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【あやの戯れ言】正論は“とどめ”を刺す



その男性は臓器移植が必要となり入院した。病院側は家族の中から適合者を探そうとしたが、全員拒否。アイツに臓器を提供するくらいなら◯んだ方がマシだ、と。

看護師たちは言う。『なんて冷たい家族なの?命がかかってるのに』

そして家族に話をする。『今、一番辛いのはあの方です。不安で怖くてたまらないんです。家族なら協力してもらえませんか?』『今助けないと、あとできっと後悔しますよ』

◯●◯

かなり前の小説(だったと思う)の一説。この一説に、わたしは違和感どころか、強い嫌悪感を抱いたのを覚えている。

なぜ一番辛いのがあの人だと、何も知らない第三者が決めつけるんだろう。

これは小説の中だけの話ではない。現実でもよくある話で、似たケースを聞いたことがある。医師や看護師にこういうことを言われ、実情を話しても家族の辛さを理解してもらえない、もう我慢の限界だと。

我が家でも似たようなケースがあった。このシーンほど重篤な状況ではなかったが、似たセリフを医師から言われた。もし父親が同じ状況になっても、おそらくわたしは臓器提供を拒否するだろう。

例え家族であっても、自分の身を削ってまで助けようと思えないことはある。それほどまでに家族は追い詰められてきたんだ。

たった一人の人間に、追い詰められ追い詰められ、これ以上関わったら相手を◯してしまう。もしくは自ら命を絶ってしまう。今、辛うじてストッパーがかかっているけど、次に何かあれば、そのストッパーは外れてしまう。その恐怖。

そんなギリギリのところで留まっていることを、この医療従事者たちは理解しようとしただろうか。少しでも家族の話を聞こうとしただろうか。(我が家の場合、こちらの話をする間が1秒もないほど担当医のマシンガントークが30分続いた)(優しさと熱意のあるお医者さんなんだろな)(そこは感謝)

この看護師の言葉は正しい。至極真っ当。正論だ。目の前で苦しんでいる患者を助けたいという優しさでもある。助かる道があるのに諦めてしまうのは医療従事者としても納得がいかないだろう。

でもその正論が家族にとどめを刺す。ギリギリのところで辛うじて留めていたストッパーを外してしまう。

他の第三者はこんなことを言うかもしれない。『そこまでの状態なら、なぜもっと早く別れなかったの?なぜ助けを求めなかったの?』と。

それも正論だ。家族は返す言葉もないだろう。言われなくたってそんなことわかってる。

でもできなかったんだよ。助けてもらえないこともあるし、逃げきれないことだってあるんだ。

薬物依存や暴力みたいに、問題が目に見える状態だったら、第三者も家族の心情を想像できるかもしれない。

だけど、問題は目に見えるものだけじゃない。表面的には普通の家族に見えても、確執や崩壊が起きている家族は山ほどある。むしろこのケースの方が根が深いことだってある。

そんな家族にとって世間の正論は剣でしかない。心を、精神を、ズタズタに切り裂く剣なんだ。

◯●◯

『今やらなければ後できっと後悔する。だから後悔しない選択を』

これもよく聞くセリフ。人の生死に関わる場面だけでなく、いろんな場面で聞くし、わたしも言われてきた。これも正論だし、実際そうだろう。

でも、小説の話で言うと、このケースで家族が臓器提供した場合、提供したことを家族が後悔する可能性もあるんじゃなかろうか。臓器提供なんて、提供側にもリスクあるんだから。

現実に話を戻すと、どんな生き方をしたって、後悔するときはする。すでに数え切れないくらいの後悔をしてきた。後悔のない生き方なんて、人生100周くらいしないと叶わないんじゃないかと思う。

わたしは、未来に後悔しない生き方よりも、“自分の心”の安全を最優先することを決めた。後悔しない人生より、自分の心の安全を守る人生だ。(これが正しいとかそういう話ではなく、わたしはこの生き方を選んだってだけ)

カウンセラー失格と言われるかもしれないが、心の安心安全を守ることができない環境なら、例え血のつながった家族であっても、わたしは決別していいと思っている。一番優先すべき、守るべきは、今の自分の心。

前に心を壊したことがあるから、もう二度とあんな自分に戻りたくないというのもあるけど、心が安心安全であれば、どんな現実も、どんな結果も受け止められているような気がしている。

一生許す気のなかった人に対しても精神的距離が生まれ、正直、どーでもよくなった。許す許さないとかじゃなく、完全に別世界の人間。お互い勝手に生きようやと思う。

だんだん話が逸れてきた。

要は、正論は時と場合によって人の心をグサグサに切り裂く刃になる。正論を言いたくなったときはヒト呼吸おいて、相手の背景を想像してみるといい。

そして、心の安全を守ることができない環境にいるなら逃げていいし、決別してもいい。自分の心の安心安全を第一に考えてほしい。

それが言いたかっただけ。

4行で終わる話だった。

異論は認めるけど正論で論破しようとしないでくださいましね。


今日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
日々是感謝♡あや

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