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博士の日常

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海外でポスドクをしよう—滞在編(10) 海外ポスドクの後の道

明けましておめでとうございます。今年がみなさまにとって素晴らしい一年になりますようにお祈り申し上げます。 新年は新たなスタートを切るタイミングですが、何かを始めることは何かが締めくくられることも意味しています。海外ポスドクシリーズも今回を持ってひと段落となります。長いようで短い間、大変お世話になりました。心より御礼を申し上げます。 さて最終回では、海外ポスドク期間が終わりを迎える時、次に歩む道について話します。 ポスドク期間は平均して3年くらい。始める時には果てしなく長

研究者の体のメンテナンス

2023年になりました。皆様は楽しい年末休暇をお過ごしになりましたでしょうか?  筆者に関しては、大晦日でも共同研究者からのメールが飛んできたりして、自分の気持ちがなかなか休まらないと同時に、日本の(そして世界の)研究者のみなさんは十分にリラックスできたのか、という疑問を持ちました。 過去のイメージでは、大学教員は週の数回だけふらっと教室に現れて授業をして、その後は優雅に本を読んだり研究を行ったりする、時間的にのんびりとした生活スタイルを送っているように思われていました。しか

非常勤講師の試行錯誤 :一コマの授業をどう構成するか(オンライン編)

 長時間化している大学の一コマの授業をどのように構成するか。対面授業について、休憩時間を挟んだり、メリハリをつけることで集中力の維持をはかる工夫をしているというお話をご紹介しました<https://acaric.jp/articles/phdaily/6445>。最後に新型コロナウイルス感染症対策として普及した、オンライン授業にまつわる試行錯誤をご紹介します。  やはり、対面の授業とオンラインの授業とでは、アプローチが違ってきます。 講義の場合、どうしてもオンライン授業は、

研究者の年末年始

時が過ぎるのは速いものです。あっという間に師走に入りました。年末年始のシーズンは、みな忙しく過ごしていますが、研究者、特に大学教員にとっては、公私ともにイベントが盛りだくさんです。たとえば卒業論文や修士論文の指導、クリスマス、冬休み、小規模の学会やシンポジウムなど、いろいろなイベントがあります。 卒論・修論の指導:走れ、大学教「師」ほとんどの大学では卒業論文の提出期限が12月半ばから1月末の間に設定されています。そして修士論文は卒業論文の提出の少しあとに期限を迎えることが多

海外でポスドクをしよう—滞在編(10)お金についての話 (2)

前回に続いて、海外で生きる上で避けて通れないお金の話について紹介します。前回では海外で生活することによってどのような経済的リスクに直面するかについて話しましたが、今回はそれらのリスクにどのように対応するかについての話をします。 簡単にまとめると、以下のとおりです。 経済的リスクを意識したうえで長期戦略を考えること 収入源を複数持つこと 経済的バッファを増やすこと 年金や社会保障のプランを立てること これらの対策を通して、海外暮らしにおける経済面の基盤を整えることが

非常勤講師の試行錯誤  一コマの授業をどう構成するか(対面編)

 大学の授業は、以前は一コマ(1時限)90分が一般的でしたが、クオーター制の導入や学事暦に合わせ、100分や105分の授業を行う大学も増えている印象があります。  小学校から高校までは、授業時間は45分~50分であるのに対し、大学では約2倍に伸びることになります。大学の制度やしくみには、それ以前の学校のものと大きく異なる部分は他にもたくさんありますが、授業時間の増加は、改めて考えてみるとかなり大きな変化です。  以前の記事では、大学の授業時間にまつわる前提についてまとめまし

研究者のショッピングカートには何が入っている?

