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タンポポ / poetry

涙がでるくらい笑いあったあと
ひとり
夜道を帰る
信号で立ち止まれば
白い息が
空にのぼっていく
こんな風に笑えるまで
何年かかっただろう

会社になじめなかった私は
ひとの顔を見るのが苦手になった
上司と話すときも
ひとつ上の同僚と話すときも
手や襟元だけを見ていた
別のフロアではたらくそのひとは
顔を合わせると向こうから挨拶をした
あきらかに浮いている新人への
からかいも少し含まれていて
それでも
そのときだけは居心地の悪さを忘れて

何年かして会社をやめたあと
たいした言葉も返せない私が
まわりのひとたちから
知らずに受け取っていたもの

なにげない挨拶
手紙のなかのふとした言葉
目が合ったときの表情
ただそれだけで
こころは一瞬あかるくなった
枯れた野原に
ちいさく黄色い花を見つけたように

やさしさを受けるたびに咲いた
それらの花は
根を深くめぐらせて
ずっと待っていた
私が
顔をあげるのを

たくさんの花をなでるように
手をかざす

歩けないはずはない

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