マガジンのカバー画像

読書びより

163
気ままな読書で感じたことや役に立ったことを書いています
運営しているクリエイター

2022年8月の記事一覧

人間の生命を誕生から死までの動物的生存とする誤った教えのみが、理性的な意識のあらわれに際して人々が踏み込む、あの苦しい分裂の状態をもたらすのである。この迷いにおちこんでいる人には、自分の生命が分裂してゆくように思われる。 トルストイ『人生論』第八章

それはまだ完成しきっておらず、われわれの生命の中で現に行われているものだからだ。幸福を達成するために、この法則を遂行すること、理性の法則に自己の動物的なものを従属させること、そこにこそわれわれの生命もあるのだ。 トルストイ『人生論』第十章

しかしながら物事がなんでも面白い必要もない。 内田百閒『第三阿房列車』 菅田庵の狐 松江阿房列車より これだから面白い! 百鬼園様 謹んで申し上げます ご本人が面白いと思うことと 他人さまが面白いと思うことは イコールではありませんよ         ――らいとらいたあ

個人的な幸福がこれほどはっきり粉砕されてしまった以上、個人的な生存をつづけてゆくことは不可能であり、その人間の内部には動物的なものと理性的な意識との新しい関係が確立しはじめる。その人間は真の人間的な生命に向かって誕生しはじめるのである。 トルストイ『人生論』第九章

人が自分の生命とよんでいるもの、すなわち誕生以来の生存は、決してその人の生命ではなかったのだ。生まれて以来現在の瞬間までずっと生き続けてきたという観念は、意識の欺瞞であり、……理性的な意識がめざめる際に過去の生命についての観念が作りあげられたのである。 トルストイ『人生論』第七章

他の人たちも自分と同じように、今やっていることを何のためにしているのか知らずにいることくらい、わかっている。理性的な意識が偽りの教えをのりこえて成長し、人が人生のただなかで立ちどまって説明を要求する時は、訪れつつあるのだ。 トルストイ『人生論』第六章

母のために選ぶ、児童書。3

90歳を超えて、さすがに母も小さい文字が読みづらい、眼鏡をかけても本が読めないというのです。電子書籍は母には使いこなせません。ルーペ眼鏡も、母には使いにくいようです。ならばと、視点を変えて、児童書にアプローチしてみました。これは、いけるかも! 📗  前回の記事では、4セット目と5セット目の、計6冊のまとめ買いの内容をご紹介しました。 ・『ネコのタクシー』南部 和也著/さとうあや画 福刊音館刊☆ ・『小さなスプーンおばさん』アルフ・プリョイセン著/大塚 勇三 翻訳/ ビョ

天上の生命の神秘を説くパリサイの徒の教えも……行為の指針を与えてはくれない。だが、行為の選択において指針がなければ、人は生きてゆけない。ここに至って人は……もはや判断にではなく……どの人間社会にも存在し続ける外面的な生命の導きに従うのである。 トルストイ『人生論』第五章

科学者と自称する学者たちの教えは、生命についてのこうしたもっとも粗野で原始的な観念を、唯一の真実なものと認めているのである。……人類が何千年もかかってあれほどの努力と苦労の末にぬけだしてきた無知の暗黒世界へ、人々を組織的に連れ戻そうとしているのである。 トルストイ『人生論』第四章

人類がそれによって生き、教育されてきた、そしていまでもそれによって生き、教育され続けている、人生の偉大な教師たちの教えがこの社会で占めている地位くらい、現代の社会が盲従している知識の誤った傾向が鮮烈にあらわれているものは、ほかにあるまい。 トルストイ『人生論』第三章

人間の生命のこの内的矛盾は、インドや、中国、エジプト、ギリシャ、ユダヤなどの賢人によって非凡な力と明哲さで言いあらわされた。そして、大昔から人間の理性は、さまざまな存在間のたたかいや、苦悩や、死などによって滅ぼされない人間の幸福の認識に向けられてきた。 トルストイ『人生論』第ニ章