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「トイレでびっくりした話」〜大人の思い出〜

私はコンビニのトイレを借りることが多い。コンビニを見つけると「念のために行っておくかい?」と心で下半身に問いかけるだけで、その瞬間に本当にしたくなってくるのだ。IoTさながらである。

昔、心理学の本で呼んだことを思いだす。特定の感覚と行動が何度も結びつくと、しだいにその匂いを感じたり、見ただけなのに特定の行動が止められなくなるという内容であった。深く共感した覚えがある。

実は私はクツ屋に入ってもあの皮の匂いでトイレに行きたくなる。また、本屋に入って紙の匂いを嗅いでもトイレに行きたくなる。そしてコンビニを見つけてはトイレに駆けこむ。こう考えると一日中トイレに行っている感じすらしてくる。

そんなトイレのヘビーユーザーである私は、先日もコンビニのトイレに立ち寄った。そこのトイレは充実しており2カ所の大きな個室がある。

お、今日はラッキー!両方とも空いてる。

とりあえず手前の個室にしようと扉を開けると

ほげぇーっっ!!

おばちゃんがいたっ!!洋式トイレで用を足してる。そしてしっかり目を合わせてきて

「あらっ、ごめんねー」

そんなのんきな口調でニヤけて言った。私はけっこうビックリして慌ててドアを閉めた。

もう!なんでカギ閉めないんだよー!見られたおばちゃんも嫌だったろうけど、こっちもガビーンだ!!便座にちょこんと座ってさーっ!

私は心臓のバクバクを抑えながら隣の個室トイレに入った。しばらくするとさっきのおばちゃんがトイレから出る気配がした。そして

「あのー!さっきはごめんなさいねーっ!」

大きな声でドア越しの私に言った。おそらくコンビニ中に響いたであろう、抜群に元気な声だった。私は萎縮ぎみで

「う、うぉーう」

というよく分からない返事をしてしまった。

でもなんかこれって下町の銭湯でありそうな名場面ではないか。女湯側の奥さんが壁越しのご主人に向かって

「あなたぁ、先に上がってますよー」

そしてご主人

「おーう」

みたいな古き良き時代の日本文化に通じる。そのためか不思議と暖かい気持ちになってきた。事故とはいえトイレ中の露わな姿を見られた知らない男に、お詫びのひとことが伝えられるおばちゃんは「粋」である。忘れかけていた日本の心がそこにあった。

それにしてもトイレを開けて見てしまった人がおばちゃんではなく、気の強い女性だったらと考えると「ぞっと」する。

ふぅーっ、トイレに入る時は用心用心御用心である。

ではまた。


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