第167回直木賞予想

明日発表される第167回直木賞。
今回も予想してみました。

◎:深緑野分『スタッフロール』(文藝春秋)
VFXやCGなどを使って自分の中にあるイメージを創出することに見せられた女性たちの話

○:窪美澄『夜に星を放つ』(文藝春秋)
心を通わせる事ができるのかできないのか、人間の機微を描いた短編5篇

○:河﨑秋子『絞め殺しの樹 』(小学館)
北海道の開拓民から連綿と続く絆・縛りの中で希望は見いだせるのか?

▲:永井紗耶子『女人入眼(にょにんじゅげん)』(中央公論新社)
頼朝・政子の娘を天皇に輿入れできるよう奮闘する女官の物語

△:呉勝浩『爆弾』(講談社)
東京都心に仕掛けられた複数の爆弾、連続爆破魔の狙いは何だ?

深緑さんの『スタッフロール』は、映画業界で働く女性を描いた物語で、文句なく良かったです。前後半に分かれている構成ですが、前半はCGが席巻する前夜に奮闘する特殊造形師・マチルダのお話が、後半は現代ロンドンのCGクリエイター・ヴィヴィアンのお話が展開されます。映画業界で活躍した時代が違う二人の思いが交錯する壮大な物語です。仕事に対する矜持とか自分の創作意欲に忠実であることとかスタッフロールという歴史に残るものに名前を残すこととか、色々考えさせられました。
窪さんの『夜に星を放つ』は、これまでの作品同様、人間の繊細な心の襞を描きつつも、単なる繊細さ・儚さにとどまらず、人間の体温や脈動がしっかりと感じられる作品です。窪さんの文章はなんかフィジカルに訴えてくる感じがして僕は好きなのです。
河﨑さんの『絞め殺しの樹 』北海道・根室を舞台にこれも前後半に分かれている構成ですが、前半はおしんのように耐え忍びながら生涯を送った女性の物語が、後半はその女性の実子の物語が展開していきます。人間関係という軛の中で、翻弄されながらもたくましく人たちが描かれています。
永井さんの『女人入眼』は、鎌倉時代の権力の裏側の女たちの戦いが描かれていて面白かったです。北条政子の豪傑な感じとそれに翻弄される主人公の周子や政子の娘・大姫が描かれています。鎌倉幕府最大の失策と言われる大姫入内がなぜ実現できなかったか、その謎に迫ります。
呉さんの『爆弾』も面白い作品でした。阿佐ヶ谷や代々木公園などで連続爆破が行われ、次はどこで爆破が起こるんだと、スリリングな展開でした。ですが、個人的にここ最近ミステリー全般が頭の中でこねくり回している感じしていまいちはまらない傾向があるので、それの影響を受けて評価は低めになっちゃいました。

で、予想なのですが、今回は『スタッフロール』の単独受賞か、もしくは『スタッフロール』と『夜に星を放つ』のダブル受賞を予想します。
受賞の可能性としては、『夜に星を放つ』と『絞め殺しの樹 』まではあるかなとは思っていますが、『スタッフロール』が頭一つ抜けているような気がしています。個人的に窪美澄さんの作品が好きなので、窪さんが取るとしたら、『スタッフロール』とのダブル受賞かなと思っています。

以上が僕の予想です。
さてどうなるのでしょう?

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