好き がわからない。

言葉選びとか間とか空気感とかモノの捉え方とか、いわゆる馬が合う、話していて楽しかったからよく話していたKくん。その様子を見ていた同級生から「彼のこと好きなんでしょ」と言われた。(そう言われるってことは周りから見たら好き同士のやり取りなのか、これ。あぁなるほど、彼に対するこの気持ちが"好き"ということか)と自分の中で思い込み、好きな人を聞かれたらKくんと答えていた。
Kくんの方でも同じことが起きていたらしく、私たちは当人同士がよくわからないまま両思いとして認定されていた。まあまあよくある小学生の頃の話。

人を好きな気持ちって、そういうもんだと思っていた。
中学のときも高校のときも好きだと思ったのはKくんのときと同じ気持ちになる人だった。
以前書いた彼に対してもそういう気持ちだった。同性異性関係なくそういう感情を抱いた。みんなそうだと思っていた。

大学生になったら、違った。
私がそれまで好きだと思った人たちに対してはもちろん他の人には抱かない特別な感情があって、私にとって大切な人であることは違いない。が、どうも友人と話していると噛み合わない。"恋愛の好き"というのは違うらしい。高校生の頃まではあまり深い話をしなかったけど、大学生になると友人がまあ赤裸々に話すわ根掘り葉掘り聞いてくるわで、やっとズレに気づいた。
気づいたけど、うまく言語化できないし、そんな状態で説明しても理解されなそうなので話を合わせていた。
好きがわからなくなった。

夫と付き合ってしばらくしてから打ち明けた。「100%ではないけどわかる気がする」と言ってくれた。彼が同性だったとしても単純に一緒に生活したいなあと思って、異性で結婚できたから結婚した。
好きがわからない、と悩む必要がなくなった。

好きがわからない。
でも既婚者が何言ってんのと笑われるから誰にも言っていない。
好きがわからないというもやもやだけが残った。

好きっていろいろあるよねって答えに辿り着いたので、今は悩んではいない。
ただ、友人の言っていた"恋愛感情"というものについて知りたい。
わからないから興味がある。いつかわかるかなあ。

ちなみにKくんとは、両思いだからどうということもなかった当人同士を差し置いて盛り上がるマセガキ同級生に振り回され、うんざりして険悪になった。せっかく良い友達だったのに。別の中学に進学したこともあってそれ以降疎遠になってしまったけれど、大人になってから和解(?)して当時のことを話していたら、そこまで気が合うのかと笑うってしまうぐらい同じこと考えていた。
それまで誰にも共感されなかったあれこれをさも当たり前かのように話す彼と、もっと話したかった青春だった。