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長澤靖浩
2022年3月8日 15:00
制服のカッターシャツのボタンを、ひとつまたひとつ外していくごわごわした男の手。右手の人差し指と中指の間には煙草の脂が溜まって黒ずんでいる。 胸襟を開いた先に現れた沙織の十六歳の肌は、同じ歳頃の乙女たち同様、艶々と輝いていた。 白い陶磁器のような輝きに置かれた男のくたびれた手の甲は不調和であるがゆえに、ざらついた違和感をもたらしている。 男はごくんと唾を呑み込んだ。 準備が整わないままこ
2022年3月11日 07:09
男と女の秘め事のすべてを沙織は谷口に学んだ。 想像もしていなかったその行為の間、沙織の脳裏には飛び回る蜜蜂の姿とその羽音が聞こえていた。 性について聞きかじったことのある、いくつもの噂話の複雑なジグソーパズルが奇跡のような速さで次々に嵌まり、一幅の風景が目の前に広がった。 沙織は波打ち際の飛沫の上を抜けて、耀く大洋のうねりをかすめて翔ぶ鳥だった。(この段落、書き直すか、いっそ書かない