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翻訳修行

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趣味ではじめた、チャンドラーの長篇小説比べ読み。それが高じて、自分でも訳してみようと思い立ちました。既約の三冊を参考に、できるだけ原文に忠実に訳したいと考えています。
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#レイモンド・チャンドラー

五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

“like hell”が、文頭に来たら「絶対〜しない」20

【訳文】

彼らが外に出てきたとき、車はすぐ傍にあったが、アールはいなかった。彼は車を停めてライトを消すと、私に何も言わずに母屋の方へ歩いていった。まだ、口笛でうろ覚えのメロディをさらっていた。

ウェイドは後部座席に慎重に乗り込み、私は彼の横に乗った。ドクター・ヴァリンジャーが運転した。彼の顎はひどく痛み、頭も痛かったろうが、そんな素

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五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

“mourning dove”は、ただの「鳩」ではなく「ナゲキバト」19【訳文】

噛みしだかれてちぎれた紐みたいに寸足らずな気分で車を走らせ、ハリウッドに戻った。食事をするには早すぎたし暑すぎた。オフィスの扇風機をつけた。それで涼しくはならなかったが、空気が少し爽やかに感じられるようになった。外の大通りでは車の騒音が鳴りやまなかった。頭の中では蠅取り紙の上の蠅のように様々な思いがくっつきあってい

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五冊の『ロング・グッドバイ』を読む

五冊の『ロング・グッドバイ』を読む

“That's no way to”は「そのやり方はない」17【訳文】

二〇マイルほど車を運転して街に戻り、昼食を食べた。食べているうちに、ますますすべてが馬鹿らしく思えてきた。私がやっていたようなやり方では、人は見つからない。アールやドクター・ヴァリンジャーのような興味深い人物には出会えても、目当ての男には出会えない。報われることのないゲームで、神経とタイヤをすり減らし、言葉とガソリンを無駄遣

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五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

16マーロウはアールの何を“phony”(いんちき)と言ったのか?【訳文】

セパルヴェダ・キャニオンの麓、ハイウェイから引っ込んだところに、黄色く塗られた二本の四角い門柱があった。木枠に五本の横木を張った門扉の片方が開いたままになっていた。入り口には「 私道につき、立ち入り禁止」と書いた看板が針金で吊るされていた。空気は暖かく静かで、猫の嫌うユーカリの木の匂いでいっぱいだった。

私道に入って、

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五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

キャンディピンク色のビルは「よくある」のだろうか?15【訳文】

どんなに腕に自信があろうと動き出すには出発点が必要だ。名前、住所、地域、経歴、雰囲気といった何らかの基準になるものが。私が持っていたのは、くしゃくしゃになった黄色い紙にタイプされた文字だけだった。「きみが嫌いだ、ドクター・V。だが、今はきみが頼りだ。」これでは、太平洋に狙いを定め、ひと月かけて五、六 か所の郡医師会のリストを調べてみ

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五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

”Desert Rose”は薔薇ではない。砂漠で採れる石だ。14【訳文】

翌朝、耳たぶについたタルカム・パウダーを拭いているとベルが鳴った。 玄関に行ってドアを開けると、一対のバイオレット・ブルーの瞳があった。 彼女は茶色のリネンを着て、赤唐辛子(ピメント)色のスカーフを巻いていた。イヤリングや帽子はなかった。 少し青ざめていたが、階段から突き落とされたようには見えなかった。 彼女はためらいがち

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五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

“swing arm”はキツツキの翼か?12【訳文】

その手紙は階段の下にある赤と白に塗られた巣箱の形をした郵便受けに入っていた。支柱から張り出した腕木に取り付けた巣箱の屋根の上でいつもは寝ているキツツキが起きていた。それでも、ふだんなら中を覗かなかったかもしれない。自宅に郵便物が届くことなどないからだ。ところが、キツツキの嘴の先がなくなっていた。折れ口は新しかった。どこかのはしっこい子が手製の

