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物語食卓の風景・専業主婦のつぶやき③

 関西に住む専業主婦で、8歳と2歳の娘を育てる香奈子の悩み。それは夫の勝がマメな側面を出すことだ。前回はこんな感じでした。

  結婚したときに、勝が持ってきた荷物の中に「昭和か!」とツッコミを入れたくなるような箒が入っていた。香奈子が「これ何?」と聞いたところ、「箒だよ」と当たり前の返事をする。「だから、その箒が何で入ってんの。掃除機あるでしょ」「いや、ばあちゃんがもってけって、新しいのを買ってプレゼントしてくれたんだ。きれいだろ」「いや、新しいのは見たらわかる。なんでかって私は聞いているの」「ばあちゃんが、畳は掃除機をかけると傷みやすいからって。それにちょっとホコリが溜まったときに便利だろ。掃除機を出してきてセットするのって、意外と面倒だし」と鼻を膨らませながら言う。転勤で1年ほど1人暮らしをしたことがある勝は、そのとき自分で家事を一通りやらなければならなかったので、掃除機を出すのが面倒だと知っている、と自慢げに言う。

 今、家にある掃除機は勝がその1人暮らし時代に使っていたもの。1人ならスティック型で十分だったろうに、「母ちゃんが家電を買ってくれたもんで」と言う。勝のうちの人たちは、過保護なところがある、と香奈子は思う。「いや、一緒に買いに行ってさ。お金はちゃんと自分で出したよ!でもスティック型はすぐ壊れるって母ちゃんが言ってこれを選んでくれたんだよ。一生懸命選んでくれているのに、否定できないだろ」と言う。

 そして結婚するときは、ばあちゃんの箒。「箒だとちり取りで集めないといけないでしょ。それにホコリを巻き上げてしまうかもしれないんだよ。私は使わない!」と言うと「分かった。おれが使う」と言う。

 子供が生まれるまでは、その宣言を実行しようと思ったのか、週末にふと思い立ったように、箒でテーブルの下を掃除したりしていることがあった。「何してんの?」と聞いたら「いや、汚れやすいだろ。ちょっとゴミがあったからさ」。「そこは午前中に私が掃除機かけたんだけど。私の掃除ができてないっていうの」と、妊娠中で体が重たく、イライラしていたこともあって、つい怒ってしまった。

 LDKはよく使うし、食事もするから汚れやすい。だから面倒なときでも、この部屋だけは毎日掃除機をかけている。それでも、2人がうろうろして数時間も経てば何かしら汚れてくる。それは分かっている。でも、仕事も辞めたし、家にいるからには、主婦業を全うしようと思ったのだ。それなのに、掃除した部屋をまた掃除されると、自分が主婦として至らないところがあると指摘されたような気がする。

 もっとイライラするのは、台所に入ってきたときだ。

 

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