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ミッドサマー感想2・キャラクター編

映画「ミッドサマー」の感想その2です。

キャラクターとかに対して雑多に書いていくだけです。こちらも映画を見ている前提の話なのでネタバレ注意です。


・ダニー

しんどい。彼女が行くべきだったのはホルガ村じゃなくてメンタルクリニックだったとは思うけど、すでに抗不安剤を服薬しててそれでもメンタルぐちゃぐちゃだった都合上、ここで病院行っても明確な効果があるって信じられなかったんじゃないかなぁ。パーティについて行ったりホルガ村について行ったり、少なくとも彼氏といて何かをしていれば気が紛れるんじゃないかという思いに突き動かされていたのかもしれない。ここまでメンタルダメになっていればそもそも落ち着いた判断もできないだろうけど、クリスチャンがそこで冷静に寄り添ってくれるタイプじゃなかったのがなぁ… 基本的に具合悪そうだし歯切れの悪い態度ばかりだけどここまでの理由が提示されていれば致し方なしといったところ。みんなでわーっと体を動かして踊ったり、声を出して歌ったり、意味は分からずとも一緒に思いっきり泣き叫んでもらったりといった過程が結局ダニーにとって力技メンタルケアになったのかなと。それ、カルトの常套手段ですよ。カルトの流れに身を任せ、苦しかった人間関係をぶっ飛ばして得た安寧はいつまで続くのか。


・クリスチャン

村にとってはそこまで悪いことをしていないが、仲間グループにとっては雰囲気が悪くなることばっかりしているぱっと見わかりにくいタイプのクズ。パニック障害を持っていてたびたびその症状が出る彼女にうんざりしてる一面もありつつ「別れて後悔したらどうしよう」と別れに踏ん切れないでいる。監督が共依存とかなんとか言ってたのはこの辺もあるんだろうなと。それはそれとして家族がとんでもない死に方をした人間に対しての労わり方が雑、そしてその雑さに巻き込まれた友人への対応も雑。いい人っぽく見せようとしつつも言動に心がない恐ろしい子。カルト関係ないけど怖い人や。ただ知らない人の陰毛や体液食わされまくったら気が滅入ってくるのは分かる。それは気持ち悪いよな。知ってる人のでも気持ち悪いわ。一緒にきたはずの余所者たちがどんどんいなくなっていって残ってる人も村人と同じ格好して溶け込んで行ったら訳が分からなくなって頭おかしくなるよな。それはわかる。ただ最終的にヤッても死(ダニーから心が離れているアピールになる)、ヤらなくても死(村の決まりを守らない人間として処理される)というどうあがいても絶望状態になってるのはちょっと笑った。普通の字幕版か吹き替え版を見た人のほとんどは彼のモザイクでなんとも言えない気持ちになると思う。個人的にはあんだけ周りでオバちゃんたちに応援されてたら立つものも立たないんじゃないかと思ったけどその辺はクスリ入れられてたからなのか単純に性欲が強いのか。


・マーク

DQN枠かと思いつつもそれ言ったらクリスチャンも大概DQNよな。性欲が露骨に強いので、外からの種を欲しがっているホルガ村では逆に生き残りやすいのではないかと思っていたが、急に生えてきた先祖の木によって死亡が確定してしまったちょっとかわいそうな子のイメージ。いやもしかしたら、女の人に連れて行かれた時にさくっと種回収された後さくっと殺されたのかもしれないけど。個人的にはアメリカにいた時のダニーとの別れを渋るクリスチャンに対して「それなら俺が思い出させてやる、お前が一年前からダニーと別れたいって言ってたことをな(意訳)」っていう台詞が好き。そのアドバイスは正しいし、ダニーとクリスチャンの関係について的を射ていたと思う。


・ジョシュ

普通に真面目な学生だったはずなのにね… 本の写真を撮りに行ったのは、もしかするとクリスチャンが論文のテーマを被せてきて、村の名前も場所も具体的なことは書けないような文章だけでは後から来たはずのクリスチャンと差がつけられないからしっかりした資料も持って帰るべきじゃないかと焦った結果なのかもしれないと自分はちょっと感じましたよ。ミッドサマーはホラー映画とは言い難いけど、本の写真撮ってるジョシュの背後から迫る影のシーンはコテコテホラー演出っぽくてちょっと笑った。彼のようなテーマを言及する学生は世界中にいるだろうけど、隣にガチ物のカルト信者がいたという引きがまずかったせいでこんなことに… 睡眠薬をねだるダニーに対して「自分で持ってこいよ」とか言わなかった点は評価が高い。なんていうか…付き合う友達は…選ぶべきだったね…


