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ミドリコケビョウタケ(緑苔鋲茸)Mniaecia jungermanniae


時期

冬から春にかけて(福岡では1月~3月頃まで観察することができます)

発生環境

遊歩道脇の土手や石のすき間などに生えるタイ類に発生するとっても小さな美しいきのこです。

うっすら苔むしているところは発生している可能性が高いです
上の場所でみつかったミドリコケビョウタケ
発生環境がいい場所では大量に見ることができます

特徴

直径1㎜ほどのクッション状のきのこで、湿気ている時は緑青色で乾燥すると黒っぽく目立たなくなります。本種はとても小さいため見逃されていることが多いかも…。

実際に探している様子を撮影しました。赤矢印の先にミドリコケビョウタケが写っていますが、わかりますか…?
(よく見ると、他にも生えていますが、矢印だらけになりそうなので省略しています。)

ミドリコケビョウタケはとっても小さい

海外では、ツキヌキゴケ属、ヤバネゴケ属、コヤバネゴケ属、シロコオイゴケ属、トサカゴケ属、ツボミゴケ属、スギバゴケ属、タカネイチョウゴケ属が記録されています。
ミドリコケビョウタケが生えている苔類は枯れていることも多いので、種類の判別はなかなか苦労します。

茎に沿って生えていることが多いです
ツボミゴケ属から発生した個体
ヤバネゴケ属オタルヤバネゴケから発生した個体
ツキヌキゴケ属から発生した個体

ちなみに、国内では和名が提唱される2016年以前、2002年に見つかっており、その際は「ルリイロコケチャワンタケ」の名前が提唱されていた経緯があります。

「コケ植物」のちょっとした豆知識

一般に「コケ植物」と言っても、これらは大きく分けて3つのグループに分かれています。

セン門(セン類)
一般的に「コケ」と指す場合、目にする機会が多いと思います。例えば、日本庭園や神社仏閣に生える「スギゴケ類」、コケ玉に使用される「ハイゴケ類」、路肩でよく見る「ギンゴケ類」などはこのグループに入ります。見た目の特徴は植物体が葉と茎に分かれているもので、多くの種類は葉に中肋(ちゅうろく)と呼ばれる脈が通っています。ただし「アブラゴケ」のように中肋が無い種類もいます。
茎は直立して上に伸びるもの(直立性)や、匍匐しながら横に広がるもの(匍匐性)があります。胞子は蒴(さく)の中で熟成し、蓋が外れて蒴歯が開くと中の胞子が放出されます。

ナミガタタチゴケの葉を拡大。葉の中心に中肋が確認できます
アブラゴケの葉には中肋はありません。
直立性:タマゴケの胞子体
トヤマシノブゴケの胞子体(蒴)

タイ門(タイ類)
意外と身近でも目にする機会が多いコケ植物で、代表的な苔はゼニゴケ、ジャゴケ、ムチゴケなどが知られています。見た目は植物体が葉と茎にわかれているもの(茎葉体)、わかれていないもの(葉状体)が知られていて、葉に中肋がが無く、全体的に丸みを帯びているものが多いです。特にゼニゴケは特徴的で葉に吸盤状の無性芽器(むせいがき)をつけます。そこから無性芽を雨などの水を利用して放出することで、自分のクローンを大量に増やすことができるのです。胞子はきのこの形のような雌器床をだします。
胞子体の蒴は4つに裂けるように開き、弾糸(だんし)と呼ばれるバネのような糸状のものを胞子と一緒に放出し胞子を遠くまで飛ばします。また、胞子体はセン類のように長くは残らず、役目を終えるとすぐに枯れてしまいます。

茎葉体:ツボミゴケ属の胞子体
葉状体:ジャゴケ類の胞子体はきのこにそっくり
フタバネゼニゴケの吸盤状の無性芽器

ツノゴケ門(ツノゴケ類)
上で紹介した蘚苔類と比べると、聞きなじみのない言葉だと思います。ツノゴケ類は角状の胞子体を形成するのが特徴で、地表に深緑色の葉状体を広げています。胞子体が角(つの)のように生えるといことが大きな特徴で、胞子体が生えていない時の見た目はベタッとした葉状体でゼニゴケ類のような見た目をしています。ツノゴケ植物門のすべての種がラン藻類(細菌類の仲間)と共生しているという特徴もあります。ラン藻類はコケに寄生しているわけではなく、コケに窒素固定生産物(養分を提供しているため、相利共生(お互いに利益のある関係)となります。

ツノゴケ類の胞子体
ツノゴケ類の造精器

※「門」の表記については、新しい植物分類Ⅱ「コケ植物」の分類体系より

【参考書・文献・webなど】
アミガサタケ・チャワンタケ識別ガイド(文一総合出版)
コケのふしぎ なぜコンクリートのすき間や塀に生える?原始的な陸上植物といわれるワケは?(Softbank Creative)
じっくり観察特徴がわかるコケ図鑑(ナツメ社)
Kinoko oso的キノコ写真図鑑Mniaecia jungermanniae (ミドリコケビョウタケ)
(http://toolate.website/kinoko/fungi/mniaecia_jungermanniae/index.htm)
Discomycetes etc. Mniaecia jungermanniae
https://chawantake.sakura.ne.jp/data/Mniaecia_jungermanniae.html
Mniaecia jungermanniae (Helotiales), an overlooked bryophilous ascomycete in the Liberec Region (Czech Republic)(http://www.czechmycology.org/_cmo/CM68204.pdf
ゲノム解析から見たツノゴケの二酸化炭素濃縮機構とシアノバクテリア、菌類との共生植物の陸上進出を可能にした生存戦略
https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=1481

注)きのこ豆知識は毎月2回更新をします。(第1、第2金曜日に更新を予定していますが、臨時休載、更新の変更などもあるかもしれないので、その際はご了承ください)

過去掲載一覧

【あ行】
アミタケ(網茸)
オウギタケ(扇茸)
【た行】
ツバキキンカクチャワンタケ(椿菌核茶碗茸)
【な行】
ニセマツカサシメジ(偽松毬占地)
【は行】
ヒラタケ(平茸)
【ま行】
マツカサキノコモドキ(松笠茸擬)
マツカサタケ(松毬茸)
ミドリコケビョウタケ◆今はこの記事を見ています
【番外編】
きのこの暮らし
きのこの役割

ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター

福岡市油山にすむ生きものの標本や季節の展示、最新の自然情報発信を行っています。各専門スタッフが交代で常駐していますので、自然・生きものの困り事はお気軽にご相談ください。

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