2022/10/30 右手の憂鬱

よく指がささくれる。

ハンドクリームを塗りなさいと思われるかもしれないが、手がベトベトするのは精神衛生上大変によろしくない。スマホやPCいじるとそっちにもうつるし。塗りすぎなんかな。ちょうどいい量が分からん。チューブの裏に書いてたっけ?そんなパッケージの記憶がおぼろげになるほど、本当は大切にしなければならないハンドクリームとの縁を、のばしてのばして薄めている。

なのでささくれは、爪切りで皮を丁寧に丁寧に切っていく。以前はそのまま手でちぎっていた。今でもめんどくさい時(特に寝る前とか)は、皮を爪側に思いっきり引っ張ることで、あらたに皮膚をさかずに、どうにかちぎることを試みる。しかし大抵は失敗して、痛みに涙し、部屋にうずくまって、気がついたら朝になっている。二度としない。

現在は特に、右手のささくれがひどい。洗濯物をたたむときにひっくり返ったTシャツをもとに戻そうとして、ひっかかった。右手の憂鬱だ。

ところで、社会学者のエルツは『右手の優越』の中で、「社会と宇宙全体は、神聖な、尊い、貴重な側面とともに、俗なる普通の側面をそなえ、強く、活動的な男の側と、弱く受動的な女の側をともに持っている。つまり右の側と左の側を備えているのである」とか言っている。で、右の男性的な象徴が、右の優越視につながっている文化が多いと主張している。マオリ族やその他の資料を分析して、文化が伝播するはずもない地域にも広範囲に「右の優越視」が見受けられることを、『右手の優越』で報告したとかなんとか。文化人類学の古典として読みつがれているんだって。知らなかった。

今どき流行らなそうな意見(男=優越視みたいなところ)だなあと思いつつも、確かに手も足も右利きを教え込まれたし、寄生獣はミギーだし、クラピカ理論も右を選択することになるし、時計の針は右に進んでいくし、太陽が昇る東は地図上では右だし、右から何かが来て左へ受け流すし、ちんちんも右寄りだ。そういうもんなのかもなあ。

現在絶賛ささくれだっているのも右手だ。これは一体……なにかの偶然か……?というか優越性があるなら左手がささくれないのか……?謎は深まるばかりだ。

まあ、利き手だからじゃね?って感じだよね。利き手だから、酷使してこう、肌が。肌がこう、荒れるみたいな。そういう感じ。なんかキーボード叩いてるだけでも左手より右手のほうが動かしている気がするし、スマホも右手で触るから、その分空気と摩擦するわけじゃん。で、やっぱそうするとその分、乾燥するんじゃないか。

痛いのでなんとかしたい。

今は知らんがその昔、父親も指が荒れていたという。DNA恐るべし。

最近、遺伝の影響がやっぱり環境要因と同じくらいか、無視できないくらい色んなことに影響しているよね、みたいな言説が流行している。それがいくら真実だと思っても、ゆるい優生思想みたいな感じで、めちゃくちゃ嫌な気分になるんだよなあ。本来そういう目的じゃないにしろ、人口に膾炙するときには変貌しているってところも怖い。

ただ……そうだよな、明らかに今、僕はこの右手のささくれによってDNAの影響を味わっているのだよな……と思うわけです。

これを環境要因で打ち勝つには、ハンドクリームなどを塗るしか無いので、諦めて買います。

皆さんも乾燥には気をつけてください。

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