南仏にある調香学校


今回から調香学校についてのお話に入っていきたいと思います。

渡仏した次の年、南仏の調香学校を受験しました。
試験のために南仏へ向かい、数日滞在し、試験と面接を受けました。
その際、当時調香コースを受けている日本人生徒さんを紹介してもらいお話を聞かせてもらいました。
どのような経緯で学校に入ることになったのか、授業の内容、そこでの生活について色々とお話して下さいました。
試験の結果がいつ頃出ると教えてもらってパリへ戻り、しばらくそわそわしながら生活していました。
ところが待っても待っても返事がきません。
意を決して電話をかけたところ、不合格だったと言われました。
その原因を聞いたところ、数学の点数が悪かったと言われました。
連絡がなかったため、きっといい結果ではないとは思っていましたが、数学の点数が悪いのが理由というのがどうも気にかかりました。
なぜならテストの内容はそれ程難しいものではなく、不合格の本当の理由だとは思えなかったからです。

その後、ご縁があって紹介して頂いた香料会社勤務の日本人の方からも色々とお話を聞かせて頂きました。
不合格となってい待った学校のサマーセミナーにまず行ってみてはどうかと背中を押して頂き、次の年の夏、サマーセミナーに参加することに決め、再度その学校を受験することにしました。

サマーセミナーに参加する際、その当時調香学校に行っている日本人の生徒さんを再び紹介して頂き、その方にも本当にたくさんの事を教えて頂きました。
そしてここで衝撃的な事実を知ることになります。
それは前年、その方も同じ試験を受けているはずなのですが、何と受験前から入学が決まっていたと聞いたのです。
ある方の紹介を介せば入学させてもらえると。
つまり私は受かるはずもない学校の受験にわざわざ南仏まで向かって本気で試験を受け、不合格となっていたのです。
その方ははとても親切に助けて下さり、その方が悪いわけではなく、ただただその学校のシステム、やり方を知り、こんなことがあるのかと呆然としました。
そしてその方のアドバイスで、推薦する力を持っている”ある方”にその年の生徒として紹介して頂けないか、無理を承知で連絡を取ってみたのですが、会ったことのない方を紹介することはできないと断られてしまいました。
そのため、去年同様、普通に試験を受けることになったのです。
試験はサマーセミナーの終盤にありました。

サマーセミナーには色々なバックグラウンドの多国籍クラスで、香水の事が好きな方が集まっており、とても楽しく充実した時間でした。
もう少し時間をかけて学びたいなと思うこともありましたが、先生の説明も分かりやすく、あっという間に時間は過ぎていきました。
そしてセミナーを受けている間に私が学校受験をするという話をすると、そこに参加していた他の生徒2人も試験を受けることになりました。
前年と同様の試験を受け、それから面接は授業中に順番に受けていきました。
私は確か2番目に受けたのですが、面接後、今年も受からない事を理解し、暗い気持ちで授業へと戻りました。
そして最初に面接を受けた生徒から面接について聞かれた途端、私は泣き崩れてしまいました。
その学校に行こうと頑張ってきた2年間の時間は何だったのかという口惜しさと腹立ちと悲しみが入り混じり、しばらく涙が止まりませんでした。
そして後にその彼女も、面接の後に涙していたのを聞かされました。
最終的に最後に面接を受けたこだけが合格していました。

短期ながらそのサマーセミナーに参加したおかげで、授業の雰囲気だけでなく学校の内部事情が少し見えてしまいました。
残念ながらそれはプラスのものではなく、がっかりすることがいくつかありました。
そのすべての点において、1人事務の方が関わっており、その方がその学校を裏で取り仕切っているようで、とにかくお金に汚く、人を人として扱っていないと感じる対応をしているのを何度か目にすることもあり、その方がいる限りこの学校は変わらないのだろうなと思いました。
そして将来、香料業界で働く可能性がない方(香料業界や化粧品業界での職務経験やコネがない方)は取らないという姿勢のようでした。
日本でも有名大学への合格率を売りにする学習塾と同様に、その学校から実際に香料業界で働く可能性のある生徒を選別しているようでした。
もちろんその試験管の心を動かす素晴らしいプレゼンで自分を売り込むことができる方は合格することもあるとは思います。
ただ何も知らずにこの学校を受けてみたいと考えている方に、内情を知らないままに受験をすることで無駄な時間とお金、そして何よりこんな悲しい、悔しい思いをしてほしくないという思いから私に起こった事をお話ししようと思いました。
試験についてだけでなく、、セミナーの支払い済みの金銭のことでもめたり、何人かの生徒さんたちから色々な経験談を聞いた結果の学校の体質を事実に基づいてお話していますので、少しでも参考にしなれば幸いです。

実は初めてグラースに来た時、言葉にはできない居心地の悪さを感じ好きになれなかったのです。
なぜかその町は私の心にしっくりこず、この町に住みたいと思えなかったのを2度目の再訪で思い出していました。
それはたぶん、街の雰囲気と学校の雰囲気、すべてが肌に合わないのを全身で感じていたからだと思います。
それでも調香を学べる学校はフランスにも少ないため、調香を学ぶために翌年も受験しました。
グラースは私が訪れる何年か前に移民を受け入れてが行われ、その後町の雰囲気がガラッと変わったと聞いたことがあります。
町中に移民の方がたむろしており、行きかう人を何をするでもなく眺めているのです。
昼間でもその視線は少し異様で、冬や夜は少し怖いだろうなと感じました。
そしてその移民の方の視線で強烈に自分がそこで外国人であることを実感しました。
それは何かとても居心地が悪く、その町での疎外感を感じたのでした。
そこから数十分離れたエルメスの名誉調香師の住む町に遊びに行った際には全くそのようなどんよりした感情を抱きませんでした。
やはりグラースという町が私には合わなかったのだと思います。
もちろんパリはもっとたくさんの移民が住んでおり、移民に対して悪い印象があるというわけではなく、もっと自然に町に溶け込んでいるため、グラースで初めて移民の方を意識し、何だか怖いなと感じたのです。

長年入りたいと憧れていた学校に入れないと分かってから、私は再度ISIPCAの入学条件を確認し直すと、以前あった年齢制限がなくなっているのを発見し、
一念発起し、フランスで化学の学位を取ってISIPCAへの入学を目指すことにしました。

サマーセミナーでは短いながらもクリエーションの時間があり、自分の作った香りを他の生徒たちが気に入ってくれ、それぞれ少し分けてほしいと言って持って帰ってくれました。
もちろん調香については何も知らない状態なので、香りの持続性の問題があったりときちんとした香水といえるものではなかったのですが、みんなの反応でクリエーションの楽しさを感じることのできる貴重な体験になりました。
そして何より、そして調香の勉強をしている方たちと知り合えたこと、この学校を目指すのを諦め、ISIPCAを目指そう!そのために化学の学位をとるぞ!と決心をすることができたため、本当に参加できてよかったです。

あくまでこれは私個人の経験談ですので、素晴らしい学校で素晴らしい経験をできたという方もいらっしゃると思います。
10人いればそれぞれ違う体験があると思うので、こんな事もあるんだなという一体験談とし参考になれば幸いです。


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