2022/11/07 TRPG

今年三十路の男がTRPGにハマってしまった。『クトゥルフ神話TRPG(CoC)』だ。ルールブックが高い。

TRPGって何だよって人いるかも。長い説明になる。

TRPGは、「テーブルトークロールプレイングゲーム」の略(TTRPGとも)であり、『遊☆戯☆王』6~7巻では獏良了が武藤遊戯に仕掛けた闇のゲームでお馴染みのゲーム形態である。

この遊びは、ウルティマやドラクエ、FFの始祖にあたるとされる。だから、「ドラクエとかFFを言葉のやりとりで遊ぶ」とか説明されることが多い。物語があり、その中の登場人物として参加するキャラクターを自分で作り、ダイスを使って、スキルや攻撃の成功失敗や、ダメージの値を決める。

そのTRPGの中でも国内で人気が高い『クトゥルフ神話TRPG』は、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが書いた一連のホラー作品群の世界観を前提にしているものだ。邪悪な神話生物を相手取り、世界の滅亡やキャラクターの死の回避など、あらゆる課題を解決することが目的となる。

元々はラブクラフトのホラー作品の舞台である1890年代~1920年代のアメリカや同年代の別の国々が前提になっているが、現代日本を舞台にするためのサプリメント(後発の追加ルール)などのおかげで、現代日本人のキャラクターも作れるように設計されている。

シナリオは公式から出されているものもあるが、インターネットで暗躍するTRPG民のほとんどが、版元とは関係ない「同人シナリオ」と呼ばれる二次創作作品で遊んでいる印象だ。BOOTHとか売っている。僕も先日、ゲームの進行役であるキーパー(KPと略される)デビューし、『塔葬の国』というシナリオを買った。くそおもろい。久しぶりに読み込んだフィクション作品はTRPGだった。

「クトゥルフ神話TRPG」は元々がホラー作品のため、物語の真相に近づけば近づくほど、原作者ラブクラフトや、ラブクラフトの世界観に共感したホラー作家が生み出した邪神、あるいはそれに使える奉仕種族、またはこれらに操られたり、邪神を崇拝していたり、その力を利用しようとする人間たちが黒幕となることが大半だ。

経験を積むとメタ読みが可能になるが、当然シナリオキャラクターの知識には邪神なんて知らねえってことが大半なので、その辺の知識については無知であるということが前提となって行動することになる。そうした性格のゲーム上、結末の意外性よりも、その結末に行くまでの過程が面白い……と個人的には思う。

HPやMPがあることなどは、通常のRPGと変わらない。最も大きな違いは、「正気度(Sanity→"SAN"と略されることが多い)」と呼ばれるパラメーターが存在することだ。

これは恐怖に触れることで減少していき、ゼロになると正気を失い、プレイヤーが操作することは不可能となる。シナリオ世界ではキャラクターの精神的死亡や発狂を意味し、その時点からキャラクターが使えなくなる。もちろん、HPが無くなれば肉体的に死ぬので、同様に操作不可能だ。生還すると別のシナリオでも継続して使うことができる。

なぜいまさらハマっちゃったのか。

それは僕が慢性的な中二病だからだと思う。RPGゲームで情緒が出来上がった人間は、儀式とか、カルト教団の陰謀とか、不可思議な世界に迷い込んでそこから脱出するとか、そういうのが好き。MPのパラメーターがあることからも分かる通り、魔法とかも使える。ハリー・ポッターで情緒が出来上がってもいるので、残念ながらハマる要素しか無い。現在の僕の有様は、成るべくしてなったといっても過言にあらず。

大人が邪神だの呪文だのなんだのという世界観に浸るというのはみっともない、幼稚だ、卒業せよという、厳しいご意見の方もいらっしゃるでしょうが、人間というのは古くから物語を好み、超自然的なものに心動かされ、政治にさえ宗教的な儀式が利用されてきたことを見るに、ひとりの人間の人生においても、こういう世界観に触れるということは、どういう形であれ必要なんだと思うわけです。なので、見逃してください。

自分が作ったキャラクターに感情移入できることは、どのTRPGに於いても共通の魅力だが、CoCでは基本的に作り込んだキャラクターが敵サイドや世界観にボコボコにされる。他のTRPGでもそうなんだろうけど、とりわけCoCでは理不尽に人が死ぬ。かわいそうで仕方がない。どれだけ尽力しても死ぬときは死ぬという"ひりつき"が、病みつきになる理由のひとつかもしれない。

自分が今いるTRPGの界隈では、ロールプレイ(シナリオ内のキャラクターで取るアクションのこと)上の演技が、とっても上手な人が多くて圧倒されている。恥じらいから思いっきりキャラクターになりきることができないでいるが、「こういうのは思いっきりやったほうがむしろ恥ずかしくない」というご意見もあることだし、騒音騒ぎにならない程度に注意しながら、恐怖と混沌の世界に沈んでいきたいと思う次第であります。

そのうちセッションで使えるBGM集とか、出せたらいいな。

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