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米国と寛容
分断と不寛容が代名詞のトランプ政権が終わった。私は米国に三度、住んだが、初渡米は十四歳の時だった。二年間の予定で、家族でボストン郊外に移住し、私は地元の公立高校に入学した。
日本の私立女子校から転校した私にとっては、もう毎日が衝撃の連続だった。
廊下ですれ違う上級生はクルクルパーマにヘッドホン、口には棒付きキャンディー。授業は選択制で、ホームルームは週一回。教室の机の裏に、びっしりついているガムには閉口した。
私のような英語ができない生徒向けの英語クラスがあった。そこで「いつまで米国に」との問いに、ロシア人の子が「for good (永遠に)」と答えた時は驚きだった。仲よくなったアメリカ人に見えた子たちは、実はルーマニア、トルコからの移民だった。
そして、初めて「日本人であること」を自覚したのもこの時だった。真珠湾攻撃の日の全校での黙とうに戸惑いを覚えた。韓国人の友だちが出来た時、母に「よかったね、日本は昔、ひどいことをしたのに」と言われ、戦争の加害を知った。
社会の多様性を体感し、日本を違う角度で見られたことは、いまの自分に大きく影響している。違いを受け入れ、共に生きる。バイデン大統領の率いる米国がそんな価値を国内外で発信してくれることを望む。
NPO「ACE」代表 岩附由香
(2021年1月26日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)
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