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理想のキッチン検討会・第3回座談会③ 歴史編 戦前から昭和半ばまで

3.かまどの台所からダイニングキッチンへ

阿古:というわけで、歴史の話に移ります。まず私が概要を話しますので、そのあとコンさん、主婦の友社の話をしてください。
 こちらの写真は『台所空間学』という百科事典みたいな本から取りました。取材は80年代なんですけど、昔のキッチンが残っている家で、水ガメがあります。流しがあって、改良かまどがあります。戦後、GHQの主導で農家の台所改善運動が起こり、レンガなどで固めて排気口をつける改良かまどができました。もともと農家の台所は排気口がなかったので、煙が充満して失明してしまう事故が多かったらしいんです
 こちらの写真は、土間が続いている中に炬燵が埋め込まれています。昔のキッチンを改造しながら暮らしていたことがわかる。奥が茶の間で土間が台所。母方の実家が広島で子供の頃よく行ったんですが、土間の台所の部屋があって、その隣に板の間のキッチンがありました。

台所と茶の間


綛谷:昔、そういうのがありました!
阿古:土間のかまどでないと、おもちを作るための米を蒸すのに対応できないとか、大量調理に向かないという理由があって土間は残した、という話があります。なので、祖父母の家でも折衷しながら暮らしていたのかな。それと関連して、もう1枚の写真は別の茶の間ですが、炬燵があって、タイルとか貼り付けた改良かまどがあります。その後10年、20年で板の間がはやるので、フルで活用された期間は短いと思います。戦前を彷彿とさせるが実は、戦後の早い時期で80年代まで残っていた。どれも岩手県の写真です。

大船渡の台所


有賀:都心にはないですよね。
阿古:都心の写真がなかったんですよね。西のほうから立ち流しが普及していくんですが、それは次の写真です。日本最初のキッチンメーカーの広告です(トップの写真)。戦前に、まず国が言い出して、そのあと主婦の友社や婦人之友社などの雑誌の誌面で、台所改善運動が盛り上がるんです。展覧会もあって、立ち流しにしましょう、ということが推奨された。キッチンメーカーができる前は、家を作る大工さんが作りつけているんです。都会の台所は狭くて暗い。明るいところにキッチンを持っていきたい、という声が非常に大きく、家事室を欲しいという声も多くありました。
 鈴木商行の事例集の写真もあります。前の台所はこれしかなかったのを、設備を充実させました、という事例なんです。

鈴木式台所改善案


有賀:ビフォーアフターみたいな。
阿古:そうです。収納力がすごく高まっている。
有賀:テーブルの上にフルーツも。西洋っぽい。
阿古:ガスも水道も入れる。都会にはガスが普及していくので、コンロも広まる。でも流しはまだまだ木製が多くてお手入れが大変。その後人研ぎという石を固めたものが流行ったけれど、食器を落とすと割れるという難点があった。その後ステンレスなんですよね。
 戦後のものは、ダイニングキッチンの導入時期に出た『お台所写真集』という事例集を手に入れたので、その一部をご紹介します。湯沸かしの台があり、これ炊飯器なのかな?流しがこれ。カウンター式キッチンみたいなのは戦前からあります。ハッチというのがありましたでしょう? ダイニングからもキッチンからも開けられる食器棚で、料理の受け渡しが窓のところからできる。別置きのコンロも1台あって、すでにステンレスの流し。

戦後の台所

戦後の台所ハッチ


有賀:こういうハッチって昔の食堂とかになかったですか?
広瀬:実家の建て替える前の家、私が生まれた頃の台所はこんな感じで、キッチンと食卓の間に窓がありました。ギリギリ食器を出したりはできる。ただ、そのうち冷蔵庫が大きくなるので窓は埋まってしまいました。
阿古:カウンター式キッチンは、実は長い歴史があることが言えると思います。
有賀:おしゃれですね。上まで見えるし。
阿古: 90年代の初めにものすごくカウンター式キッチンがはやった。私の周りも結婚した頃で、新居に招かれるとだいたいカウンター式キッチンでした。カウンターにもダイニングテーブルにもモノが置かれて、うまく使えていなかった印象があります。
 でも、今キッチンが大きくなって、ダイニング側にシンクを置く、としたときに、元の面積は広がらない。昔はカウンターの前にテーブルを置きましたが、今は調理台の横にテーブルをくっつけおしゃべりしながら料理もする、という形でキッチンとダイニングがセット、という考え方は続いています。
 ここからダイニングキッチン、システムキッチン、カウンター、アイランド、ペニンシュラとトレンドが進化していきます。

 ユーチューブの動画はこちらです。

この後は『主婦の友』に紹介されたキッチンの話へ続きます。ユーチューブのバックナンバーはこちらから見られます。よろしければチャンネル登録してください。


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