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【植栽家の日常】20231116 園芸家一生モノの必携本 3選


【私も愛用している園芸家一生モノの必携本を紹介します】

私は園芸書の執筆もしていますし、web情報サイトでも連載記事を持っていて、植物の解説文を書く機会も多いので、複数のソースを用いて正しい情報をお届けするために植物の調べごとは欠かせません。

※下記2リンクはご参考まで、私が執筆に携わった近著と、私が執筆している園芸情報サイトGarden story の連載記事です。本題の園芸家一生モノ必携本は本記事の後半で3冊章立てで紹介しています。


植物の調べごとをするにあたり、ネット上の情報は量も豊富で、普段使いには役に立つのですが、ネットの情報は玉石混淆で、信憑性に足るものもあれば、結構怪しげなものもあります。

で、ネット情報の真偽について調べていると余計に調べごとが複雑化するため、私は、ここぞという発信の際の情報収集は、信頼に足る紙の園芸植物辞典を参照しています。

今回は私が植物の調べごとに多いに用いている決定版の書籍、とりあえず最重要な3冊を紹介します。

2023年現在では絶版だったり、もともと高価なものもありますが、おそらくディープな園芸家の多くが一生モノのバイブルとしてリファレンスしている名著と思いますので、あえてご紹介します。

【A-Z園芸植物百科事典】

英国王立園芸協会の前事務局長であり、世界的に著名な植物学者であるクリス・ブリッケル率いる70名以上の植物専門家からなるチームによって編集された、世界で最も包括的な園芸植物百科事典「RHS A-Z Encyclopedia of Garden Plants」の日本語訳版です。

「A-Z園芸植物百科事典」は一般草花から花木・庭木まで、15000を越す世界の園芸植物を、詳細な植物解説と6000点を越えるカラー写真で紹介する、1080ページにおよぶ大著。

植物学名のアルファベット順に植物が紹介され、各植物の性質や園芸家視点の栽培ポイントについても詳細に記載されている園芸植物百科事典です。 

現在日本で手に入る園芸植物のほとんど、特に洋種についてはほぼ網羅されているといってよい収録数で、まだ日本では手に入らない種も掲載されているので、本書を購入した当初 2000年代の私は、ベス・チャトーガーデンの写真集の植物名を本書で逆引きして齧り付きで読んでいました。

英国王立園芸協会編ということもあり、単なる植物百科ではなく「園芸植物」として美しく使用しうるポテンシャルのある植物が紹介されている点も審美的フィルターが効いていて、そこも私的には気に入っているポイントです

ほぼ文句のつけようのないたいへんな名著と思いますが、あえて少し難をいうとすれば、学名順記載であることで慣れない人には見にくい点と、海外での栽培法解説の翻訳なので、日本での実地栽培とは気象環境の相違により若干鵜呑みにできない点くらいでしょうか。

私は普段から植物学名に慣れているので、比較的見やすいのですが、植物の学名引きに慣れていない方には最初は取っつきにくいかもしれません。

しかし、学名で植物を理解できると海外の文献なども調べやすくなるので、趣味の園芸を深く掘り進んでいく面では良いことばかりなので、植物を日本語名だけでなく学名でも知っておくのはオススメです。


【小学館 「園芸植物大事典」コンパクト版(全3巻)】

前述の「A-Z園芸植物百科事典」と双璧というべき、3810ページにもおよぶ国内版の園芸植物百科事典 最高峰の大著です。

各分野の権威による最新・最詳の解説書で、日本・世界の栽培植物約2万種を収録しています。「A-Z園芸植物百科事典」とは異なり、必ずしもアルファベット順ではなく、カタカナ表記の属名順ごとに種類をまとめて解説、植物名は和名・学名・英名も併せて表示されており、日本人が参照する事典として最適な掲載法が配慮されています。

全3巻の第3巻が索引になっていて、第3巻で各種植物名から掲載ページを調べ、1〜2巻の解説ページにたどり着くような使い方をします。

日本人読者のニーズに沿った編集、網羅性も凄まじく、そして「A-Z園芸植物百科事典」よりも日本原産種についても詳しく掲載され、栽培法解説も日本で実践的に使えるものなので、ほぼ百科事典として鉄壁と思います。

これまた文句のつけようがない名著ですが、あえていうなら、全方位的に園芸植物を網羅している分、「A-Z園芸植物百科事典」から感じられるような固有の「好み」というか良い意味での「偏り」があまり見られない点と、ボリューム満点でたいへん分厚く重い本なので、必然的にハンディさに欠ける点でしょうか。

あともう1点。本書は掲載内容が満遍なくたいへんバランスが良いのですが、私個人的には、著者・編者の個人的センスが全体通してそこはかとなく感じられる本が好きだったりもします。少し学者的というか、客観的過ぎる印象がありますね。

そんなこんなで、たいへん贅沢な話なのかもしれませんが、私的には「A-Z園芸植物百科事典」と「園芸植物大事典 コンパクト版(全3巻)」の両方を持っていると完璧と思います。

私も購入当初はかなり熟慮して自分への一大投資な気持ちで買った、どちらもたいへん高価な本ではありましたが、10年以上経った今でも折につけて参照している、学びの尽きない一生モノの宝物の2冊です。


【植物学ラテン語辞典】

植物学名は種の特徴を示すラテン語や発見者の名などにちなんで名付けられる場合が多いですが、学名のラテン語の意味を調べるのに、たいへん詳しく・引きやすい必携書。

絶版で手に入りにくいですし、たいへん学術的でほぼ文字だけの本なので「見て楽しい」という類の本ではありませんが、植物の調べごとをする上では、私には欠かせない一冊です。

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