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着物、はじめました。(その4・キツケ、タスケテー!!!)

「習うより慣れろ!!」・・・・もう、コレしかないであろう、着物の着付け。そして、「どんどん場数を踏む!!」・・・・着物で外出を怖がってたら、着付けの上達はありえないのだ!!!

・・・・・なーんてこんな事、頭では分かってても、こちとら素人。
「着崩れちゃったりしたらどうしよう!?」
「それを、着物警察のババアに注意されたら、さらにどうしよう!?」
とにかく緊張と不安で、頭が一杯いっぱいだったりするわけだ。
だから「自分で着付けして着物でお出かけ」なんて、最初の頃は、清水の舞台から思いっきりダイブするような覚悟が必要だった。
汗だくになって着付けして、それでギコチナイ足取りで街中を歩く時の気分といったら・・・・初めて、自分で着付けして外出した時の事は、今でも鮮明に覚えている。


ドキドキしながら街中を歩いていたら、何やらジ〜っと私を見つめるババアが出現。
「何!?なんでそんなに私を見てんの!?私、どっかおかしい着方してる!!??やめて!!ちょっと!私をそんなに見ないで!!」
目が激しくキョドりまくり、頭の中がカ〜ッとパニック状態になってる私に、ババアがスゥ〜っと話しかけてきた。
「・・・・・これからどちらへお出かけ?」
「・・あ!!いや、あの、すぐそこの着付け教室へちょっと・・・」
ヘゴモゴしながら答えてたら、キョトンとした顔でそのババア、
「んまぁ〜そうなの、行ってらっしゃい♬」
・・・・腹の奥底からホ〜〜〜っと胸を撫で下ろしたのも束の間、次の瞬間「だからって、ガン見してんじゃねぇよババア!!!」と、ブチギレそうになった瞬間であった(・・・だから、着物着てその口調はやめれ)。

そんなわけで、着物の着付けに関しては、この3年で「失敗なくして、成長はありえない」という事を学んだ。
そりゃあ失敗しないにこした事はないが、しかし初心者だったら、十中八九、何かしら、やらかしてしまうもんである。
ご多聞に漏れず、私も大いにやらかしている。
ああ、「タクシー車中・大ゲロ事件」、テヘペロ。


拙著『ババア★レッスン」の中でも書いたが、あれは確か、着付け習い始めて間もない頃の事である。
着物で友人と居酒屋。アハハ、アハハ♬とゴキゲン状態で飲み食いしてたのだが、どうも途中から気分が悪くなってきた・・・・暗雲ドロドロ。
妙な汗とかもかき始めるし、このまま着物姿でぶっ倒れるとか、それだけは、なんとしてでも阻止したい。
早々に友人達に別れをつげ、店の外でタクシーを拾って乗車、安堵。
しかし、ホッとしたのも束の間だ。
タクシーが走り出した途端に、突然・・・・・もの凄い勢いで、喉元までゲロが込み上げてきたのである。それはもう、胃袋の中が農民一揆のような状態、てか、「一揆」というよりも、「乱」みたいな事態である。
とにかく、目を白黒なんてもんじゃない、ほぼ白目を剥いてる状態で、頭の中で「どうすんべどうすんべどうすんべ!!!!???」
一刻の猶予もままならないその時、カバンの中にビニール袋があるのを発見、瞬時にそれを取り出し、光の速さで思いっきりソコに顔をぶち込みゲロを(以下略)・・・・・・・・あの時、私の耳元で、IKKOさんの「どんだけぇぇぇ〜〜〜〜っっっ!!!」という声が激しくこだました(ような気がした)。
とにかく、すんでの所でタクシーと着物を「ゲロという名の地球レベルの大惨事」から救った次第である。ブルース・ウィリス主演の「アルマゲドン」さながら・・・・まさにハリウッド映画レベルの危機であった。


で、帰宅後、着物を脱いでる時に気がついた。
「長襦袢の伊達締め、きつくしめすぎ!!!」
着崩れを気にするあまり、ぎゅうぎゅうにやらかしていたのだ。
まさに、初心者あるあるな大失敗。


結局、こういった小さな(・・・・てか、この回は相当BIGだが)失敗を何度も何度も繰り返して、そして色んな事を学んでいく。
「着物道」って本当に、「習うより慣れろ」な世界なんだなぁ〜と、しみじみ痛感した次第だ。


さて、この事件があってから、私はすっかり「伊達締め恐怖症」になってしまった。とにかく、苦しいのはゴメンである。とは言っても、着崩れてしまうのもゴメンだ。
「痩せたぁ〜い、でも食べたぁ〜い♬」みたいな感じの、乙女心(てか、ブス心)に振り回される日々がしばらく続いていたが、しかし。
とある1本の動画で私は救われた。それがコチラ↓

