見出し画像

「不登校→引きこもり」が心配な親

子どもが不登校になると
親は心配をします。

統計をとったわけではないですが
最も多い心配のひとつが
「このまま『引きこもり』になったらどうしよう」でしょう。

実際そのように口にする方は非常に多いです。
このまま「引きこもり」になって、働けなくなって、収入もなく、結婚もできず、親の私は年老いていくのに、と。

このような心配を抱く背景には、いわゆる「40/70問題」「50/80問題」などと
中年層が「引きこもり」状態になることが社会問題として多く報じられるようになったことも一因にあると思います。

子どものことも心配だけど、
親である自分が「70」「80」になったときの人生も心配になり、
「お先真っ暗」に思えてしまうこともあるでしょう。

ただ、結論からお伝えしますと
「不登校」から、いわゆる「引きこもり」になる確率は高くありません。

「不登校→引きこもり」の確率①

久世芽亜利さんの著書『コンビニは通える引きこもり達』には
「不登校がきっかけは2割以下」と。

「40」「50」世代に関しては「不登校がきっかけ」は「8.5%」とデータが提示され、
「不登校→引きこもり」の確率が低いことが示されています。

著者は認定NPO法人ニュースタート事務局という
いわゆる引きこもりで悩んでいる方々を数多く支援している団体に所属しており
本書の内容は、まさに“現場”の声だと思います。

ここで示されたデータは当時の内閣府調査ですが、
同じデータをボクも確認しており、その点でも本書の内容は説得力があると感じていますし、
なにより表紙の帯では「原因は不登校」が「誤解」と断じられています。

「不登校→引きこもり」の確率②

最近よく耳にするHSPについて書かれた
医学博士の高田明和さんの著書『HSPとひきこもり』も「不登校」に触れられています。

本書はHSPについて書かれているのですが、
「ひきこもり」を社会問題として扱うのではなく
コロナ禍をふまえてむしろ前向きに捉えている興味深い内容でした。

「ひきこもり」の内容で「不登校」というフレーズが登場すると
やはり親としてはその関連性が気になるところかと思いますが、

本書で示されていた「不登校→引きこもり」の数値は「12〜15%」。

先にご紹介した久世さんの著書と同様、2割以下です。

そもそも「ひきこもり」を前向きに捉える主旨の内容ですが、
それでも「不登校」が原因である確率が低いことはきちんと書かれていました。

「不登校→引きこもり」という前提の誤り

このように、
多くの親が心配する「不登校→引きこもり」について
実は確率が低いことは、あらゆる面から指摘されています。

ボクとしては、
こうした書籍を見るまでもなく、現場に出ていれば当たり前の感覚なのです。
「子どもの不登校と大人の引きこもりは違う」と
サポートする側の多くの人たちが分かっていることだと思っています。

しかし、それだけ確率の低いところで
親は心配し、悩み、焦り、苦しんでいるわけです。

もちろん確率が低いといってもゼロではありませんし、
なにもせず放っておいたり、逆に無理をさせたりすれば、
将来まで影響する可能性は高まりますので
決して、全てを楽観視して欲しいとは考えていません。

親が子どもの将来を心配するのは自然なことですし。

ただ、その心配につけこむかのように
「このままでは引きこもりになる」などと言ってしまう大人がいるのは残念に思っています。

「不登校→引きこもり」という前提は
間違っている、とまでは言わずとも、とても確率が低いことはお伝えしておきます。

ちなみに「前提」でいえば
ボクは「引きこもり」自体がそこまで悪いこととは思っていません。

もちろん家族への負担、そして本人の苦しみを考えれば
そこから抜け出したい気持ちを応援したいと思っています。
ただ、引きこもりという状態そのものは、悪いことをしているわけではないので
社会がいったん受け入れることが大切だと考えています。
引きこもり状態のまま働いたり活動をする人も増えていますし、
いずれにしても「不登校」への脅し文句のように「引きこもり」を持ち出すこと自体に違和感はあります。

本当に心配して欲しいこと

多くの親が「不登校→引きこもり」を心配するものの
その確率は低いとお伝えしました、その点については心配しない方がいいのです。

子どもの将来について、本当に心配していただきたいのは

不登校になる→「将来このままでは引きこもりだ」と言われる
不登校→ダメなこと、抜け出さなければいけないことと認識させられる
自分→ダメな人間だと感じる

といったプロセスで起こる「心の傷」です。
この心の傷が回復しないまま大人になっていくこと、そこを心配してあげて下さい。

「不登校」そのものではなく
「不登校」に関する親を含めた大人たちの言動によって
子どもが自分自身をダメな人間だと感じてしまい、心に傷を負っていること。
そしてその傷を、癒して、回復させてあげられるかどうか。

引きこもりになるかどうか、よりも
そこが、いちばんの心配ごとであって欲しいと願っています。

※「不登校→引きこもり」については、以前にボクも動画をアップしました、お時間のある方はどうぞ

繰り返しですが、
なにもせずに放っておいて大丈夫、というわけではありません。

不要な心配をせず、いま負っているであろう心の傷を回復を
いちばん心配してあげて下さいね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?