第165回直木賞予想

半年に一度のこの季節がまたやってきました。
第165回直木賞。
明日受賞作が発表されますので、今回も予想してみました。


◎:佐藤究『テスカトリポカ』(KADOKAWA)
メキシコの麻薬密売人が流れ着いた日本で壮大な闇のビジネスを作り上げ、、、

○:一穂ミチ『スモールワールズ』(講談社)
どこにでもいそうな人たちのありふれてはいないお話6編。

○:砂原浩太朗『高瀬庄左衛門御留書(たかせしょうざえもんおとどめがき) 』(講談社)
妻を亡くし跡取り息子を亡くした老武士の生き様を描いた作品。

▲:呉勝浩『おれたちの歌をうたえ』(文藝春秋)
40年前長野でおこった殺人事件、40年前に自分と仲間たちが負った重荷は何だったのか。解明すべく元刑事が再び長野へ。

△:澤田瞳子『星落ちて、なお』(文藝春秋)
明治大正期を生きた女流画家、河鍋暁翠の生涯を描いた作品。

僕の予想は、今回は『テスカトリポカ』の一点買いです。
メキシコのアステカの血を引く麻薬密売人が、メキシコでの抗争に敗れ家族を殲滅され命からがら外国に逃げ出して、復讐のチャンスを狙う。インドネシアで出会った日本人医師と臓器売買ビジネスを企図し、日本の川崎で仲間を集めて闇のビジネスを展開していく。出てくる奴らはだいたい悪者だし、殺戮シーンは凄惨だし、読んでいて気分の悪くなる部分が多く小休止をはさみながらじゃないと読み進められなかったけど、何しろ迫力がすごかったです。登場人物たちは悪者だけどキャラが立っていたし、途中挟まれるアステカのエピソードが原始世界とのリンクを感じさせ物語の奥行きと壮大さを与えていたし、とても面白かったです。今回の直木賞についてはこの作品しかないと個人的には思っています。

『スモールワールズ』はどこにでもいそうななんだけど、ちょっとずつ破綻している人たちを扱った作品です。人生のペーソスを感じさせる「愛を適量」「式日」、猟奇さを感じる「ネオンテトラ」「ピクニック」など6つの短編から構成されています。僕が一番好きなのは、明るい作品だった「魔王の帰還」かな。この作品は直木賞というよりは本屋大賞のほうがあっている気がします。
『高瀬庄左衛門御留書(たかせしょうざえもんおとどめがき) 』は、江戸時代版の中年サラリーマンの悲哀を感じさせる作品です。下卑ず奢らず人生を歩んでいるがあまり報われず、それでもそこかしこに小さな幸せを見出し生きていく男が描かれています。うまくまとまった良作です。
『おれたちの歌をうたえ』は、僕自身があまりミステリー好きではないので、あまりはまれなかったです。暗号の謎にはあまり惹かれなかったので、殺人事件の謎と40年前に殺人事件に遭遇した少年たちのその後40年の歩みだけを追う形でも十分読みごたえのある作品になったのではないかなと思っています。
『星落ちて、なお』は、女の一代記としていい作品だと思います。ただ、澤田瞳子の作品として、僕が思う彼女の最高傑作「火定」は超えていないので、この作品では直木賞をとってほしくないという思いから、辛めの評価にしています。

以上が僕の予想です。
さてどうなるのでしょう?

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