Singularityとナルキッソス。真の愛とは何ぞや？

元々noteはBTSのことに限定して書き始めたわけではないのですが、とてもありがたいことに関連の記事はアクセスがぐっと増えて、多くの人に読んでいただける機会がありそうなのでまたBTSで書いてみようと思います。

記事のネタはあくまで手段であり、私が伝えたい想いや気づき、noteを書く目的は変わっていません。ただ彼らはいつも大切なメッセージを伝えてくれるから多くの人の目に触れて、何かを考えたり気づくきっかけになったら嬉しいです。

今日はちょっと真面目に語ってみます。
いろんな曲を聴く中で、こんな曲もあるんだ！と思わされたうちの1つ。

フルアルバム LOVE YOURSELF 轉 'Tear' に収録されている、Intro: Singularity。R&Bと全体的にスローテンポでジャジーなサウンド(語彙力...汗)とテテのボーカルがとても印象的で好きな曲です。

ナルキッソスと自己愛

ギリシャ神話の中に出てくる美少年ナルキッソス。このSingularityはナルキッソスからインスパイアされたと思われます。ナルシストとかナルシシズムの言葉なら誰でも聞いたことがあると思いますが、その由来になった架空の人物です。

若さと美しさを兼ね備えたナルキッソス。森の妖精エコーはナルキッソスに恋をするが、エコーは口が災いして自分では口をきけず他人の言葉を繰り返すことしかできない。エコーは彼の言葉をただ繰り返すだけだったのでナルキッソスは退屈という理由でエコーを見捨ててしまう。エコーは悲しみのあまり姿を失い、ただ声だけが残って木霊になった。

나에겐 목소리가 없어
僕には声が無いから

오늘도 그 소릴 들어
今日もその音を聞いている

これを見た神、ネメシスは他人を愛せないナルキッソスがただ自分だけを愛するように呪いをかける。ネメシスは無情なナルキッソスをムーサの山にある泉に呼び寄せる。ナルキッソスが泉で水を飲もうと水面を見ると美しい少年がいた。もちろん彼自身である。ナルキッソスは水面に写る自分に恋をしてしまうが想いを遂げることができず、痩せ細っていく。水面に写った自分に接吻しようとして泉に落ち溺死する。

난 문득 호수로 달려가
僕はふと湖に駆け寄る

그 속엔 내 얼굴이 있어
その中には自分の顔が浮かんでいる

ナルキッソスの神話は単に自らの容姿を誇る傲慢さや自己愛への教訓ではなく、自分を愛し他者を愛することとは何か？という真の愛について説いています。一途に想いをかけてくれたエコーという美少女がいたのに彼女の一途な愛を無下にしてしまうナルキッソス。その罰で彼は真の愛を知ることなく溺死し、エコーも姿を失って木霊になるという悲しい愛のすれ違いの物語です。

singularityとは？

singularityとは特異性、特異点の意味です。例えば、AI(人工知能)が人間を超える転換点のことだったり、偶発的な出来事やこれまでいなかったような人の革新的な行動や思想の表明により、その後の文化を一変させた事象のことを指したり。さまざまな分野で使われるようです。

この曲におけるsingularityとは何なのか。自分を愛することと自己愛(ナルシシズム)の違いを知る転換点、自分を愛することから始めて他人を愛するというステージへ移行する転換点。そういった意味合いではないかと思う。

그 호수에 내가 날 버렸잖아
その湖に僕は自分を捨てたんだ

내 목소릴 널 위해 묻었잖아
この声を君のために埋めたんだ

Tell me
教えてくれ

이 고통조차 가짜라면
この苦しみでさえ偽物なら

그때 내가 무얼 해야 했는지
あの時 僕は何をすべきだったのか

自己愛に陶酔した自分を捨て去る。ただ相手の言葉を繰り返すことしかできなかった君と同じようにこの声を失くしてしまう。

それでも失ったものは返ってこない。今でも幻想や痛みに苛まれながら、大切にできなかった君や失った愛への後悔と懺悔。自分自身とナルキッソスを重ね合わせているように感じます。

この歌詞、テテが書いたのだと思いこんでいたのですがクレジットを見てみるとナムさんでした。ギリシャ神話を引用する点や、この曲のタイトルをsingularityとつける妙はさすがとしか言いようがありません。。

彼らはこのLOVE YOURSELFシリーズより、自分を愛するというメッセージを発信し続けてきました。でも決して自分自身への独りよがりな陶酔とは違うということ。最終的には真の愛を知り、自分以外の大切な人のために生きる喜びに目覚めることがゴールなのではないかと思っています。

今この曲が心の中に引っかかったということは、私自身がナルキッソスと同じようにどこか自己愛に浸っていたのかなぁ、何か意味があるんだろうと思う。

Love Yourself 〜国連本部でのスピーチより〜

2019年9月24日、彼らはUnicefのグローバル・サポーターとして国連本部で"Love yourself"をテーマにスピーチを行いました。メンバーを代表してリーダーのRMことナムさんが一つひとつの言葉に想いを込め、丁寧に伝えてくれました。最後に紹介させてください。

「僕は今でも平凡な24歳の青年です。僕が何かを成し遂げたのだとしたらそれはBTSのメンバーが側にいてくれて、世界中のARMYが愛とサポートで支えてくれたからです。」

彼らは礼儀正しく謙虚です。そしてお互いのことはもちろん、Armyへの感謝の気持ちを忘れず、その感謝をいつも言葉で伝えてくれます。

このスピーチは何度聴いてもいつ聴いても心に響いて、自分を見失いそうになった時に支え、励ましてくれます。とても大切なメッセージです。下記、一部を抜粋しました。

あなたの名前は何ですか？
何にワクワクして、何に心が高鳴るのか。あなたのストーリーを聞かせてください。あなたの声を聞きたい。あなたの信念を聞きたい。

あなたが誰なのか、どこから来たのか、肌の色やジェンダー意識は関係ありません。

ただ、あなたのことを話してください。話すことで自分の名前と声を見つけてください。

僕はキム・ナムジュン。 BTSのRMです。アイドルです。韓国の小さな町で生まれたアーティストです。他の人と同じように人生でたくさんのミスをしてきました。

たくさんの失敗も恐れもあるけれど、自分を力いっぱい抱きしめることで、少しずつ自分自身を愛せるようになりました。

あなたの名前は何ですか？
自分自身のことを話してください。

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2021.3.28
Abyss0241