研究を一般向けに語る際に気をつけていること #ポスドク総研
研究について話すということ
研究者と言えども、常々同じ分野の研究者と一緒に暮らしているわけではありません。社会で生きる一人の人間として、家族や親戚、古い友人、あるいは初対面の研究者ではない方々に対して説明する場面があるかと思います。あるいは、就職面接での担当者に対して、自分が今まで行ってきた研究についてわかりやすく説明しなければならない場面もあるかもしれません。今回はそのような「研究者ではない方々」に対して、自分の研究を紹介する際に気をつけていることについて、まとめます。
なお、私の専門分野は認知心理学・言語心理学で、テーマは「オノマトペ・音象徴」です。個人的にこれらの分野や研究テーマは、基礎科学などと比較すると格段に説明しやすい分野であると思っています。そのため、私自身が気をつけていることが、他分野のテーマには適用できない可能性があることは予めおことわりしておきます。今回説明時に想定しているのは、私の以下の論文となります。
1. 分野のコンセンサスを意識する
それぞれの研究分野には、その分野の人であれば必ず知っていなければならない基礎的な教養・知識があるかと思います。いくつかの重要な専門用語などは、初学者の段階で叩き込んでおかないとその先に進むことができません。そのため、研究者たちはこれらの分野特有のことばを使うことが当たり前となっており、逆に言うと、これらの用語に頼らずに説明するとなると、途端に難易度が上がってしまうのです。
例えば、私の論文で使っている実験手法は、「ストループ効果」と呼ばれる、心理学分野において非常に知名度の高い効果を扱うときに使用する手法に似ています(学部生の実験実習で最初に取り扱うくらい、有名なものです)。そのため、同じ分野の研究者相手であれば「ストループに似てる手法を使ったんだよ」で説明が済んでしまいます。しかしながら、一般向けに話すとなると、まずこの「ストループ効果とは何か」から始めなくてはならないわけで、どうしても長くなってしまいます。
自分で気づける場合はよいのですが、あまりに分野内で「当たり前」とされすぎており、一般的な常識と区別がつかなくなってしまっていることもあり得ます。ストループ効果にまつわる実験の大前提として、「ヒトは同じ/似ている要素を一緒に見せても混乱しませんが、『赤』という文字を青色で印刷して見せる、というような、異なる要素を一緒に見せてしまうと混乱してしまい、うまく判断ができなくなってしまう」というものがあります。これは、分野内では説明する必要がない前提なのですが、一般的には当然とは言いづらいと思います。このような「分野内で当然とされているコンセンサス(共通認識)を一旦外側から見てみる」ことが、まずは大切になります。
記事の続きを読む
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?