見出し画像

各党のSNS活用データから振り返る参院選(YouTube編)

こんばんは、あぶかわ( @abukawais )です。

7月10日に参議院選挙が行われました。結果は自民党が改選過半数を超える議席を獲得することになりましたが、ニュースや選挙速報では各党のSNS活用が数多く取り上げられており、選挙特番でも党首自らがSNS活用の重要性を話されている姿が印象的でした。

そこで、せっかくなので、各党実際にどれくらいSNSを活用していたのだろうか?ということを調べてみました。今回の記事では、YouTube活用について振り返ってみたいと思います。

※本記事は個人の意見に基づくものであり、私個人、また私が所属する企業が特定の政党を支持するものではありません。

各政党のYouTubeチャンネル登録者数

時間の都合上、与党の自民党と野党5党(立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、れいわ新選組、参政党)を取り上げます。

まずは、参院選終了翌日、7/11時点のYouTubeチャンネル登録者数です。

政党アカウントのYouTube登録者数比較(2022.7.11時点)

こうしてみると、得票数や獲得議席数とYouTubeチャンネル登録者数にはあまり相関がないように感じます。特に、れいわ新選組と参政党は獲得議席数と比較してYouTubeで多くのチャンネル登録者数を獲得していることがわかります。

各党のYouTubeチャンネル登録者数の伸び

選挙期間は各党のSNS活用が活発になりましたが、その活動の成果を測る指標としてチャンネル登録者数の伸び率を用いたいと思います。参院選の公示日は6/22でしたが、その少し前の6/11から、投開票日の7/10までの30日間でのチャンネル登録者数の伸び率をみてみましょう。

各党のYouTubeチャンネル登録者数の伸び率

日本維新の会が34%、参政党が27%、そして国民民主党が18%増加、という結果になりました。日本維新の会は、自民党や立憲民主党と比較すると10倍以上の差があることがわかります。

また、参政党はチャンネル登録者数が元々多かったにもかかわらず、この1ヶ月でさらに増やしており、登録者数という観点では圧倒的な増加をみせていました。それでは、各党の活動にいったいどういった違いがあり、それが成果につながったのでしょうか。

1つの仮説として「YouTube投稿を増やせばその分チャンネル登録者も増える」があります。それでは各党の投稿数の投開票日までの30日間の推移をみてみましょう。

YouTube投稿数の推移

投稿数だけをみると、立憲民主党が最も多く250以上(1日10近く)投稿しており、次いで日本維新の会、次にれいわ新選組が続き、最小は国民民主党という結果になりました。この数値から考えると、投稿を多くすればチャンネル登録者数の増加につながる、という訳ではないようです。

もう少し深掘りしてみると、立憲民主党の投稿はYouTube ショート動画が多く、短時間のコンテンツではチャンネル登録に至るような態度変容を促せなかったのではないか、と考えられます。

https://www.youtube.com/c/rikkenminshu/videos より

それでは、投稿数以外の要因で、日本維新の会と参政党の2党がどのような活動によってチャンネル登録者数を伸ばすことに成功したのか、考察していきます。

※内容や発言に関しての考察は差し控えるのと同時に、他の活動の影響は考慮しないものとします。

日本維新の会:演説のライブ配信が成果に

他の党と比べた日本維新の会のYouTube活用の特徴は、ライブ配信の多さです。6/22の公示日以降、各地で開催された演説、特に松井代表による演説を中心に活発にライブ配信しています。

YouTubeライブ配信数の推移

数でみると、2番目に多く配信していたれいわ新選組と比較して2倍以上の110回となりました(7/11時点で公開されているもの)。チャンネル登録者数も公示日以降に伸びているため、一定の相関があるようです。

ただ、もう1つの要因として考えられるものがあり、6/17〜25にかけて、ひろゆき氏との対談動画が4本投稿されています。再生数はチャンネルの他の動画と比較すると圧倒的に高く、この動画を起点にしたインフルエンサーマーケティングが効果を発揮している可能性もあります(平均再生回数の10倍程度を記録)。

参政党:夜の継続的なライブ配信で高いエンゲージメント

他党と比較して、普通のYouTube動画の投稿も、ライブ配信数も決して多くはない参政党がここまで圧倒的にチャンネル登録数を伸ばした要因はどこにあるのでしょうか。これは、SNSの特性でもある視聴者のエンゲージメントの高さが寄与しているのではないかと考えます。

※ここでいうエンゲージメントは、投稿のライク数とコメント数を足したものを指しています

1投稿あたりの平均ライク数

1投稿あたりの平均ライク数をみると、他党と比べて圧倒的であることがわかります。元々のチャンネル登録者数が多かったことを差し引いても、立憲民主党の投稿とは100倍以上の差があります。それでは、どうやってここまで高いエンゲージメントを実現したのでしょうか。

参政党は夜にライブ配信がよくみられるYouTubeユーザーの傾向を把握して、ライブ配信をうまく活用していたようです。

https://www.youtube.com/c/%E6%94%BF%E5%85%9ADIY/videos より

選挙の公示がはじまる以前から、毎週継続的にライブ配信を続けていたこともあり、既存のチャンネル登録者は一般的なYouTuberの配信を視聴するような感覚で視聴していたのではないかと推測されます。それに加え、選挙戦終盤は「毎日LIVE」と題し配信を続けていましたので、活動量がさらに上乗せされた形です。

その結果、各配信が10万回を超える視聴数を記録しているだけでなく、エンゲージメント率(エンゲージメント数/視聴数)が20%を超えるような回もあり、圧倒的熱量を生み出していたことが伺えます。

エンゲージメント率の中央値

自民党:広告配信で認知獲得に注力

こうした結果をみると、党のYouTubeチャンネル運営という観点では日本維新の会、そして参政党が成果をあげたといえます。

それでは、選挙で過半数を獲得した自民党はYouTubeに力を入れていなかったのか、という疑問が生まれてきます。しかしながら、実際には自民党もYouTubeを重要視しており、しっかりと対応していたことが別のデータから伺えます。

広告を中心に広くインプレッション(視聴)を獲得する方針だったようで、30秒動画を1本と、「#ライブボイス改革」というタイトルがついた15秒動画を複数本公開されています。私が確認できる範囲では広告配信の実績はわからないのですが、合計試聴数は他の政党の倍以上となっており、幅広いリーチが実現されています。

投稿動画の合計再生数

自民党は著名な政治家が多いので、オーガニック(広告配信ではない純粋な拡散)での態度変容はTwitterを中心に行なっていた、また、政策は日々取り上げられることが多い特性のもと選挙前はブランディングに徹していた、という仮説が立てられますし、獲得議席数からもこの戦略が一定の成果をおさめたといえるのではないでしょうか。

最後に:YouTube施策の成功はライブ配信にあり?

今回、参院選という社会の関心事を取り上げ、YouTubeをどのように活用し、成果を収めたのか、という観点で考察してみました。

データから見えてきたことは、以下です。

  • ライブ配信(長尺動画)によって視聴者の熱量を高めることができる

  • YouTuberのような継続性のある投稿(配信)がチャンネル登録を増やす

  • (一時的な)投稿数の増加がチャンネル登録者に与える影響は大きくない

このデータから導き出した仮説は、企業のSNS担当者や一般のYouTuberの方々にも示唆に富んだ内容になるのではないかと思います。

現在、私は普段インフルエンサーマーケティングの代理店におり、さまざまな情報収集・発信をしておりますので、もしお役に立てることがございまいしたらTwitterなどでお気軽にご連絡ください!

Twitterのアカウント
https://twitter.com/abukawais

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?