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小説・物語食卓の風景

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郊外で何不自由なく暮らしていたリタイヤ男性が失踪。家族や周りの人たちの戸惑いを軸に、家庭によって異なる家事のあり方について考えます。育児真っ盛りの娘、子どもがいない夫婦の姉、シン…
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2020年1月の記事一覧

物語食卓の風景・昭和家族の妻③

物語食卓の風景・昭和家族の妻③

 昭和に子育てをした立花洋子の物語、続きです。前回はこういう話でした。

 真友子が最後に帰ってきたのは、5~6年ぐらい前の春だったかしら。あのときは、珍しく香奈子のご主人の勝くんも、真友子のご主人の航二くんも来て、家族全員がそろった。記念写真も撮ったのよ。あのときの写真、何でないのかしら? あらいやだ、撮ったのは真友子だった。

 なぜ帰ってこなくなったのかしら。その年の夏に電話をしたら、「仕事

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物語食卓の風景・昭和家族の妻②

物語食卓の風景・昭和家族の妻②

 初挑戦の家事小説。前回はこんな話でした。

 駅から自宅までは、徒歩で20分かかる。バスも使えるが、2駅しかないし、本数が1時間に2~3本と少ないし、バス停からも数分かかるので、結局時間的にあまり得にならないと思うので、遠いけれど歩くことが多い。歩きながら洋子は、また思い返す。

 コロッケだけじゃない、揚げ物全般を最近はつくらなくなってしまった。本当は、サツマイモは天ぷらにするのが一番おいしい

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物語食卓の風景・昭和家族の妻①

物語食卓の風景・昭和家族の妻①

 先日、新しいカテイカ研究会の仲間の有賀薫さんと会って、家族構成も暮らし方も価値観も異なる多様な人たちが、それぞれ納得して心地よく感じる家事のあり方を考えていくには、ケーススタディとして小説にしなければいけないんじゃないか、という話になりました。

 そこで初挑戦。今年は小説化に挑戦してみたいと思います。もちろん、日々の家事のやり方について思いついたことがあれば、エッセイも書くとは思いますが。実は

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