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悪夢のクラフトン屋敷へようこそ!Nightmare Horror Adventures : Welcome to Crafton Mansion 

 米アマでオススメされ、何だかマーダーミステリーの進化版のようだぞ、と思ってBGGを見ると評価もかなり高く(7.9)、お値段はかなり安い($24.99)ということで買ってみたゲーム。テキスト量が多く(もちろん全部英語)、1人で読まないといけない場面もありそうなのでメンバーを揃えるのに気を遣った。ボードゲーム仲間の中から、比較的英語にストレスがなく、多少翻訳アプリを駆使したりしてでもわけのわからんミステリゲームを遊んでみようという人を集めなければならないわけだ。結果、ベスト人数は5人らしいが4人でも遊べるとのことだったので某日カラオケボックスを予約して4人で集まりプレイしたのだった。
 ゲームカフェでなくカラオケボックスにしたのは、PCによるガイド(スマホ不可)が必要で、できれば個室で他のノイズも少なくできるかと思ってのこと。途中全員目隠しをしたりするのは分かっていたので(箱の中に5枚のアイマスクが入っている)、多分雰囲気的にも隔絶された環境がいいだろう。後述するが、これは半分正解で環境としては七十点くらいだったのではないか。

 とにかくこのゲーム、プレイヤーはほとんど何も分かっていない状態で始めるものなので、余計なことを言うと驚きを削ぐことになりかねない。なのでまず、これがどういう人に向いているか、どういう環境でプレイするのがベストだと思うかを箇条書きで書いてみる。そして、多少新鮮な驚きを犠牲にしてもいいからもうちょっとゲーム内容自体を知りたいという人向けに後半で具体的なゲームシステムについて書いてみる(もちろん、ストーリー上のネタバレはしませんが)。

・ホラーテイストのミステリ映画、『スクリーム』シリーズや『ラストサマー』のように、単なるスプラッタではなく、「犯人当て」要素があり、ある程度筋の通った形でのサプライズがあるタイプが好きな人。

・あくまで「ある程度」なので、ガチガチに証拠を見つけて論理的に犯人を推理し、指摘したいという人には向かない。

・ホラー映画の中の登場人物をロールプレイすることになるので、ロールプレイが絶対嫌だという人にはあれだが、マダミスで言うなら「クローズ型」でキャラクターの台詞はすべて書かれているので、密談とか交渉が苦手でも関係ない。

・「ホラーテイストのゲーム」の宿命として、どれほど「怖い」演出であれ、映画のようには怖くない。一人ではないし、ゲームはそもそも「楽しい」ものなのだから。そして実のところこのゲームは、あるアイデアによって驚きの演出がなされるのだが、元来は「怖がらせるため」のものが、むしろ「笑える」ものに変化する(いい意味でも、悪い意味でも)。この「アイデア」を楽しめるかどうかがこのゲームの評価の重要なポイントではないかと思う。ぼくは(そして多分一緒にプレイした仲間も)充分にこのゲームの仕組みを理解していなかったがために、その点の「覚悟」が足りず、やや中途半端なプレイに終わってしまったように思う。言語の問題もあるし、そして多分いわゆる「斜め上の」方向性を持ったゲームだったということだろう。

 これらの注意書きを読んだ上で、「面白そうじゃん。やってみよう」と思った方は、これ以上先を読まずにとにかくプレイしていただくのがよいと思う。とにかくストーリーだけでなく、段々分かってくるシステムそのものが面白さの一部でもあるので。「いや、これじゃちょっとよく分からんなあ。もう少しシステムが分からないと何とも……」と思われた方は以降をどうぞ。

*注意!!! ここから先、このゲームの「システム」の一部について説明します!!! 読みたくない方は下の **ここまで** まで飛ばしてください

 まずこのゲームには5人のキャラクターがいて、それぞれ公開情報と秘匿情報がある。そう、マダミスのように。(ちなみに、4人でプレイする際は指定の女性キャラクターを誰かが兼任しないといけない。実はぼくがこの項目を読み落としていたせいで最初えらい事故が起きた。*後述)
 そして秘匿情報の中には「あなたのマーク」として動物の写真が一つか二つずつあり、キャラクターの「性格」(悲観的か楽観的か、純粋か懐疑的か、冷静かかっとなりやすいか……といったもの)が添えられている。PCのガイドに従ってプレイを始めると段々その意味が分かってくる。
  ガイドは、物語の導入となる過去の事件の説明に始まり、ゲームのセットアップの説明等、もちろんすべて英語。字幕がないところも多く、ヒアリングを苦手とするものにはなかなかストレスだが、最低一人理解していればいいのでこの辺はまだ大丈夫。

