第168回直木賞予想

明日19日(木)に発表される第168回直木賞。
今回も性懲りなく予想してみました。

◎:凪良ゆう「汝、星のごとく」(講談社)
瀬戸内海の島で暮らす高校生の男女が、家族や仕事に翻弄される物語。

○:小川哲「地図と拳」(集英社)
日露戦争から第二次世界大戦にかけての満州で日本人・中国人・ロシア人、様々な登場人物が織りなす壮大な物語。

▲:千早茜「しろがねの葉」(新潮社)
戦国の世、石見銀山で働いた女の一代記です。

△:一穂ミチ「光のとこにいてね」(文藝春秋)
運命が交差する二人の女性の物語。

✕:雫井脩介「クロコダイル・ティアーズ」(文藝春秋)
鎌倉の老舗陶器店が、若旦那の殺人事件を契機に揺れ動く様を描いた心理ミステリー。

今回の候補作の中で、僕の一番の推しは、凪良さんの「汝、星のごとく」です。毒親とかヤングケアラーとか最近のトレンド要素は入っていますが、本筋の男女の恋愛だけで十二分に読ませる内容でした。地元にいた頃は本当に純粋に相手を求めていましたが、10年以上も立ち家族のことや仕事のことに翻弄されすれ違っていくようになり、単純に自分の感情を相手に伝えることもままならなくなった2人。複雑な人間の感情を複雑なまま伝えようとするとやっぱり350ページを超えるようになるよなと思いますが、けれども一ミリも飽きさせず一気に読ませる筆力は、納得できる内容でした。
僅差の二番手は、小川さんの「地図と拳」だと思っています。満州を舞台にした壮大な物語です。登場人物も多いので、関係を把握するのに多少難儀しましたが、大河のような壮大なうねりが読んでいて感じられ、読後になんかずしりと重いものを受け取ったなと思わせてくれる作品です。歴史好きとか建築好きとか地図好きとかの人達にぜひとも読んでもらいたいです。
三番手は千早さんの「しろがねの葉」です。幼き頃親と生き別れ銀山で働く山師に拾われた主人公ウメ。ウメは山の男たちと同じように働きたいと願いますが、山は欲望が渦巻き危険と隣り合わせなので、次第に山の男たちを支える側に回ります。戦国から江戸の世をたくましく生きたウメの生涯が描かれた作品です。直木賞の受賞があるとすればこの作品までかなと思っています。
一穂さんの「光のとこにいてね」は、小学生時代、女子高生時代、そしておとなになってからと、運命が交差する二人の女声を描いた作品ですが、僕にとっては綺麗すぎて、もっと訴えかけてくるものがあっても良かったんじゃないかなと思っちゃいました。
雫井さんの「クロコダイル・ティアーズ」は、一つの殺人事件を契機に揺れ動く様を描いた心理ミステリーですが、登場人物の世界に没入するというよりは、登場人物を使って作者はどっちの方向に導きたいのかその意図ばかり気になったので評価は低めです。

以上が僕の予想です。
さてどうなるのでしょう?

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