見出し画像

【高校英語】文法空所補充問題をどう指導するか

「これは何の問題だっけ?」

最近社会人の指導をしていてものすごい示唆をもらった。

「ある問題を見た時に、これはどの単元のどの知識を問う問題かを判別できているのか?」

という視点だ。

書いてみると当たり前なんだが、実はこれはめちゃくちゃ重要で、ものすごく深い。

どんな科目であれ、勉強する(つまりインプットする)時は一つずつしかできない。
その「一つずつ」が集積して、大きな知識のカタマリをつくる。

試験問題というのは基本的にその知識の一つを問うものなので、問題を解く時には自分の中の大きな知識の中で、ターゲットになる一つにアクセスすることになる。

ここで大事なのは
「どういう経路を辿って目的の知識にアクセスしているか」
ということだ。

サムネイルにした問題を例にみてみる。


これは高校英語、受動態の典型問題
(と、みなされることが多いと思う)

つくりもシンプルなので解くのも、解説するのも難易度は高くない。

問題なのは
「そもそもこれが、受動態の問題であると認識してましたか?」
ということだ。

もっと言えば
「受動態の中の、群動詞の受動態という項目のひとつだという認識をしていたか?」
ということ。

勉強がうまくいっている人はこの認識がある。
ちゃんと知識に階層をつくって、大きい階層から順を追って知識にアクセスする。

その社会人の方の表現では
マップをズームしていく感覚
だそうだ。

それもGoogleマップのような連続した感じではなく、
地図帳のような感覚。

地図帳で、たとえば「神戸市」に行き着きたい時に
日本全体の地図のページ

近畿地方のページ

兵庫県のページ

神戸市

と順を追ってアクセスするように、
受動態

群動詞の受動態

Laugh atの受動態

という順番でアクセスする。
これが理想。

Scrambleみたいな文法問題集で
「いくらやっても成果が出ない」
と言っている生徒の大半はこれができない。

この問題自体を記憶しようとして
He was laughed ( ) everyone in his class.
「お、これは覚えてるぞ。laugh atを受動態にするとこうなるんだったな。よし③だ」

みたいな答え方になる。
つまり、一番下の階層にある知識に直接アクセスしてしまっている。

で、今回問題にしたいのは
知識を階層化することと、階層順にアクセスすることは別物ではないか?
ということだ。

知識を階層化すること自体はわりとポピュラーで、心理学の本なんかにもよく出てくる。
「知識の体制化」
という言葉で表現されることが多い。

件の社会人の方にもわりと初期段階で伝えていた学習法で、ちゃんと取り入れてくれていた。

僕がしていた勘違いは
「知識を体制化していれば、アクセスする時も当然階層順にアクセスするだろう」
ということだ。

これが勘違いだった。
いや、正確に言えば体制化していれば正しいアクセスをする確率は高まる。
でも、絶対じゃない。

体制化というインプットフェーズだけでなく
階層順にアクセスするというアウトプットの練習もしておくべきだったのだ。

これはちょっと感動レベルの気づきで、早速高校生たちの指導に取り入れてみた。

やってることはシンプルで

こんな感じで色んな単元からランダムに出題される本を使って

「答えなくていい。どの単元か、できればどの単元のどの項目かを考えていってほしい」

と伝えるだけ。

つまり

ここまでのアクセスを指定する。

やってみると、意外とその視点がなかったという生徒が多いことに驚く。

それも、マインドマップなど、知識の体制化を学習として取り入れている生徒であってもだ。

そしてウケがいい。
このトレーニングは何か楽しいらしい。

インプットとアウトプットは相互作用があって

インプットの仕方が良いとアウトプットの質も良くなる。
アウトプットの仕方が良いと次のインプットが向上する。

今回はアウトプットのトレーニングだけど、これをやることで次の単元をインプットするときに

「ちゃんと上の階層から順番にアクセスできるようにインプットしよう」
という意識が働く。

めちゃくちゃ良い。

ただこのトレーニングをする時には
・問題がランダム出題であること
に加えて
・学習した文法単元内での出題であること
が条件になってしまう。

実はこの条件を整えるのがすごく難しいので、今はChatGPTにこれらをリクエストして問題を作成してもらう方法を模索中。

さらに発展(高校数学)

もう少しだけ深掘ってみる。

「この問題は何を問う問題か?」

という視点が今回のポイントだが、ちょっとハイレベルな数学の問題になると

「この認識を意図的にズラす」
という技術が必要になったりする。

例えば、見た目は関数の問題だけど、あえて図形の問題だとみなしてみる。
図形の問題だけど、ベクトルの問題だとみなしてみる。

そうすることで問題を解く糸口が見つかったり、計算処理がすごく楽になったりする。

これも結局、問題を見たときにイキナリ「解く」というフェーズに飛ばないことが重要になる。

「これは何の問題か認識する」

「解く」

とちゃんとステップを踏まなきゃいけない。

こういう視点の切り替えがすごく苦手な生徒がいるけども、そういう生徒にも

・解かずに、問題の分類だけを行う

というトレーニングは有効なのかもしれない。
また機会があったら試してみたい。


※問題文は複数形のsが抜けていて classmates が正しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?