・ペレ

穏やかな顔をしているSAN0狂信者。そもそも外から呼んだ人間を無事に返す気が村にないことを知りつつグループのホルガ村行きを提案したんやなって… 絵やダニーと話している時の様子から、彼もダニーに気があったんじゃないかと感じた。ただし、ダニーが同行することはクリスチャンが勝手に決めたことなのでペレにとっても予想外だっただろうが、最終的にクリスチャンが死んでダニーもカルトの女王になったのでペレ的には完璧なハッピーエンドなんじゃないだろうか。ダニーが女王になった時にめちゃくちゃ喜んでいたのはそういう流れもあると思う。ペレが「自分の両親は炎に焼かれて死んだ」と言った時、ペレはもともと外の人だったのかな〜って思ったけど、これ多分ペレの両親も儀式の生贄になったクチじゃないのかと思うと、ペレがどこまでわかってて言ってることなのか分からなくなっていく。ただもしかしてホルガ村にきてすぐの陰毛おまじないの絵に対して言っていた「ラブストーリーさ」はミッドサマー全体にも「ペレのラブストーリー」という意味でかかっているのかと思うとなんかやっぱり薄ら怖いですね… 


・ロンドンから来た一行(イングマール・サイモン・コニー)

「こんな村にいられるか! 俺は先に帰るぞ!」をやる人から死んでいくという鉄板ムーブをしてくれた。ロンドンカップルは素直にラブラブだったのに、彼氏だけ先に何も言わずに村を出てしまったと聞いた時に「あっこれバラバラにして片方ずつ殺すやつだ…」てなりました。中継地に車を止めて、そこから村人の案内の下徒歩で森を歩かなければ村に行けないシステムは、こうやって外から来た人間が自力で帰れないようにする防波堤でもあるんやな…と。ロンドンカップルを連れてきたイングマールは、コニーに気があるようだったので、彼のの頭の中では彼女がダニーのようなコースを行ってくれることを期待していたのかもしれないけど、あいにくコニーはダニーより心に余裕があって彼氏とも上手くやってたからカルトなんて必要なかったのね。一緒に見た人に聞いたら、最後の村人生贄枠にイングマールがいたらしいので、もしかしたら外から人を連れてくるにしても、種や母体候補になるわけでもないただの生贄を連れてきただけでは儀式で間引かれる対象になるのかな… 役にあんまり立たなかった上に外からの知見を持ってるから不穏分子になりうる的な… もしくは意中の人を殺しちゃったから後追いで…? コニーとサイモンに関しては普通にラブラブやってて、イングマールの横恋慕でここ3人みんな死んじゃったのはある意味ダニー・クリスチャン・ペレの別パターンってことなんだろうな。ダニーとクリスチャンが仲良くてもうちょっと心に余裕があったらロンドンカップルコースだったのかも。仲良かったらその時点で死って嫌な話だなぁ。


・72歳ズ

「人生には季節があり、72歳で終わる」話の後、食事で特別扱いされてるのでなんとなくその後の展開が分かったけど、予想の五倍グロかった。


・赤毛の子

一回で孕めたのか? それはそれですごいな。孕めたんだったらやっぱり生理の周期とかも村のセックス担当者が把握してマッチングしてるんだろうか… そうだとしたらやっぱりシステマチックな村だよな…


・がんばれおばさんたち

ちょっと静かにして


・アリ・アスター監督

この映画はジャンル付けしにくく、いろんな要素が含まれているという旨の彼の発言に対してなるほどなーと思った。ダニーによるクリスチャンへの、もしくはイングマールからコニーへの失恋物語なのかもしれないし、グロシーンやおどろおどろしい描写からスリラー映画と言えるかもしれないし、ダニーが力技の共感によって吹っ切れるまでを描いたセラピー映画とも言えるかもしれない。苦しみや悩みを映画として昇華したのかもしれないけど…養生して…という気持ちも抱くよ…養生して…


・まとめ

「ミッドサマー」は多面的な見方ができる闇鍋のような映画であり、考察スキーには楽しいけど、素直に映像を追っていくだけの人だと独特のおどろおどろしさに押し負けて「とにかく気持ち悪かった」という着地の仕方をしそう。ひたすら破滅的な展開が続いたまま終わるので後味も良くない。でも駄作というわけではない。なんとも言えない味わいをなんだこれ!?って言いながら精査していくだけのポイントがちゃんとあって、見応えがある。そんな感じ。


ひとまずミッドサマーの感想はこのくらいで。

ここまで読んでくださってありがとうございました!


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