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五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

“perfect score”は「満点」のこと11【訳文】

朝、髭を剃り直し、服を着て、いつものようにダウンタウンに車を走らせ、いつもの場所に車を停めた。私が時の人であることを駐車場係が知っていたとしたら、素振りさえ見せないプロの仕事だった。私は二階に上がり、廊下を通ってドアの鍵を開けた。色の浅黒い、世なれた風の男がこちらを見ていた。

「マーロウか?」

「だとしたら?」

「ここにいろ」と彼

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五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

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10(turn+目的語+over)は「物事をあれこれ考える、熟考する)という意味

【訳文】

ポケットを探って所持品預かり証の控えを渡し、現物を確認してから原本に受領のサインをした。身の回り品をそれぞれが収まるべきポケットに戻した。受付デスクの端に覆いかぶさるように凭れている男がいた。私がデスクを離れると、背筋を伸ばし、話しかけてきた。背丈は六フィート四インチほどで針金のように痩せていた。

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五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む」

五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む」

9“up (down) one’s street”は「お手のもの」
【訳文】

早番の夜勤の看守は肩幅の広い金髪の大男で人懐っこい笑みを浮かべていた。中年で、もはや哀れみや怒りからは縁遠くなっていた。何事もなく八時間をやり過ごすことが望みで、たいていのことは卒なくこなしているように見えた。彼が私の房の鍵を開けた。

「お客だ。地方検事局から男が来てる。寝てなかったのか?」

「寝るにはまだ早い。今

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四冊の『長い別れ』を読む

四冊の『長い別れ』を読む

8“get a lot of business”は「もうかる」という意味

【訳文】

重罪犯監房棟の三号監房には寝台が二つ、寝台車(プルマン)スタイルでついていたが、混みあっていないようで房を独り占めできた。重罪犯監房の待遇は上々だ。特に不潔でも清潔でもない毛布が二枚と格子状に交差した金属板の上に敷かれた厚さ二インチほどのごつごつしたマットレス。水洗式便器、洗面台、ペーパータオル、ざらざらした灰

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四冊の『長い別れ』を読む

四冊の『長い別れ』を読む

7“ice cream cone”は「アイスクリーム」のことではないかもしれない【訳文】
その年の殺人課の課長はグレゴリアスという警部で、稀少になりつつあるが絶滅することはないタイプの警官だった。眩しい電球、しなやかな棍棒、腎臓への蹴り、股間への膝蹴り、鳩尾への拳、首のつけ根への警棒の一振りで犯罪を解決するタイプだ。半年後、彼は大陪審で偽証罪で起訴され、裁判を受けることなく解任され、その後ワイオミ

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四冊の『長い別れ』を読む

四冊の『長い別れ』を読む

5【訳文】

銃は私に向けられていたわけではなく、ただ握られていただけだった。中位の口径の外国製オートマティックで、コルトやサヴェージでないのは確かだ。憔悴して蒼ざめた顔に傷痕、立てた襟、目深にかぶった帽子、銃を手にしたその姿は、まさに昔のギャング映画から抜け出してきた窮地に立つ男そのものだった。

「ティファナまで車で送ってほしい。十時十五分発の飛行機に乗りたいんだ」と彼は言った。「パスポートも

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"I'm sorry for "は「~して申し訳ない」

"I'm sorry for "は「~して申し訳ない」

四冊の『長い別れ』を読む4【訳文】

私たちが最後にバーで飲んだのは五月のことで、時刻はいつもより早く、四時をまわったばかりだった。彼は疲れて痩せているように見えたが、おもむろに笑みを浮かべてあたりを見まわした。

「夕方に開けたばかりのバーが好きなんだ。店の中の空気はまだひんやりときれいで、すべてが輝いている。バーテンダーは鏡に向かい、ネクタイが曲がっていないか、髪が乱れていないか最後のチェック

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