人生、全てが盗作だ

ヨルシカの世界が好きだ。
suisの歌声ももちろん欠かせない要素の一つだが、僕の好きなヨルシカを形作っているものは、n-bunaの綴る言葉の連なりだ。物語だ。

『カエルのはなし』の頃からn-bunaの生み出すストーリーが好きだ。

なので、今回の小説『盗作』もとても楽しみにしていたし、とても楽しく読むことができた。もし、ヨルシカが売れに売れて一万円札で焚き火ができるくらいのお金持ちになったら、n-bunaには長編小説を書いてみてほしい。おそらく刹那的で普遍的な、尖った優しい物語を書いてくれるだろう。

盗作というテーマは非常に蠱惑的だ。

創作をするものにとって、避けては通れない通過儀礼のようなものではないか。大半の創作は模倣から始まる。

作中で、盗作だろうとなんだろうと、その時感じた価値は変わらないという主張が描かれる。大切にすべきはそこに込められた意思であり、意図だ。

ヨルシカの音楽に、n-bunaの文章に、「元ネタ」が見つかり、謂れのない盗作疑惑がもし上がったとしても、僕はそれを気にしない。

なぜなら、生きることが、そのまま盗むことと同義であると言えるかもしれないからだ。

全くのオリジナルな人生を歩める人間なんていない。生きていれば、必ず誰かの足跡を踏む。最初の盗作は父母からだし、人生なんて盗作の累積だ。

だから僕は、ヨルシカを聴く。



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