見出し画像

楽しみ、ショパン国際ピリオド楽器コンクール。(続)


 前回の記事で、今年10月に第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールが開催される、というお話をしました。
 また、5年前の第1回では日本人川口成彦さんが2位タイになった快挙のことを先日TVのドキュメンタリー番組で観ました。
 今回はそのつづきです。

ピリオド楽器とは

 古楽器ともいい、ピアノに関してはその位置にある楽器が「フォルテピアノ」です。制作当時の楽器を整備して弾いたり、多くはありませんが、復元・複製したりして現在も制作・流通しています。

フォルテピアノとは

 それまであった鍵盤楽器のチェンバロやクラヴィーアを改善して、現代のピアノにたどりつくまでの過渡期の楽器です。とはいえ、不完全な楽器ではありません。ダイナミックな表現性と優美な音色を兼ね備えた魅力的な楽器です。

なぜ、いま古楽器なのか

 すでに、「ショパン国際ピアノコンクール」という歴史と権威あるコンペがあるのに、なぜ今さらフォルテピアノなのか?という疑問を抱かれるとおもいます。

 コンサートや作曲で実際にショパンが使った楽器が、現代のピアノではなく「フォルテピアノ」だった、ということが最大の理由でしょう。
 あと、考証の進歩やオリジナリティの尊重により、作曲当時の楽器を使用することが盛んになっていることも影響しているでしょう。

モーツァルトも使っていた

 後期・晩年あたりの年代にかなり楽器として進化しました。モーツァルトが全霊を傾けて作曲したコンチェルトの傑作群は、優秀なフォルテピアノがあったからこその所産です。

第1回コンクールでの川口成彦さん

 TVのドキュメンタリーで、第一回のコンクールに招待され、2位タイを獲得した日本人、川口成彦さんの奮闘ぶりを観ました。

ショパンが作曲していた19世紀前半から半ばまでに作られたピアノで演奏を競う「第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール」がポーランドのワルシャワで開かれ、13日、オランダ在住の川口成彦(なるひこ)さん(29)が2位に選ばれた。もう1人の2位受賞者を含めて、他の1~3位の入賞者3人はポーランド人が占めた。
同コンクールは18~35歳が対象で、DVD録音による審査を経た9カ国30人が参加。6人がオーケストラと共演する最終選考に進んだ。
朝日新聞 DIGITAL

 一次審査で、半数の15人にしぼられ、二次審査で6人がオーケストラとの共演でショパンのコンチェルトを演奏するファイナリストに選ばれました。

 楽器は主催者が6台を用意します。制作年代や国がちがう6台は音色や響き、タッチも異なります。鍵盤の幅も違うそうです。どれを選ぶかは演奏者にまかされますので、川口さんも一次審査の演奏などを踏まえ熟考の上できめました。

 ところが、前の夜になって急遽楽器を変更することにします。かんがえにかんがえたの上のことですがとても勇気のいることだったと思います。この判断が結果的には良かったのでしょう。

 川口さん、オーケストラとの共演は初めてのことだったそうです。よかったのは、この「18世紀オーケストラ」が古楽専門の楽団で、オランダ在住の川口さんとは以前から面識があったことです。ちなみにオランダのアムステルダムは「古楽の聖地」とよばれるほどの土地です。

川口成彦さんの話 

当時のピアノは現代の楽器と音そのものが違い、異なる繊細さを持っているので、ショパンの独特な色や心模様を描ききることができます。
今のピアノが濾過(ろか)された水だとすれば、当時のピアノは砂や葉っぱが交じり、少し濁った川の水のようなもの。作品のキャラクターをよりナチュラルに表現できると感じています。
朝日新聞 DIGITAL

フォルテピアノのふたりの演奏家

 小倉貴久子さんは、日本の代表的なフォルテピアノの演奏家で国際的にも活躍されています。小倉さんのことは番組では触れませんでしたが、調べると川口成彦さんとの意外な共通点が……。
 小倉さんと川口さんは同郷の岩手県出身で、お二人とも東京藝大の卒業ということで何かの縁でしょうか。

コンクールの名称について

 当初、疑問に思っていたことがあります。主催者はなぜこのコンクールを「フォルテピアノ●●●●●●●コンクール」とせずに、ピリオド楽器●●●●●●コンクール」としたか。
 しかし上記のとおり、ファイナルで古楽オーケストラと独奏者が一体となって「ピリオド楽器」で協演すると知って謎が解けました。(私見です)

まとめ

 古楽器やその演奏の一ファンとしての私が、コンクールのドキュメンタリー番組をみて、川口成彦さんの話で感じたこと。それは、古楽器のすばらしさと川口さんの情熱です。

 今年10月開催の第2回コンクールをきっかけに、古楽器の世界がますます発展して音楽の世界が豊かなもの、身近なものになることに期待します。
 また、小倉貴久子さんや川口成彦さんはじめ古楽器の演奏者の方々がますます活躍されることをたのしみにしています。


※Klaviatur さんの画像をお借りしました。

最後までお読みいただきありがとうございました。記事が気に入っていただけましたら、「スキ」を押してくだされば幸いです。