数々の大手証券会社で働き続けた私が伝えたい #10 「お客さまのニーズ」

お客さまのニーズ

今一度、「証券営業員」の原点に立ち返り、真の顧客重視を実践することが期待されている最後の機会ではないかと思います。

私の経験では、これまでお客さまのニーズは全員違いました。年齢がご高齢だから資産保全をするとか、お若いから資産形成が必要とは限りません。
米国証券会社勤務の経験では、お客さまのニーズや運用に対する考え方をヒアリングして、10種類以上のパターン化した投資家像を当てはめて、ファイナンシャルアドバイザーがそれに適した提案を行う方法をとってきました。国内においても、ロボアドバイザーの簡単な質問に答えることでお客さまのリスク許容度を判断して投資スタイルを決めたり、SMA口座やラップ口座においても、さらに細分化された投資スタイルを提供されているようですが、やはり一定のパターン化がされていると感じます。
このパターン化はたとえ100種類、さらにそれ以上あったとしてもお客さまのニーズにフィットするとは限らないと思います。
なぜなら、お客さまそれぞれの、資産・収入・経験・知識等が同じではないからです。そして最も大切なお客さまニーズとは潜在的な人生観とそれに対する金銭感覚ではないかと思います。
1億円の資産がおありでも10万円の損失は大きいと思うお客さまがいれば、1000万円の損失でも小さいと思うお客さまもいます。
(余談ですが、行動ファイナンス的な面では、人から勧められた損失は自己判断によるものより損失の感覚は大きいようです(;^ω^))

では、どのようにしてお客さまのニーズを把握するのでしょうか?
一般的な証券口座開設時の適合性を確認する内容は、生年月日・住所・職業・資産・収入・投資経験等を確認すると思います。これに加えて、投資目的・投資予定金額・投資期間を確認していると思います。この部分がお客さまの潜在的な人生観と金銭感覚をプロファイリングさせていただく最も重要な項目ですが、証券営業員もお客さまも十分な金銭教育を受けていない、もしくは金銭教育の専門知識を持っていないとすれば、この時点で投資を開始するのは疑問が生じてくると思います。その結果、運用目的「老後資産を効率的に運用する。」「余裕資金を銀行預金より少しよいリターンを得たい。」「日本の年金が不安だから今の内から運用したい。」等になり、投資予定金額・投資期間「とりあえず500万円を10年で倍にしたい。」「退職金2000万円を優雅な老後を送り20年間配当で生活したい。」証券営業員は、「では、実績のある投資信託を複数銘柄組み合わせて運用を開始しましょう!」「高配当の株式のポートフォリオを組んで配当生活をしまししょう!」と運用が開始されます。この内容は何も間違ったことではありませんが、運用には損失が付き物です。この損失がでた際にいかに冷静な判断をするためには、もう少し最初の時間が必要だと感じます。

例えば、家を建てる時には設計図とにらめっこして、色々な楽しいことを想像しながら、こと細かい点までお考えになると思います。人によっては1年以上を費やす方もいるとお聞きします。投資について、ここまで時間を費やす必要はないかもしれませんが、自分の目的をじっくりと時間をかけて見つけたいと思います。そして、資産運用で最も重要なポイントの一つである、自分に合った「資産配分」を見つけることだと思います。これがしっかり決まれば、途中の損失や利益に右往左往することが少なくなることが、私が長期間にわたりお客さまとお付き合い頂いている経験です。
お取引を開始するまで、お客さまのお話をお聞きする時間が多ければ多いほど良いと思います。これができれば、お客さまも長期投資ができてきます。

しかし、人生観や金銭感覚を今さら見つけることは難しいことです。私も子供もか聞かれたことがあります。
   「若いからなんでも好きなことをしたらいいね。」
   「オヤジはなにをしたいの?」
   「、、、わ か ら な い」(;^ω^)

http://www.accordandgo.com


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