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お互いの今までの努力の結晶

5月ー

いよいよ6年間続けてきた部活の引退試合のシーズン一か月前に入ります。

ちなみに私はちなみに私はバレーボール部のセッターをしていた。

高校1年生の時にセッターをしていた同期が突然やめて、そこから急遽私が代打としてセッターになったのだ。

私は司令塔になれるようなそんなセンスもなく、ただひたすら同じような戦略で戦うしかなかった。

セッターの役割だけでなく、サーブも苦手、そもそもとても緊張しいであった。

私はラスト2か月、このままではメンバーに迷惑をかけてしまうと一人で居残り練習もしてました。


そんな中

「美嘉ー頑張ってるな。」

私と同じ体育館で部活をしていた彼が私の練習をのぞきにくる。

「下手くそやから見やんでー。」

そう言いつつ、彼が私を気にかけてくれていることが嬉しかった。

全然会えない中でもこうやって彼の気遣いで、隙間時間で会うことができてる。


「お互い、もうちょっとやな。頑張ろうな。俺この後塾やから、またね。」

それはそう言い残して体育館を後にする。

一緒に帰りたいところだけど、この隙間時間に会ってお互いの愛情を確認しあって。

会わない時間に気持ちを膨らませていくことも大事かな、とこの時点では思っていた。

お互いを想い合うことも「一緒にいる」ってことだもんね。


私も部活動を終えた後は塾に向かい自習に励むくせがついた。

眠たいけど、引退後に本格的に始まる受験生生活にむけて準備を始めていた。



6月上旬。

彼よりも私の方が先に引退試合の日がやってきた。

前日から緊張して落ち着きがなかった。
でも明日に控え早く寝ようとした。そのときLINEが入る。

「いよいよ明日やな。美嘉は頑張ってたの俺は知ってる。応援行けなくて申し訳ないけど、自分のできる力しっかり発揮してな!」

彼は明日は用事があり応援には来れないと前々から言っていた。

とりあえず必死にしがみついて頑張ろうと自分に言い聞かせ眠りについた。


—引退試合当日。
準備体操をし、必死に体を温めていく。

彼の言葉を思い出し、自分はできることは準備してきた。いけるぞ。
もし負けても後悔しない試合にしよう。と。

私たちのチームの出場の時間になり、コート入りする。

応援席には、私たちの同級生たちが数人応援に来てくれていた。
私はほんの少しの期待をもってその同級生たちを見つめる。

・・・まぁ彼は来ているはずもなく。

来てたら来てたで緊張しちゃうし、いいか。

私は試合にそのまま挑んでいく。


セッター。コートの真ん中に立ちメンバーの顔を見つめる。

頑張ろう。


試合も中盤に入り、かなり接戦の戦いになっていた。

色んな戦法を今まで以上に使って得点をゲットしていった。
あれだけ練習したサーブもこの日は失敗することなく。

内心調子がよかった。なんでだろうか。
勝てるかもしれない。

「速攻」

同期のアッタカーが叫ぶ。ジャンプしてトスを上げる。


・・・・グキッ


「・・・え???」


あと5点を先に入れれば勝つ展開。私は着地に失敗し足首を捻った。

徐々に痛みが広がっていく。

「これはやばすぎる。」

一旦こちらに点数が入る。

同期が
「美嘉、今足ひねった??」

「いけるいける。」


私は試合出場を続ける。

セッターは思いのほかコートの前半分を走り回る。
なんとがごまかして走っていたが、私は足を引きずるのを得なくなる。

「あかん、これはまずい。」

足がいうことを効かなくなってくる。

トスもミスしてしまった。

同期がなんとかフォローしてくれたが、顧問の先生がそれを見逃さなかった。

―――タイム。

「美嘉、足ひねってるよね。ちょっとこっちに居なさい、冷却スプレーで冷やして!!」

先生が私の足を急冷する。ジンジン痛みが増していく。

「一瞬だけ△△セッターしてくれる?」

私の後輩が一時的に代打としてでることに。

私は情けない気持ちになり、涙があふれた。

先生は私の肩を持ち、

「大丈夫、最後でれるように調節するから」

先生のその言葉を信じ、コートに向かって大声で応援する。
その一瞬の隙に応援席を見つめる。

私をみんな心配そうに見つめていた。


「・・・!?」

私は目を疑う。彼と目があったのだ。

彼が応援席に居る。


ちょっと待って・・・。涙が溢れた。
休んでる場合じゃないじゃん・・・。

私は先生の交代の言葉を待ちながら足を必死に冷やした。


―――交代。

結局そこから点数は上手く伸びず。21vs23。負けている。
バレーボールは25点先取で勝ちとなる。
相手にあと2点入れられると負けだ。

あと4点取れば勝ちだ。

私は必死に食いついた。確実に丁寧に。
アタッカーみんなもそれに応えるように確実にアタックを決めてくれた。


