連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』一章　グラビアアイドル（一）

遭遇そうぐう、ということが人生にはある。

　胸にキュンときた。
　肩出しのフリル・ワンピすがたで公園をめぐりながら、ポーズをとったりすそを揺らしたりしている。ワンポーズワンポーズが決まる。スタイルがいいからだろう。どんな動作も様になっている。
　場面が室内にかわった。髪型も前髪パッツンに変えて、透すけ感のあるチュールのミニスカートをはいて床に腹這はらばい、本を読んでいる。かわいくてまぶしい。さっきの場面ではおねえさんっぽかったのが、こんどはギャルっぽい印象だ。いっしゅん混乱したがおなじ人物だった。
　その後シチュエーションもどんどん展開していき、清楚せいそな洋装から水着や下着姿まで白とピンクのあいだを行ったり来たり。目がくらみそうになる。キュートな笑顔とプロポーションもあいまって上品な色気に圧倒されそうだ。
　
　田所順平たどころじゅんぺいは、前期高齢者と区分される老人だ。戦後の昭和に生まれて関西の下町で育ち、やがて大学を出、東京本社の企業に就職した。転勤や事情があって複数の転職経験もしたがまずは無事定年まで勤め、同じ会社で再雇用もへて昨年最終退職した。
　その後は毎日特にすることもないのでだらだら過ごしている。ただし朝は早起きだ。べつに意識してのことではない。年齢的に早く目が覚めてしまうだけのことだ。　　　

　最近はユーチューブをみることにはまっている。ペット動画や、日本在住外国人のチャンネルなどが特に面白い。しかし、それにも最近少し飽きてきたところ、たまたまグラビアアイドルの動画に行き当たり、えらくかわいい娘が目に刺さったのだ。

　プロモーションビデオの動画タイトルにはアイドルの名前がなかったが後で調べたらわかった。何のことはない。AKC48の柏葉由香かしわばゆかだった。順平はとくにアイドルオタクでも何でもないので彼女とはすぐにはわからなかったのだ。
　有名なグループだから何人かは名前と顔が一致する程度には知っていたが、正直彼女についてはそこまで印象が強くなかった。調べたところAKCでの活動歴が十七年で、来年卒業するらしい。相応の年齢だが、若見えすることにびっくりした。

九十九屋さんた さんの画像をお借りしました。