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【読了】明日のコミュニケーション 「関与する生活者」に愛される方法

著者:佐藤 尚之氏

さとなおさん2冊目。前著の明日の広告から4年後、2011年に発売された本。FacebookやTwitterが普及し始めたころ。(当時の日本における普及率はまだ低かったようだけれど・・・。)さとなおさん自身が日本で個人サイトを運営していた第一人者だったり、ネットの世界にどっぷりつかってた人ということもあって、先見の明がすごい。

■SNSで生活者はどう変わったか?
メディア史の中でも大きなパラダイムシフトが起きた「受信者=発信者」になれる時代。これまでのマスメディアは一方向で、ウェブの時代に双方向性、SNSではソーシャルグラフ(フォロワー同士がつながって膨らむネットワーク)の時代でだれもが世界とつながりを持てるのだ。現代版シンデレラストーリーとして記憶に新しいネットフリックスのフォロワーズも、Instagramにポストされた写真がきっかけでヒロインの人生に転機が訪れる物語だった。

んで、いまの生活者は関与度合で大きく3タイプに分けられる。
<関与度による分類>
・アクティブ関与層
いわゆるエバンジェリスト。影響力のある個人として、インフルエンサーだったりアルファブロガーと呼ばれる人たち。物事に積極的に参加・関与している人たち。好きなこと、いいものを人にオススメしてくれる。

・潜在関与層
関与したかったけど、いままで関与する方法を持ち合わせていなかった人たち。自分の意見はしっかり持っている人たちで、SNSの恩恵をとくに受けている人たち?

・プチ関与層
深い関与はしないけれど、ちょっとだけ関与したい、貢献したいと思う人たち。日本人に多い強く共感、賛同するタイプ。思えばコロナ対策も「自粛要請」でここまでうまくいったのは(欧米に比べて今のところ)この手の共感、賛同タイプが多かったからなんだろうと思う。国民性っていう言葉のくくり方は乱暴だけど、SNSによって「共感」が可視化できる時代でもあるからこそ、そう思った。

ポイントは、アクティブ関与層を味方につけ、低関与層を引き上げること。それが口説くから愛されるにつながるのだけれど。。。

■SIPSモデルとAIDMA、AISASの関係性

SIPSとは以下の頭文字をとったコミュニケーションのモデル
Sympathize:共感する
Identify:確認する
Participate:参加する
Share & Spread:共有&拡散する

SIPSは別カテゴリではなくてAIDMAやAISASと密接に関わり合っていて、ネットやSNSへの関与度の違いで変わってくる。AIDMAやAISASにもいえることで、ネットを使わないひとは「検索」概念がないので、AIDMAのままだろうし、SNSの利用が少ないひとは、フィードで流れてくる情報に「共感する」機会が少ないからSIPS弱めといったところだ。

SIPSの頭文字でもある、共感。生活者の共感なき情報は相手にされないのだからまったくもってシビアだ。
共感の中身は、新しい、かわいい、おもしろい、好感を持てる、感動した、役に立つ、、、など実に多様なわけだが、2種類あるとのこと。
1つは情報そのものへの共感。そしてもう1つは、発信元への共感。発信元というのは個人でもあるし、企業もある。共感を経て、参加してもらって、さらにはヒトに伝えたいという熱量まで抱いてもらわなければならないから、企画も至難になっていく。
また、SIPSはAIDMAやAISASのAI(注意喚起・興味)と組み合わせることでより拡散されるともいわれている。ゲータレードがカンヌを獲った17年ぶりのアメフト試合なんてすばらしい事例。ちゃんと企画内容が商品に落ちているから評価されたんだろうなぁ。

■広告は「口説く」から「愛される」へ
・マスの戦い方はどうなるか
テレビが弱くなったといわれて何年も経ち、ついにはネットの広告費がテレビを追い越したけれど、これはある意味市場のバランスが最適化されている証拠だし、テレビの規模は一定で維持されると思う。
スポーツ観戦をしながら、音楽ライブをみながらリアルタイムでツイッターでコメントできるのは参加している、一体感が得られてとても楽しい。たくさんの人とのつながりを感じながら、トレンド1位を目指す一体感とか想いの他気持ちがいいものだ。テレビはリアルタイムでの活路がまだまだたくさんある。
そしてラジオもリアルタイムで楽しむことができてDJとリスナーの距離感が近いことからツイッターとの相性も良く、これから注目度が高まっていくはずだ。久しぶりにスカロケ聴いたけど、リモート出演の違和感がテレビほどないっていう話も興味深かった。
新聞と雑誌は、コンテンツとしてもっとエッジを立たせてジャーナリズムの信用を武器にしたり、エバンジェリストを加工必要があって、ちょっと苦労しそう。SNSを潤滑油としてとらえてクロスメディアの視点で見る目を養っていきたい。

・ロングエンゲージメントを目指して
発信元への共感を得て、その関係性を長期化することを目的とする。ながく愛される存在になりましょうということだ。

コミュニケーション・デザインの諸相をおさらい
・発信元への共感を築く
・いい商品、サービスの提供
・エバンジェリストへ育て上げる
・キャンペーンの連続化
・マスやPRの効果的な利用
・エバンジェリストを捉まえる
・店頭での体験、販促
・従業員を大切にすること(リスクにもなり得る)

さいご
白鳥蘆花に入る。という言葉が紹介されていた。蘆原に白鳥が舞い降りてきたら風景に溶け込むけれど、まわりの蘆原がそよぐような影響を確実に与えている。つまり、本人は自覚なくとも、なんらかの役割を全うしていい影響を与えているんだということ。このスタンスは学びたい。

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