まさかの24vs24へ。大接戦。
デュースとなりあと2点で終了となるところまで来た。

ここまで来たら勝ちたい・・・。




また足が痛んでくる。アドレナリンもうちょっと出てくれ・・・。

「美嘉!頑張れ!!」
彼の応援の声が遠くから聞こえた。


相手チームの力強いアタックでこの試合は幕を閉じた。

24vs26  試合終了。


やるせない気持ちでいっぱいだった。悔しすぎる。

でも、いい試合だったな。とも感じ。
私は皆の前で号泣してしまった。

片付けをし、コートを後にした。

その後応援席にお礼を言いに行くことに。
私は同期に身体を支えてもらいがら、涙をふきながら歩いた。

応援席に行くとみんなが拍手をして出迎えてくれた。

そして一番前には彼がいた。

彼の顔をみてまた涙が溢れてくる。
「お疲れ様、頑張ったな。」

その言葉に、私は彼に抱き着いてしまった。
周りに人がいっぱいいるのに。今日くらいいいよね。


そのまま記念写真をとり、引退の挨拶やら、打ち上げやら。色々と予定があったため彼とゆっくり話す時間もなく。

私は家についてやっとLINEを開く。
たくさんの人からお疲れ様の言葉が来ていた。
その中にはもちろん彼のLINEも。

「びっくりしたやろ?予定があるって言うてたのは嘘。美嘉があれだけ練習してたんだもん、やっぱり見届けたかったんだ。
足大丈夫?しっかり今日は体休めてな。」

彼らしい言葉だった。嬉しくてまた涙が溢れる。



6月中旬。
今度は彼の引退試合である。
前日まで行こうか本当に迷っていた。彼には応援は無理に来なくていいからと言われていた。

確かに試合会場は少し遠かった。しかも試合を見に行くと言っていた同級生たちは、どっちかというと陽キャラの人たちばかり。陰キャの私と一緒に行ってくれるのかな。


でも勇気を出して、試合に行く予定と言っていた一番話しかけやすい女友達に連絡を入れる。

「全然、一緒に行こう!彼氏さん見届けないとね!!」

その優しい言葉に安心し、その子たちと一緒に引退試合を見に行くことに。もちろん私の時と同じように彼には内緒で。


彼はそのスポーツの種目内ではなかなか実績を残してきている人であった。普通にネット検索したら出てくるような。

彼のためにもここには競技名は伏せます。

Abe Mika

彼は文武両道ということが本当に似合う人であった。

今日の試合も勝ってほしいな。と思いながら向かった。

彼は骨折期間を乗り越え完全に復活していた。むしろその期間があったためか今まで以上に必死に練習してきていた。

私もそれを知っていたため、しっかり見届けたかった。今度は私の番。


試合までは彼たちも忙しく顔を合わせることなかった。
私たちの学校の名前が表示され、試合が開始される合図が鳴った。

私は必死に彼を探す。

「・・・いた。」

彼は真剣な面持で試合に挑んでいた。

試合が開始となった。

彼のチームはやはり私の予想通りかなり強かった。なんなく一回戦を突破してしまう。


「強・・・。思ってた以上だわ。」


そのまま時間を空けて二回戦に入っていく。
相手校もなかなか強く接戦であったが、彼の力もありギリギリ勝ち上がっていったのだ。

本日は2回戦までであった。以降の勝ち上がったチームは別日に関西地区大会に進んでいくのだ。

次の試合はかなり距離が遠くなるので誰も応援には行けないかなという状態であった。


でも・・・今日の試合2回とも勝った・・・。すごすぎる。

彼がその競技をしている姿をちゃんと見たのはその日が最初で最後であった。

噂通りやっぱりかなり強い人だったんだと実感した。


そして彼たちが応援席にあいさつに来た。

彼は目も悪いため、応援席に誰が来ているかは分かっていない様子であった。

挨拶の時に目が合い、彼は驚いた顔をし、私のもとにやってきた。

「やっぱり、来たか。笑」

「え?笑」

「応援行くよ!オーラがLINEから漂ってきてたよ笑」

どっきり失敗だった様子。

「・・・でもやっぱり強かったね。さすがだよ、噂通りでした。今日はお疲れ様。」

「それは、どうも。」

私たちが話していると、同級生の男子が、お前らほんとお互いのこと好きだな、写真撮ってやるよ。とおちょくってきた。

その男子はほとんどすべての競技の引退試合に来ているため、もちろん私の引退試合も来ていたわけで。
だから私たちが互いの引退試合に来ていることを知っていた。

お言葉に甘えて写真をとってもらう。



その後彼は関西地区予選の初戦で敗退となったようだ。
でもかなり接戦だったよう。

関西地区予選に行けるだけすごすぎです。



これでお互いの部活は終わりを告げた。

さぁ受験生本番です。



私の青春時代。



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