あっというまに11月になり、街中でもインターネット上でもクリスマスとお正月に向けた年末商戦が動き出します。研究者にとっても、これは買い物リストを消化するチャンスになります。今回はブラック・フライデー・セールを例に、研究者が年末商戦でどんな買い物をするかについて、ご紹介します。 ブラック・フライデーとはブラック・フライデーはアメリカから舶来したセール日ですが、アメリカ内でも実はまだ歴史が長くなく、2005年頃にフィラデルフィアから流行し始めた概念です。現地では感謝祭(Than

海外でポスドクをしよう—滞在編(9) お金についての話 (1)

今回からは海外で生きる上で避けて通れないお金の話について、紹介していきたいと思います。今回は、海外で生活することによって直面する経済的リスクの話をします。 まず一つ明確に述べたいのは、筆者は「リスクがあるから海外に行くのはやめよう」を主張したいのではありません。どこでどのような生活を送っても、それなりのリスクを負わないといけません。海外で生活する上でどのようなリスクがあるかを正しく認識した上で、正しく対策や計画を立てた上で海外生活を送った方が、結果的に海外ポスドク生活を楽し

非常勤講師の試行錯誤  一コマの授業時間の多様化をめぐって

 大学の授業は、以前は一コマ(1時限)90分が一般的でしたが、クオーター制の導入や学事暦に合わせ、100分や105分の授業を行う大学も増えている印象があります。  小学校から高校までは、授業時間は45分~50分であるのに対し、大学では約2倍に伸びることになります。大学の制度やしくみには、それ以前の学校のものと大きく異なる部分は他にもたくさんありますが、授業時間の増加は、改めて考えてみるとかなり大きな変化です。  こうした長時間の授業をどのように構成していくかというのは、大学

海外でポスドクをしよう—滞在編(8)

今日は、海外で生活・仕事をする上で避けては通れない「政治的な話題」に関連したことに少し触れます。 「政治的ななにか」に向き合う準備こちらのシリーズ第2編では、海外ポスドクとして着任した直後に、いかに周囲と打ち解けるかについてご紹介しました。その際には「欧米の人々、とくに知識層の中には政治的トピックや社会問題に関心を持っている人が多いです。…欧米では逆に政治について何も知らない・考えたことがないと知られると驚かれます。」と書きましたが、その象徴となる最近のアカデミア界のニュー

研究者にも衣裳? 研究者の服事情

10月が近づいてくると、街中はハロウィン一色になり、さまざまな仮装コスチューム・道具が店頭を賑わせます。アニメや映画の〇〇博士の役など、研究者も時には仮装の対象になりますが、そのコスチュームは決まって長めの白衣、それも前のボタンが開いているものですよね。 実際のところ、研究者は日常や学会などのシーンで、どんな装いをするのでしょうか?今日は研究者の日常を少し覗いてみましょう。 白衣は特定の場面にしか出番がない研究者のイメージと深く結び付けられている白衣ですが、実際のところでは

あのときの一言(12)「つまらんかったらまずは自分で変える。それでもつまらんかったら戻っておいで」

挨拶こんにちは、みっつです。工学部、化学系の研究室にて博士号を取得したのちに、現在は国内の消費財メーカーで働いています。 この連載では、これまで大学院生活や社会人として過ごす中で出会った方からかけてもらった印象的な言葉について振り返っています。言葉をかけてくださった方や自分の当時の状況、その時の気持ち等を振り返りながら、その言葉が自分にとって重要だった理由や、今の自分にどう影響しているのかについて改めて考えてみています。 どのエピソードも些細な一人の体験ですが、自分にとっ

あのときの一言(11)「この一報なんかよりも価値があること」

挨拶こんにちは、みっつです。工学部、化学系の研究室にて博士号を取得したのちに、現在は国内の消費財メーカーで働いています。 この連載では、これまで大学院生活や社会人として過ごす中で出会った方からかけてもらった印象的な言葉について振り返っています。言葉をかけてくださった方や自分の当時の状況、その時の気持ち等を振り返りながら、その言葉が自分にとって重要だった理由や、今の自分にどう影響しているのかについて改めて考えてみています。 どのエピソードも些細な一人の体験ですが、自分にとっ

非常勤講師の試行錯誤 その5  大学の授業とマスク着用

 新型コロナウイルス感染症の流行と収束の間で、大学の授業は対面式とオンライン式との併用が定着しつつあります。オンラインによる授業は、対面の授業を行えない状況下における一時しのぎのものではなくなり、対面の授業とは別の利点もある方法とみなされるようになってきました。対面式との使い分けをしながら、オンライン式を今後も積極的に活用していこうという大学もでてきているようです。  対面による授業と、オンラインによる授業の違いは様々ですが、感染症対策の観点では、接触の有無のほかに、マスク