼ってあります。ということは、6時になったらトラックが出入りする。ベランダに面した部屋は寝室になります。しかもそのベランダが狭く、室外機がただでさえ狭い空間を圧迫しています。窓があるのは、その東側と北側ですが、北側は目の前が非常階段、そしてビルの壁。日当たりはかなり悪いです。間取りはシンプルな3LDKですが、これはやっぱり暮らしていてとてもストレスが溜まりそうです。なので見送りました。
 その翌日、学芸大学に狭めですが駅から徒歩11分の住宅街の部屋が出たので観に行きました。テラスハウスの1階2階で、75.8平方メートル、2LDKです。木造の、テラスハウスと言えば聞こえがいいですが、アパートです。北側の住宅街で感じのいい家が並びます。近くにオーガニックカフェもありました。

 学芸大学の北側なので、自転車を使えば三軒茶屋も行けます。便利なところです。ご飯やお茶をするところに事欠きませんし、三茶にはいいパン屋があるのを知っています。買い物も個人商店と東急ストアは確実にあります。トレンドもよく見えるので仕事のリサーチにも持ってこい……でも、夫は「高円寺のほうがいい本屋もあるし」と言います。わかります。城南地区に住んでいたときは、学芸大学ならいいなと思ったでしょう。東急東横線と田園都市線は、当時の私たちの手が届く家賃の部屋が見つかりませんでしたから。でも、私たちは、特に私は東急沿線以外の奥の深さ?を知ってしまった……こんな風に文化と買い物の利便性を求めるから決まらないのはわかっているのですが、もう心が飢餓感を求める、7歳以来の生活に戻りたくないのです。いや、学芸大はそんな何もない郊外ではないんですが。
 そうです、学芸大は人気の住宅地。私たちは、手違いもあって退去当日に部屋を見ることができたのですが、翌日の日曜日にも2組ほど内見予定が入っていて、ここでいったん締め切って競合させるそうです。また競合。私たちは会社員じゃないから不利じゃないか、と思わず不動産屋さんに行ったら「お子さんを嫌がる大家さんもいるので、わかりません」と返されました。
 1階は窓から植栽も見えていい感じです。でも目の前の住居、今は他の場所にいる大家さんの家だそうですが、が近いのであまり日当たりはよくありません。2階は広いですが、狭めのウォークインクローゼットがある部屋と、奥行きが34センチしかない収納だけ、浴室と洗面所は2階、トイレが1階ですが、トイレはギリギリの広さで、浴室は古いタイプのずどんと深い浴槽で、しかも洗面所との間の敷居が高い。あちこちに手すりがついたバリアフリー配慮の住宅なのに、この浴室は高齢者には入りづらそうです。
 キッチンは広い。幅は今と変わらず、奥に収納も並べられます。

 写真はこんな感じ。

 まだ新しい、人気の引き出し式です。キッチンはいい。右手に見えているのはエントランスなので、玄関からの動線もいい。でも、壁は少なそうなので倉庫と併用になるでしょう。家賃も手が届く。家に帰ってからレイアウトを考えるつもりで、細かく寸法を測りました。もう私たちは寸法を測るプロです。1人でだって測ることもできます。
 その後、駅前に戻ってベトナム料理店で軽食を食べながら、いろいろ話し合いました。この部屋もそうですが、選んだ部屋で寝泊まりしないんだったら使えるんだよな、という部屋がたくさんあります。でも、私たちは仕事も暮らしも同じ部屋でするんです。仕事場を別に借りても、財布は同じなので、その分部屋に当てられる予算が減るだけで、やはり良質な部屋を望むのは難しいでしょう。しかもまた競合。駐輪場が狭めなのも気になりました。
 なぜ、広い部屋はこんなに少ないのでしょうか? オーナーの旨みが少な過ぎるからです。なぜ、キッチンと部屋の使い勝手が両立しないのでしょう? 住み手の暮らしやすさを考えているオーナーや住宅業者がほとんどいないからです。キッチンについて調べるうちに、理由はすぐわかるようになりました。いったい何のプロに私はなろうというのでしょう。


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