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物質と物質の狭間にあるものを顕在化させる仕事。1.5ミリの追求。

映画『ようこそ映画音響の世界へ』を見てきた。これが、めちゃ、よかった。涙するような内容ではないとは思うけど、とても感動した。

映画の音はどうやって作られているのか?みたいなお話しで、製作者の方たちの「音」へのこだわりと情熱がすごくて、「人の才能ってすごいなー」と思った。才能が集まって、ひしめき合うと、こんな感じになるのかーと。

映画の「音」なんて、些細すぎて、ほとんどの音は、見過ごしてしまう。馬が走り去る音とか、風がなびく音とか、誰かのため息とか。恐竜の泣き声とか、ロボットの挨拶とか、甲冑で歩く音とか。

存在している音も、存在していない音も、「そこにあるもの」として、当たり前に音を奏でていて、その存在の仕方に、リスペクトが生まれる。それを、ものすごい細やかな作業としてやっていて、音を作る人たちは、きっと、「作業」ではなく、「命を吹き込んでいる」んだろうなーと思う。どんなに小さく、一瞬のものにでも、生命が贈られている。

人の才能が発揮される「舞台」というのは、思っているよりも、ものすごく、小さい。特に、感覚や感性に優れている人は、他の人には気づかないような、「物質」と「物質」の狭間に存在しているものに着目して、そこに、強烈な興味を持ったり、拘りを持っていたりする。


その興味と拘りを持って、物質と物質の狭間に存在するものを、現実世界に引っ張り出して、「何かしらの形」として顕在化させる。そういうことを「役割」として担う人がいると思う。私自身もそうだし、話しをしてて、何人かは、「そういう人だろうな」と感じる人がいる。

物質と物質の狭間にある「無」(とされているもの)を「有」に変換するというのは、とてつもなく途方もなくて、でも、尊いことでもあるのだけど、でも、それを実際に行うことを拒む人は多い。

なぜなら、現実世界において、それは、「何」という形では、共通認識されておらず、人や社会からしてみたら、「存在していない」「意味をなさない」とされるものだから。
大抵の場合、職業とか職種とか肩書きとか、そういう、人にもわかりやすい形では認識されていないし、人が理解できる言語に落とし込まれてはいない。つまりは、それをやるということは、人には理解されず、孤独との戦いでもある。

それでも、私は、今後、この、「物質と物質の狭間にあるものを、何かしらの形で現実世界で顕在化させること」を仕事にする人は、増えると思う。

人は、好きなことや興味のあることを仕事にしようと思うと、まず、「この世に存在している仕事や職業」から探す。でも、この世に存在している仕事は、「大多数の人がやる仕事」であって、個人1人が、「自分の好きなことは何か?」「やりたいことは何か?」から考えていくと、大抵の場合、そこには、当てはまらない。

工業化が進んだ日本には、ある程度、「型」の決まっている仕事しか存在していない。その「型」も、人間が経済を成長させるために作り出したものだし、その「型」にハマることや、その型と型が集まった「枠」の中で物事を考えるということを、日常で、何の疑問もなくやっている。

でも、その「枠」を自分の中から取っ払った時、自分の中から、無限に物質を生み出せるということに気づく。「無」と認識されているものを、見える形に、わかる形に、感じられる形にするのだ。いくらでも、できる。


 

人が、興味を持つ「幅」なんて、とてつもなく、狭い。あれもやって、これもやってみたいな「総合職」のような働き方は、日本人には、合わない。私は、「自分が興味のあることなんて、1.5ミリくらいしか、この世に存在していなくて、それを大きく、深くするのが仕事だ」と思う。

私なんて、「色を混ぜる」ことぐらいにか、興味がない。それは、「この世で認識されている仕事」でいったら、1.5ミリくらいにしかならない。だから、そのために、セッションをするし、カレンダーを作るし、絵を描くし、キャンドルを作る。「色を混ぜる」は、どんどん派生していく。
 
そして、1.5ミリにとことん拘っていくと、そこに紐付いた膨大な知識が拾われていく。1.5ミリは、幅の狭さに反比例して、ものすごく奥が深くなっていく。そうすると、仕事は無限に作り出せるし、一生飽きない。1つの同じことをやり続けるのは、すぐに飽きるけど、絶対飽きない1.5ミリのことを、飽きない形に移動させ、深遠させていくと、飽き性の人にでも、永遠に追求できる事象を作り出せる。

 
ひとたび、物質と物質の狭間にハマってしまうと、おもしろすぎて、そこから抜け出せない。ずっと、その狭間で暮らしていたいと思うし、そこで暮らし続けるために、新たに、仕事を生み出そうとも思う。
 
音響の世界の人たちのように、まだ、人々が気づいていない多くのものに、命を吹き込みたくなる。そういうことを、仕事にする人たちが、もっと増えたらいいなーと思う。そしたら、地球に、より、生命の輝きが増えていくと思う。 

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