神楽坂にある、とっても素敵な着物屋、「木の花」さんの動画である。
襦袢の背中と、衿先部分に、安全ピンで腰紐をつけて「子供に浴衣を着せる」ようなやり方で着付ける方法。これが、とにかく、画期的であった。
苦しくないし、衿元も崩れない。そして、簡単・楽チンなので、最近はもっぱらこの着方で襦袢を着てる。初心者・着付けジプシーの方には、「こんなやり方もある」という事で、是非観て頂きたい動画である。

それから、私がオススメの着付け教室は、コチラの↓「衣裳らくや」さんである。着物スタイリスト・石田節子さんのお店だ。

着付けに関しては私、近所の個人経営の教室にて、単発で2回授業を受け、その後は独学であった。
が、いい加減それにも限界を感じ、コチラの教室の「3回コース」を受講。
これが本当に勉強になった。
なにしろマンツーマン。そして驚いたのが、先生も、その時着てる着物をいったん全部脱いで「肌着の状態」になって、一緒に着ながら教えてくれるのだ。これにはびっくりした。
で、その時教材として買った着付けの本がコチラ↓。

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こちらもとてもわかりやすい。
石田先生の着付け法は、余計な紐や伊達締めは使わない着方なので、超初心者の頃から比べたら、今は随分と楽に着られるようになった。

・・・・・さて。
そんなふうに私も、色々と経験を重ねてようやく「ヨチヨチ歩きの子供レベル」にまでなったわけだが。
しかし、それでもやはり「まだまだだよなぁ・・・」と自信が持てず。
なにしろ、着物を着るといつも、嬉しくて楽しい反面、「・・・・これでいいんだろうか?」というモヤモヤが頭を離れないのだ。

けれど。

先日たまたまテレビで、女優の沢村貞子さんの姿を観る機会があった。
沢村さん、着物姿であった。その着姿に私はショーゲキ!!を受けたのだ。
衿元ゆ〜ったりの、の〜んびりした着姿。着付師さんにガチガチに着付けられたのとはまるで違う、こなれ感漂うその姿に、私は目が釘付けになった。
そして。
そんな、目ん玉かっ開き状態になりながらも、ピキーンと「あるヒラメキ」が私の頭をよぎった。
「・・・沢村さんって確か、色々エッセイ本出してたよな・・だから・・・もしや、もしや、もしや!!!」

・・・・「着物」に関しても、何か文章を書いてるんじゃないだろうか?

善は急げ。己の直感を信じて、ダッシュで近所の図書館に直行した私。で。
ドキドキしながら書架をあさっていたら、「わたしの茶の間」という沢村さんのエッセイ集を発見。はやる心を抑えつつ、ぱらぱらページをめくったら・・・・・ありましたよ、ありました、着物についての文章を発見!!

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沢村さんの着物の着こなしのコツ、それは
「気楽に着ること」なんだそうである。
「私が着るためにきものがある。きものを着るために私がいるわけではない。主役は私」
そして、こうも書いている。
「汗水たらしてやっと着て、街を歩きながら、横目でショーウインドーにうつる姿を気にしてるようでは、きものに着られている」

が・が・が・がーーーーーーん・・・・・・私、椅子からひっくり返りそうになりました・・・「新婚さんいらっしゃい」の桂三枝みたいに。
「・・・・これ、私の事じゃん、私、めっちゃ着物に着られてるんじゃん!!」
着付けに関する技術は一通り学んだ。一応、一人で着る事は出来る。
けれど、「気持ち」が、まだまだ追いついていない。「着物に着られてる」から、いつもいつもモヤモヤしてる。「これでいいのか?」と、ショーウインドーにうつる自分が気になって気になって仕方がない。
「やっぱこうなっちゃうのヘンでしょ、これ、正解じゃないでしょ」って、小さい事をチマチマ気にする。そして、それに対して「真面目すぎるんだろうか私」ってさらにまた悩む。


そんな私だったけれど、沢村さんの文章を読んだら、ものすごく気持ちがラク〜になった。すごく大切な事を教えてもらえたような気がしたのだ。
私が「知りたかった事」「求めていた言葉」が、沢村さんの本にズバリそのまま書いてあった。
その後、沢村さんの着物に関するエッセイは他の著書でも読んだけれど、どれもしみじみ、そして、深〜〜〜く私の心に刺さったのであった。


というわけで最近は私、着物での外出時は、なるべくショーウインドーには目をくれず、頭の中で「・・・サワムラサダコ、サワムラサダコ・・・・」と念じながら、まっすぐ前を向いて、ズッタカズッタカ歩いているのだった。(そのうち、そんなふうに念じなくとも歩けるようになりたいものです・・・・)。






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