一部屋につき四個所捜索できるが全部調べてる暇はない

 問題はここからだ。先ほど書いた動物の意味がようやく分かる。ゲームとしては、15年前に起きた惨劇の舞台に、その惨劇の生き残りであるいとこ同士五人がやってくるところから始まる。その屋敷の各部屋がタイルになっており、1枚ずつ進んではその部屋(玄関先や庭もある)を何回か捜索し、また進む、という方式。各タイルの四隅はそれぞれA、B、C、Dとアルファベットが振られており「8」のタイルの「A」の区画を調べたければ「8ーA」のカードを抜いてきてテキストを読む、というゲームブック的な進行が基本。隣のタイルに移動したり、一区画を捜索する(カードを1枚読む)ごとに1アクションを消費したということで画面(ずっと振り子時計が表示されている)のボタンをクリックすると15分時間が経過するのだが、5アクションか6アクション毎に停電が起きて(!)画面が真っ暗になる。そうなると、全員がアイマスクをしなければならない。そしてそこで動物の鳴き声が聞こえてくるのだ。――フクロウ、猫、象、オオカミ……などなど。そう、秘匿情報に書かれていた動物だ。この時、自分のプロフィールに書かれていた動物の鳴き声が聞こえたプレイヤーだけが、アイマスクを外して画面を見る。と、そこにはそのプレイヤーだけに向けられたメッセージが書かれていて(音声なし)、ある行動をするよう命じてくる。一例だが、「大きな音を立てて悲鳴をあげろ」みたいなことだ(実際のものとは少し違う)。
 お分かりだろうか。つまりはこのゲーム、「暗闇の中で犯人が主人公達を脅かす様子」を仲間内でできるよう再現しているのである。動物の鳴き声に応じて全員代わりばんこにこの役割はこなさねばならない。物語の犯人であるかどうかとは関係なく(ぼくがルールを読み落としたせいで、残った1人のキャラクターを誰にも兼任させていなかったところ、最初誰も何もしないで時間だけが経つ、という事故が発生してしまった。皆さんはお気をつけください)。ここだけは1人で(全員回ってくる)英語メッセージを解読しなければならないので注意。ただ、さほど複雑な命令はないし、たとえ間違えたところで後から読むテキストとちょっと食い違うだけのことなので余り深刻に考える必要もない。
 雰囲気をうまく作り上げ、各人が充分没入してロールプレイできていれば、かなりはったりの利いた「ドッキリ」も可能なシステムだということが分かるだろう。しかし、これはあくまで交代でやらねばならない仕組みなので、実際に物語内で起きているであろうこととは食い違ってしまう。「犯人当て」「マーダーミステリー」の邪魔にもなりかねないちょっとした「お遊び」のようにも見える。

新しい部屋に入るとそこのテキストを読み合わせ


 一方、キャラクター達の「性格」。
 物語の設定に話が戻るが、15年前に納屋で火災が起きて主人公達の両親三組(うち一人は当時既に故人)と祖父の合わせて6人が死亡したことになっている。が、遺体は判別がつかないほど焼けており、そのうちの一人が他の5人を納屋に閉じ込めて火をつけたのではないかと考えた生き残りの子供のうち最年長のジョニーが独自で調査を始め、ある夜残りの5人のいとこ達を呼び集めた、というのが発端だ。ジョニーはなぜか姿を現わさず、屋敷のあちこちに考察の跡や手がかりを残している。彼は、殺人者の性格をプロファイリングしていけば、6人の容疑者の中から真犯人を見つけ出せるのではないか、と考えた。そのために6人の性格がどうだったか、殺人者の性格はどうだと考えられるかをチェックしていく性格分布表?が添付されている。表向きはプレイヤー達は、自分達ではなくこの6人の中から犯人を見つけ出すよう、屋敷を探索しながら手がかりや記憶(時々誰かの記憶を刺激していろんなことを「思い出す」)を集めて、誰がどういう性格だったかを決定していく必要がある。
 ところがしかし、前述したようにプレイヤーキャラクターのプロフィールにも性格分布表は添えられている。ということはつまり……?

死んだ両親と祖父、そして殺人犯のプロファイル表とプレイヤーのハンドアウト

 実のところ、アリバイとか犯行方法のトリックとかを暴いて犯人を特定する、といった厳密な意味でのロジックは必要ない(というか存在しない)。犯人役でさえも当時何があったのかは知らされないので、「一体何があったのか?」「なぜそんなことになったのか?」を協力して暴いていく(思い出していく)そういうアドベンチャーゲームであるといってもさほど間違いではない。もちろん、なかなかに意外な真相が用意されているし、そこへ至る解明の道筋もスリリングである。その上で「目隠ししての脅かし」と「プロファイリングによる犯人当て」がスパイスとして入っている、そう捉えるのがいいかもしれない。
 そして最後には当然犯人を指摘するフェーズがあるわけなのだが……ぼくはちょっと笑ってしまって指示通りにはやらなかったのだが(そう。犯人役でした。カラオケボックス、という場所を選んだことの制約にもよる)もしちゃんとやっていたらどうなんだろうなという興味はある。ここで説明してしまうとだいぶ面白さが削がれる気がするので、「誰かの家のリビングとかダイニングのテーブルに座ってそっと立って出て行ったり出来るような場所でやった方がいいよ」というアドバイスだけしておきたい。

 *****ここまで*****

 いかがでしょうか。何とも奥歯にものの挟まったような物言いになってしまってあれだが、できれば多くの人にプレイしてもらいたいなあとは思っているのです。何というか、ちょっと他にないゲームだなと思うし、またこのシステム自体もうちょっとうまく使えばもっと色んなことが出来るのでは、という思いもある。面識のある方、多少繋がりのある方にはどんどんお貸ししてもいいと思っているので(ゲーム自体、人に貸すことを奨励している)興味はあるけど米アマで買うのはちょっと……という方はお声がけください。


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