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なぜ「高校」をテーマにしたセミナーで「高校」の話をしないのか

先日、不登校生の保護者さま向けセミナーを行いました。
テーマは「高校進学」。

セミナーは、よくやります。
毎回テーマを変えて色々とお話ししています。

そんな中、「高校進学」をテーマにしたセミナーだけは年に数回ほど開催します。
「高校」をテーマにしたセミナーは、他に比べて需要が大きいからです。

多くの親が知りたいことは、おそらく
「ウチの子は高校へ行けるのだろうか」
「どうやって高校を選べばいいのだろう」
「おすすめの高校はどこだろう」

といったところかと思います。

けどボクは「高校」をテーマにしたセミナーで、
ほとんど「高校」の話をしません。

先日の「高校」セミナーでは「気持ちの回復が最優先」という内容を、
しつこいくらいに話をしました。
以前の「高校」セミナーでは「ほめること・聴くこと」の大切さを話しましたし、
別の「高校」セミナーでは「世界幸福度ランキング」の日本の位置についてさんざん話したこともあります。

もちろん、全く高校の話をしないというわけではありません。
不登校から全日制普通科を受験する方法や、通信制高校の仕組みや、高校を決めるタイミングなど、
セミナーのテーマが「高校」である以上、それなりに話をします。
さすがにクレームになるようなレベルでは申し訳ないですので。

けど、「高校」とは関係のない話が多いのは間違いありません。
前置きかと思いきや、いつまで話すんだろう、またその話に戻るのか、というくらい「高校」から離れた話をします。

なぜか。

それは、
「高校」のことで悩む親は、とても視野が狭くなっていることが多いため、いったん少しでも視野を広げていただきたいからです。

子どもが学校を休み始めた頃、ほとんどの親は学校へ行かせようとします。
行かせようとしても行かない、行けない。どうして行けないんだろう、考えても原因がわからないし、子どもに聞いても答えてくれない。
どうしようどうしようと、頭の中が四六時中「学校のこと」で占められてしまいがちです。
朝起きてから夜寝るまで、仕事中も買い物をしていても、いつもなら笑える場面でも、子どもの顔を見るたびに、子どもの顔を見なくても、
「学校」という言葉が頭をグルグル。

これは視野が狭くなっている状態です。

その後、さんざん悩みながらも
親として様々なことを学んで、ちょっと視野が広がってきます。
子どもと雑談をしたり、自分の時間を作ってリフレッシュしたり、ストレスになることを減らしたり、いつしか「学校」という言葉ばかりがグルグルする状態ではなくなってきます。
それに伴って、子どもも回復をして、親子とも少しずつ元気を取り戻していきます。

視野が広がってきたわけですね。
視野の広がりと、気持ちの回復は大きく関わりがあります。

そのようなみなさんであっても、
いざ「高校」のことになると、また一気に視野が狭くなることが多いです。

せっかく元気になってきて、だからこそ「高校」のことを考えるようになったのに、
いつしか頭の中は「高校どうしよう」とグルグルグルグル。

元気になっていない場合も、いよいよ「高校」を考えなければいけない時期になると、やはり頭の中は「高校どうしよう」とグルグル。

朝起きてから夜寝るまで、仕事中も買い物をしていても、
グルグル状態がやってきます。

だからボクは、まず視野を少しでも広げていただきたくて
「高校」で頭がいっぱいの参加者だからこそ、
「高校」とは違うことばかりお話しするようにしています。

違うこととはいえ、「高校」に繋がるようには話しているつもりですし、
あまりにも異なる内容にならないよう務めています。
しかし、目的のひとつとして「高校」以外の話をすることで、
視野を少しでも広げて欲しいと考えているのは事実です。

視野を少し広げることで
「高校」よりも大事なこと、大事なものを見失わないようにして欲しいのです。
子どもにとって、あるいは親子にとって、
「高校」よりも大事なものを再確認することが、
その子に合った「高校選び」に繋がると考えています。

たとえば「高校」に対して、
「勉強の遅れを取り戻して大学進学を目指せるように」
「一生涯の友達や楽しい思い出を作れるように」
「かけがえのない青春時代を過ごせるように」
といったことを求める方も多いでしょう。
実際、そのような場所になれれば望ましいとボクも思います。

ただ、そのような場所になるかどうかは
気持ちが回復してきていることが前提です。

子どもの普段の様子や会話を通して、
子どもの回復状況を親なりに判断することが大切です。

「子どもの意思」よりも、
親としての判断のほうが場合によっては大切だったりもします。
親の望む回答や「〜すべき」という回答を“意思”として口にする子もいますし、思ってもいないのに無理やり意思表示をする子もいますので。

だから、親のみなさんには
いったん、少しでも、視野を広げて欲しいのです。

親としての判断は、とても難しいことだと思います。
“正解”がない判断ですので、大きなストレスがかかると思います。

だからこそ頭の中が同じ言葉ばかりグルグルしているような状態では
親子ともにストレスでまいってしまいますし、良い判断もできなくなります。
そして判断できないからといって、同じくストレスがかかっている我が子に「意思を問う」のは、かえって苦しくなりかねません。

もちろん子どもが「こうしたい」と言っていたら尊重してあげて下さい。
親に言われるのではなく、自分から意思表示できることは、回復の証でもありますので。
しかし、親の視野が狭い状態ですと、このような場面でも子どもの意思を信用できなくなったり、あるいは親の意向を押し付けてしまいがちです。

おどしているわけではありません。
対策は簡単です、少し視野を広げるだけですので。

「高校」で悩んでいるならば、
ちょっとでも「高校」のことを忘れる時間を作って下さい。
「高校をどうするか」よりも大切なこと、大切なもの、を思い出してみて下さい。

少し視野を広げるだけで、いいのです。

良い「高校選び」をするために、
ちょっと「高校」のことを忘れてみて欲しいなと願っています。


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