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高橋幸宏さんと坂本龍一さん

学生の頃、レンタルしたベスト盤で初めてYellow Magic Orchestraを聴いて、その時は正直『Rydeen』とか『Technopolis』を、懐メロとして「いい曲だな」と思っただけで、その他の曲はあまりピンときませんでした。オリジナルアルバムとかでちゃんと聴いたら解るのかも……なんとなく、そう思っただけでした。

その後、ある遠出の機会で訪れたショッピングモールに入っていたツタヤで、なんとなく評判で「最高傑作」と聞いていた、でも近所のレンタル店に置いていなかったアルバム『BGM』を見つけて、暇つぶしと好奇心で試聴機にかけてみて……一曲目の『BALLET』のイントロでガツンと、懐メロどうこうじゃなく素直に「うわ、カッコいい」と飛び上がった、という出来事がありました。

遠出した先のツタヤだったので、借りても返しに来れないので笑、帰ってから家の近くのブックオフを周回して『BGM』を探し、ようやく一枚(ソニーのリマスター盤ではない、昔のアルファ規格のやつ)見つけて、買って、ウォークマンに入れて、もうずっと聴いていました。

特に好きだったのは、やっぱり『BALLET』と、あと『CAMOUFLAGE』から『MASS』への流れのところ。聴けば聴くほど、このカッコよさは何なんだと気になって、世の中にはこんな音楽が他にもあるんだろうかと、未知だった洋楽の世界にも興味を抱くようになりました。考えてみれば『BGM』こそ、音楽ファンとしての原体験だったと思います。

YMOのアルバムは片っ端から聴いたし、ソロ作品も手が届くかぎり集めました。80年代の作品もたくさん聴きましたが、坂本さんのソロで一番聴いたのは、考えてみるとたぶん『async』です。アナログシンセサイザーや環境音のサウンドが素晴らしい、まるで聴いたことのない音楽でした。昨日改めて聴きましたが、やはりアンビエントとも違って唯一無二。いちばん好きなのは『Life, Life』です。

映画をたくさん観るようになってからも、坂本さんの音楽に出会うことは多かったです。有名な『ラストエンペラー』や、デ・パルマ監督の『スネーク・アイズ』も何気に好きです。でも、特に印象に残っているのは『シェルタリング・スカイ』の劇伴。悲劇的な物語に響き合う素晴らしい旋律とともに、映画としても大好きな作品です。でもベルトルッチ監督の新作も、もう観ることは叶いません。

昨日、訃報を耳にしてから何度も聴いていたのは『Forbidden Colours』でした。この歌詞の素晴らしさに気付いたのはつい最近のことです。

Here Am I, A Lifetime Away from You
My Love Wears Forbidden Colours

Forbidden Colours - David Sylvian

映画の内容にも沿った、そして個人的にもぐっと胸に迫る言葉です。そして『戦メリ』は、ピアノの弾き語りも素晴らしいですが、やはり坂本さんのアナログシンセサイザーの音色あっての曲だと、改めて思います。

YMOがもう、細野さんひとりになってしまったなんて、正直まったく信じられません。信じたくもありません。あまりにも早すぎます。今年はいったいどうなっているのか。どうしようもない、でも、どうすればいいのか……。
出来ること、やるべきことをやるしかない。もっと言えば、誰もが出来ること、やるべきことをやれる社会を作ることも。素晴らしい表現を遺してくれた先人に、恩返しと言っては僭越ですが出来ることは、それくらいだろうと思います。

高橋さん、坂本さん、お疲れ様でした。
ありがとうございました。ご冥福をお祈りします。

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