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真なる花をさがせ!|油山福岡*植物ブログ⑦

みなさん、こんにちは。いかがお過ごしですか。
ようやく梅雨に入り、カラカラだった森がしっとりしてきました。
雨降りの園内はうっそうとしていてちょっと暗め、そんな中彩りを添えてくれるのがアジサイたちです。

アジサイとひとことで言っても園芸種がたくさんあって、いろんな色や形のものが楽しめますね。

こちらはイメージです。園内の写真ではありませんー。

でも、この「綺麗!」って眺めてるお花たち、本当はお花ではないんです。

ただいま園内にはアジサイが数種咲いていますが、まずはこの2つでお話しますね。「ガクアジサイ」と「ヤマアジサイ」です。

【ガクアジサイ】
いまある多種多様なアジサイはこのガクアジサイを品種改良して生まれたそうです。いわゆる「原種」ですね。日本固有種でもともとの分布は本州~四国だったそうです。よく見かける枝ぶりもがっしりとした落葉低木です。
【ヤマアジサイ】
こちらは朝鮮半島南部でも自生しており日本固有種ではありません。写真だと分かりづらいですが、ガクアジサイより全体的に小ぶりで華奢です。園内ではこだまの森を少し入ったところにいます。

これらの「本当のお花」は

真ん中のわさわさしているのが「本当のお花」です。

「本当のお花」はおしべとめしべがあって受粉し、種子をつくることができるお花です。真の花と書いて「真花(しんか)」と言うそうです。
では目立っているお花に見えるものは何かというと「装飾花」と呼ばれるもので、アジサイの場合「ガク片」が花びらのように変化したものなのです。

カメラの明るさを変えてみると一目瞭然。薄暗い森の中でも修飾花は目立つ存在です。

では、この修飾花ばかりのアジサイの「本当のお花」はどこにあるのでしょう?

ん?真なるお花が見当たらない・・・。

眺めているだけでは分からないので、花びらのようなガク片をかき分けてみました。そうすると・・・

観察用に一部を拝借してみました。表からは分かりませんが、修飾花の下に隠れるように真花が咲いています。


このように本当の花ではないけど他の器官を発達させて「花びらのようなもの」にしている植物は数多くあります。

アジサイの場合ガク片でしたが、こちらもおなじみ「ドクダミ」はガク片ではなく、「苞(ほう)※」を発達させて目立たせています。
※「苞」:芽やつぼみをつつんでいる小型の葉

そして真なる花は真ん中の黄色い部分です。

ドクダミの白色も花びらではなかったのであります。

このように、実はお花じゃないお花を持つ植物は他にもあります。
これもすべて昆虫たちを呼び寄せるための戦略!!
今まで眺めていたアジサイを見る目が変わったかも!?と思われた皆さん、ぜひアジサイを見かけたら真なる花をさがしてみてくださいね。


参考・引用:
「樹に咲く花」 山と渓谷社
写真・文 :土屋志乃
(ABURAYAMA FUKUOKA自然観察センター)


ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター

福岡市油山にすむ生きものの標本や季節の展示、最新の自然情報発信を行っています。各専門スタッフが交代で常駐していますので、自然・生きものの困り事はお気軽にご相談ください。

開館時間 9:00~16:30
休館日  毎週水曜日(祝日の場合翌平日)

「自然観察センター」森のひろばから徒歩約3分の場所にひっそりとあります。
昆虫標本や動物の剥製を展示しています。
季節で変わる企画展示も随時行っています。

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